平成18年度 第1回 アジア研究会 「グローバル経済戦略と東アジア」早稲田大学大学院アジア太平洋研究科教授 浦田 秀次郎【2006/07/12】

日時:2006年7月12日

テーマ「グローバル経済戦略-東アジアの統合と日本の選択」

平成18年度 第1回 アジア研究会
「グローバル経済戦略と東アジア」


早稲田大学大学院アジア太平洋研究科教授
浦田 秀次郎

浦田 秀次郎     グローバル化とは、ヒト、モノ、カネが国境を越えて、地球規模で活発に移動することだ。
 様々な制度が改革、開放され、その一方で、通信、輸送、サービスにおける技術革新、規制緩和なども進み、グローバル化推進のコストが下がった。私はグローバル化を、モノ、資金、ヒト、情報が日本へ入ってくる「内なるグローバル化」と、その反対の動きを指す「外なるグローバル化」に分けて考えている。「内なるグローバル化」のメリットは、海外から安価で多様な商品、サービスが入ってくること、そして国内企業が生産性向上を余儀なくされ、消費者の満足度が高まることだ。また資金、技術、経営ノウハウなどのような経済発展に重要な要素も、直接投資と共に入ってくる。デメリットとしては、輸入拡大によって失業、転職を余儀なくされる人が出ることが挙げられる。さらにはヒトの移動によって生じる摩擦の問題、社会的コストもある。「外なるグローバル化」に関しては、輸出拡大による生産、雇用拡大というメリット、資金流出、経済の空洞化、頭脳流出といったデメリットが考えられる。
 日本の経済社会はまだまだグローバル化されておらず、「内なるグローバル化」が遅れる原因としては、経済・社会が閉鎖的なことが挙げられる。「外なるグローバル化」が遅れる原因には、国内で収益が得られれば、外へ出るインセンティブがないことがある。閉鎖的な経済社会の1つの原因が規制であるならば、グローバル化のメリットを最大化するには、規制改革や競争促進への政策が不可欠になる。人材の育成では、国際性を高める教育、訓練が必要になるが、それに関する規制が厳しい。
 経済成長をもたらす要因は、教科書的には労働、投資の投入および技術の向上となる。そういった要素をもたらすものとして具体的には、直接投資の流入、その他の資金の流入が挙げられる。また輸出入の拡大に関しては、海外での需要の増大が原因で輸出が拡大することにより外貨が獲得できる。獲得した外貨で技術や生産に必要な技術を体化した資本財が輸入され、経済成長に貢献する。労働、資本、技術の質を向上させていくことがアジア経済の課題となる。
 日本がどのように貢献できるか、いくつかポイントを挙げる。まず、投資を誘致するには魅力的な投資市場の整備が重要だ。現在、アジア・ボンド構想が動いているが、それもその一環と捉えられる。魅力的な投資市場の整備について、日本は知的な貢献および資金的な貢献ができる。市場の開放も重要であるが、農産品市場や労働市場のような日本市場は経済連携協定を結ぶ際の阻害要因になっている。経済産業省による報告書「グローバル経済戦略」では、この点をもっと議論していただきたかった。また日本企業は海外で活発に活動しているが、特に労働力や部品などの現地資源を効率的に活用していないようだ。技術移転も含めた現地資源の有効活用が日本企業の課題だ。
 東アジアにおける経済成長促進に向けて乗り越えなくてはならない課題に対し、日本政府や企業は色々できると思う。一つの大きなプロジェクトとしては、東アジア経済連携協定がある。資本、労働、技術等々、経済成長に欠かせない要因で、質の向上、量の拡大を実現するには包括的な経済連携協定が大きな役割を果たす。ただ、協定をつくるには日本における障害を取り除く必要もあり、そのためには強い政治的リーダーシップ、国民の支持が重要だ。
(以上、発表)

【コメント】
丸屋 豊二郎・日本貿易振興機構アジア経済研究所研究企画部長:

丸屋 豊二郎 東アジアとの共存を日本がどう進めていくかというメッセージが「グローバル経済戦略」として出されたことは評価できる。東アジアの国際分業は大きく変質しており、EPA構想を早急に制度化しないと企業の動きにキャッチアップできない。また戦略で提唱された東アジア・アセアン研究センターをASEAN諸国に置けば、ボーダレスな事象の調査研究に役立つだろう。さらに戦略でも触れているが、人材育成は日本が欧米に比べて遅れをとっている点だ。

西村 英俊・日中経済協会専務理事:
西村 英俊 1990年代、日本はASEAN+3やアジア欧州連合(ASEM)、アジア太平洋経済協力会議(APEC)をつくった。その時の日本の思想は、ASEANと組んで中国をマヌーバーするものであったが、チャンスを失った。近年の中国における規制改革は凄まじい。今後アジアでリーダーシップをとろうとするならば、今の段階で彼らを全体のスタンダードに組み入れることが必要だ。また日本の産業界は中国企業の製品をもっと活用して自らの競争力向上につなげていくべきだ。

開催風景
(敬称略 / 講師肩書は講演当時 / 文責:貿易研修センター)

詳細PDF


詳細PDFをご覧いただくにはIISTサポーターズ(無料)へ登録後に発行されるユーザ名、パスワードが必要です。またご登録後は講演会・シンポジウム開催のご案内をお送りさせていただきます。
ユーザ名、パスワードを忘れてしまった会員の方はこちらからご請求下さい。

Keirinこの事業は、競輪の補助金を受けて実施したものです。



担当:総務・企画調査広報部