第62回-1 中央ユーラシア調査会 「中央アジアにおけるエンジニアリングビジネスの展望」東洋エンジニアリング株式会社 コンサルタント部長 渡辺 博【2006/05/22】

日時:2006年5月22日

第62回-1 中央ユーラシア調査会
「中央アジアにおけるエンジニアリングビジネスの展望」


東洋エンジニアリング株式会社 
コンサルタント部長
渡辺 博

エンジニアリング業界の現状
渡辺 博     東証一部にはエンジニアリングという業種はなく、プラント専業の各社は建設業に含まれる。われわれの業界団体である財団法人エンジニアリング振興協会に加入しているのは、プラント、メーカー、商社、ゼネコンで、これらがエンジニアリング業界だと考えている。エンジニアリング業界が今どうかというと、原油高のため中東産油国を中心に非常に好況だ。好況のもう1つの理由は、やはり中国経済の拡大である。ここではプラント商売がかなり多い。また中東産油国に関しては、以前は原油やガスをそのまま輸出していたが、最近は国内で中間製品または最終製品まで生産し、それを輸出する方向に変化している。

中央アジアにおけるエンジニアリングビジネス
 ではエンジニアリング業界は、中央アジアをどう見ているか。業界が目指しているのはメガ・プロジェクトであり、これは一般に1億ドル以上のプロジェクトを指す。中央アジアではこの実績は、あまり多くない。最大の理由はソ連時代の負の遺産だ。ソ連時代には共和国ごとに分業があり、例えば中央アジアのガス、石油をバルト三国に持っていき製品にするなどしていた。ソ連の崩壊で、バルト三国の石油精製業は壊滅した。 また、原料はあっても市場がない、技術も工場もあるが国際標準的な仕事のやり方がわからない、といったことが少なくない。カザフスタンやウズベキスタンの例を見ると、工場を動かしていたのはロシア人で、カザフスタン人やウズベキスタン人は、重要な仕事をまかされていなかった。それらの人々に、突然プラントを運転しろといってもそれはできず、生産が止まった工場が多かった。
 エンジニアリング業界が目指すメガ・プロジェクトには、4つの段階がある。最もプリミティブな段階は無償資金しか使えない時期で、これは後発開発途上国(LLDC)のような国だ。少し経済が回復し、お金を借りても返せる段階になると円借款になり、これはインフラに多く使われる。次に、いわゆる中進国レベルになると、円借款から卒業して国際金融の世界になる。例えば日本の国際協力銀行(JBIC)や欧州復興開発銀行(EBRD)のローンなどが使える段階だ。そして、次の段階に民間資本がある。
 中央アジアは中東に次いでエネルギー資源が豊富だが、消費地が遠隔地にある。また、南に出ようにもアフガニスタンやイランがあり難しい。資源をそのまま輸出するには問題ないが、製品にした場合、これがネックになる。また工業資本家はほとんどおらず、非常に未熟だ。さらに商売のネックとしては、汚職の蔓延が挙げられる。
 こうした中でも、新しい動きがいろいろある。例えば地球温暖化対策で、中央アジア各国は京都メカニズムの実施に積極的だ。我が国のJIプロジェクト第1号はカザフスタンでの発電関係のプロジェクトだった。 化学プラント建設でも、カザフスタンで新しい動きがある。今まではカザフスタンでは石油公社がプロジェクトを行ってきたが、新たなプロジェクトでは民間資本が中心となって、投資していこうという動きがある。
 エンジニアリング業界は公的金融制度を武器に、仕事をとっていきたいと考えているが、事態はさらに進み、民間銀行が直接融資をする動きが出ている。民間銀行が出てこれば、公的金融制度の出る幕はない。公的金融制度にはさまざまな条件があり、担保や国の保証書などをとる必要があるが、民間銀行はそうではなく、金利は高いが機能的だ。民間銀行が出てきた場合、日本勢には厳しい。 例えばポーランドでは、約5年前まで円借款や国際金融資金で仕事を取ろうと頑張ったが、ドイツなどの民間銀行が入ってきて、JBICのローンに誰も見向きもしない状況になった。東欧諸国は全体的に、同様だ。むろん、われわれは民間企業で、公的資金に頼らず多くの仕事をとることもあり、ヨーロッパ、アメリカでも仕事をとってはいるが、東欧やCIS諸国では今が転換点かもしれない。

中国によるエネルギービジネス
 もう1つ特徴的な動きとして、中国によるエネルギービジネスがある。中国は1990年代から石油の輸入国に転じている。爆発的な人口増加もあるが、沿岸部を中心とした経済発展が要因になっている。中国が日本と同じくらい石油やガスを消費することになれば、今後は今の20倍程度のエネルギーが必要になるだろう。例えば、日本はバイカル湖周辺の石油を太平洋側へ引っ張り、日本や韓国に輸出するようロシアに交渉しているが、中国側は途中で分岐して大慶油田に持ってきてほしいといっている。実は大慶油田は昨年から統計を見ていると、生産量が減り始めている。しかしここには製油所やプラスチック・プラントなどがあり、原料を持ってくる必要がある。
 モンゴルの東側でも、石油が出始めている。まだ試掘段階だが、油田はモンゴルと中国にまたがり、この石油は全て中国が大慶油田に持っていっている。中国は他にもベネズエラやスーダンなどで資源外交を展開しているが、一番早いのはカザフスタンから持ってくることだ。カザフスタンからのパイプラインはすでに一部開通した。中国はカスピ海沿岸のアクタウから、パイプラインで石油を持ってくる壮大な計画もたてている。
 中央アジア地区は石油やガスはあっても、持っていくのに困るといったが、1つの突破口としてカスピ海の北側を通るCPCパイプラインがある。これは約2年前に開通し、カザフスタンの原油輸出は倍増した。また、次に計画されているのはアクタウからアゼルバイジャンのバクーまで海底パイプラインをつくり、今あるBTCパイプラインにつなげる計画だ。長所は、チェチェンなどを通らないのでロシアの影響を受けず、治安が悪いところも避けられる。また、イラン国内ではパイプラインが非常に発達している。イランを経由するメリットは、もちろんイラン国内で何かが起きれば問題だが、ホルムズ海峡を通らず、イラクで何かあっても問題ないことだ。いよいよアクタウからテヘランへのパイプライン建設の話が始まったようであり、業界も色めきたっている。こうしたものが、エネルギーをめぐる新しい動きだ。

(敬称略 / 講師肩書は講演当時 / 文責:貿易研修センター)

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担当:総務・企画調査広報部