第64回 中央ユーラシア調査会 『「中央アジア+日本」第2回外相会合と JICAの協力の方向性について』国際協力機構アジア第2部 中央アジア・コーカサスチーム長 石井 潔【2006/07/14】

日時:2006年7月14日

第64回 中央ユーラシア調査会
『「中央アジア+日本」第2回外相会合と JICAの協力の方向性について』


国際協力機構アジア第2部
中央アジア・コーカサスチーム長
石井 潔

石井 潔     今日は、6月5日に開かれた「中央アジア+日本」の第2回外相会合とJICAとの関係について、話をさせていただきたい。「中央アジア+日本」対話というイニシアティブが、2004年の川口順子外相による中央アジア訪問を機に始められたことは、すでに有名なことだと思う。

中央アジアにおける近年の動き
 2001年9月11日の米国における同時多発テロに始まる動きの中で、アフガニスタンではタリバン政権が崩壊した。その際、空軍基地をウズベキスタン、キルギスに駐留させることで、中央アジアでの米国のプレゼンスが大きくなった。その一方で、2003年のグルジアにおける「バラ革命」、2004年のウクライナにおける「オレンジ革命」、2005年のキルギスにおける「チューリップ革命」のように、CIS諸国では次々に革命が起きた。さらにウズベキスタンのアンディジャンでは、政府が反政府運動のようなデモを武力弾圧のような形で治め、その結果、欧米からの批判が集中した。ウズベキスタンはその後、ロシア、中国との関係を深め、その関係は次第に緊密になってきている。

日本の新たな役割
 このような状況下で、日本政府も新たなイニシアティブが必要だと考えるようになり、2004年に新たな外交政策の方針として、「中央アジア+日本」対話を打ち出した。第1回の外相会議は2004年8月にアルマティで開催され、その後は高級事務レベル会合や有識者が加わった知的対話も開かれてきた。今年6月に東京で開かれた第2回外相会合では、これまで通り外相レベルの対話を進めると共に、地域内協力の促進、そしてビジネス振興という若干民間レベルに近いところでの協力促進、文化交流、知的対話という5本柱を、「中央アジア+日本」の主な柱にしていくとした。中でも地域内協力は、JICAの活動にとくに係わってくる。外相会合ではまた「アクションプラン」に合意し、そこでは地域内協力の促進に関して9つの領域が挙げられている。一方、中央アジアへの援助における重点分野の3つの柱としては、▽市場経済化に資する人材の育成や制度構築の支援、▽社会セクターの再構築、▽経済インフラの更新や整備―が挙げられる。従って「中央アジア+日本」での地域内協力推進の方針に沿って、これらの分野における活動を進めていくことが、JICAの対中央アジア援助の基本方針である。

「アクションプラン」の8つの領域とJICAの活動
 地域内協力促進に関する9つの領域のうち、対人地雷除去を除く8つの領域については、JICAの活動に強い係わりがある。第1に重要なのは、貿易・投資だ。これまでカザフスタン等に対し実施してきたWTO加盟支援は引き続き重要課題であるが、ウズベキスタンが加盟したユーラシア経済共同体内部の動きにも留意しておく必要がある。中央アジア地域における通関円滑化のためには、国境を越えた複数国にわたる協力が必要だ。第2の領域は輸送分野で、これについては南北の回廊を整備していくための「域内輸送ネットワーク構築プログラム」が実施されている。中央アジアとパキスタンを結び、インド洋に出る道路を整備する。貿易を振興して物流をスムーズにすることが重要だが、その一方で武器、麻薬などは通さない国境管理への協力も必要になる。第3の領域はテロ、麻薬対策で、これについては国際犯罪捜査の地域別研修などが行われている。第4は貧困削減であり、特に地方において重要課題になっている。「小規模企業セミナー」などを開くことで、協力を考える必要がある。第5は環境保護だが、ウズベキスタンではアラル海の水が減少し、周辺住民の生活環境も悪化している。このような地域については、しっかり総合開発計画をつくることが重要だ。6番目に挙げられるのは保健医療で、HIV/AIDSの予防、鳥インフルエンザ等感染症への対策、感染症ネットワーク整備への協力が検討されている。第7の領域である水・エネルギー分野では、地方都市での給水や電力セクターに関する地域別研修などを行っている。最後に、8番目の領域は防災分野で、洪水や地震対策への協力が求められている。
 地域協力の促進ではJICAも十分な経験がなく、これから本格的に実施していくところだ。2カ国や3カ国を対象に一気に協力プログラムをつくるという形だけではなく、現在行っている「域内輸送ネットワーク構築プログラム」にも見られるように、バイの協力を行いつつ、各国で情報共有を進めていく形も考えられる。

「普遍的価値」の共有に向けて
 麻生外相によって6月に行われた演説では、「普遍的価値」の共有に基づくパートナーシップに向けたJICAの具体的なプロジェクトも紹介いただいた。市場経済化を進める制度整備には法制度の整備が含まれ、現在ウズベキスタンにおいては、倒産法の注釈書をつくるプロジェクトを実施している。JICAが制度づくりへの地道な協力を行うことで、信頼関係ができると考える。外相も、石垣を組むように1つ1つ積み上げて制度整備を行っていくことが、民主主義、市場経済、人権の保障などにつながるとおっしゃっている。
 ウズベキスタンのアンディジャン事件以降、人権問題について欧米による非難がかなりあったが、そういったことを改善するためにもこのような協力は重要だ。例えば、ウズベキスタンでは現在、青年海外協力隊も派遣して看護教育改善のプログラムを進めている。患者を中心とした日本のような看護システムを理解してもらうことは難しく、隊員は苦労しながらも良い協力ができるよう努めている。現場を変えていくこと1つでも、なかなか大変だ。
 簡単に説明させていただいたが、JICAもこのような形で協力を行っており、ご理解いただければありがたい。

(敬称略 / 講師肩書は講演当時 / 文責:貿易研修センター)

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担当:総務・企画調査広報部