第66回-1 中央ユーラシア調査会 「ウズベキスタンをめぐる内外情勢について」在ウズベキスタン日本国特命全権大使 楠本 祐一【2006/09/29】

日時:2006年9月29日

第66回-1 中央ユーラシア調査会
「ウズベキスタンをめぐる内外情勢について」


在ウズベキスタン日本国特命全権大使
楠本 祐一

1.アンディジャン事件後の国内情勢
楠本 祐一     まずウズベキスタンの内政、一般情勢についてだが、昨年5月のアンディジャンの騒擾事件のときは相当危機的な状況であったが、今は一応、状況が安定したという気がする。事件後、宗教過激派に対する徹底した取り締まりが行われたほか、欧米シンパ勢力なども徹底的に取り締まった。これが人権問題になり、欧米はウズベキスタンを非難している。また国家保安庁出身の有力者も、政府のあちこちに配置された。飴と鞭というのか、フェルガナやアンディジャンには経済支援も行われており、一応それらが功を奏して、現在のところは第2の事件が起きる可能性は余りなさそうだ。しかし、隣国のアフガニスタンから様々なルートでテロリストや麻薬が入ってくることなど、不安定な要素も存在している。
 経済状況については、マクロ状況は一応うまく動いているものの、1人当たりのGDPは500ドル程度であり、一般のウズベク人は依然苦しい生活を送っている。石油高の影響もあって物価は上昇し、仕事はあまりなく、若者は国外へ流出していく。その一方で、汚職構造は未だ治らず一般市民の不満は根強い。ただしアンディジャン事件の経験もあり、再び立ち上がるのはそう簡単ではないだろう。

2. 事件後の国際関係と小泉首相の訪問
 国際関係については、アンディジャン事件以降、ロシアに傾斜して行っているように見える。アメリカと喧嘩をすると、安全保障面ではやはり、ロシアに頼らざるをえない。また中国との関係も、事件後に促進されており、上海協力機構内での協力も進められている。アメリカとの関係はなかなか厳しいが、他方でウズベキスタンは計算高く、アメリカの国務次官補が訪れた際には大統領が約2時間半にわたる会談を行っている。双方張り合いの状況が続いているが、両国とも何とか関係を維持していきたいようだ。
 欧州連合(EU)については、加盟国によって対応が異なる。イギリスはアメリカ同様、極めて強硬で、ウズベキスタン側もヨーロッパ諸国の中ではイギリスに対して、極めて強い警戒心、猜疑心を持っている。一方、ドイツはウズベキスタンとの対話に極めて熱心だ。EUは対ウズベキスタンの制裁を現在も続けており、今年10月以降これをどうするかが問題になっている。ドイツは、もう制裁は必要ないと考えているようであるが、イギリスはそうではないようだ。
 アンディジャン事件後、ウズベキスタンは国際的に孤立し、特に欧米と対立する中で、日本には引き続き親近感を持っている。日本との良好な関係を保ちたい、というウズベキスタン側の姿勢には全く変わりがない。
 8月末には小泉純一郎首相がウズベキスタンを訪問し、これは史上初の日本の首相によるウズベキスタン訪問となった。カリモフ大統領との会談では政治対話がうまくできたと思う。カリモフ大統領からは、日本のODAに対する評価や謝意、そして日本に対して中央アジアでさらに積極的な役割を果たしてほしい、との考えが示された。今回の小泉首相訪問の成果は、初の日本の首相の訪問だったということ、そしてこれまでの良好な関係を更に促進していく弾みになったことだと思う。

3. 今後の経済協力とビジネス、観光
 日本は今後、ODAによって、ウズベキスタンの経済改革を支援していくことが必要だ。ウズベキスタンは極めて若い国で、人材養成を進めていく必要がある。さらに草の根レベルで学校や病院に機材を供与するなど社会セクターの協力に重点を置き、技術協力、無償援助を中心に効果的な経済協力を進めていきたい。
 また今後ぜひ何とか振興したいのは、ビジネス、観光であるが、これらはなかなかうまくいきそうにない。日本企業にとって、ウズベキスタンについての情報が少なくビジネス環境も整っていないない。しかし今回、小泉首相が訪問した際、ウランの協力を進めるという話があった。ウランのほか、京都議定書のクリーン開発メカニズム(CDM)を中心に新しいビジネスが出てくることも考えられる。
 また観光に関しては、観光資源は一応あるものの、日本人観光客は極めて少ない。従って、この点についても小泉首相訪問による観光PR効果を期待している。またNHKが今、ウズベキスタンを含む「シルクロード」の第2弾をつくっており、来年4月に放映予定なので、団塊世代などが、ウズベキスタンを訪れるようになることも期待している。
 日本へは毎年、文部科学省及び留学生無償の留学生が約30名、JICAの研修員は約100名ぐらい来ている。今はアメリカやイギリスとの関係が良好でないことから、これらの国には行きにくいこともあり、ウズベクの若者にとって日本は行きやすい憧れの国になっている。従って日本語学習も人気が高まっている。

4. ウズベキスタン情勢における今後の注目点
 今後の注目点を3つ挙げると、第1にカリモフ大統領の任期が来年1月で終了することだ。カリモフ氏は現在68歳で、再選を目指すのか、あるいは後継者に譲るのかと色々とうわさされている。しかし後継者には、現在のところ明確な人がおらず、憲法は3選を禁じているものの、何らかの形で再選を目指すと見られている。
 第2は、今後、ウズベキスタンの自由化、民主化がどうなるかだ。私は2年間見てきたが、自由化も民主化も全てウズベク流であり、少しずつゆっくりやっていくといった感じだ。これについては、今後も変わらないと思われる。ウズベキスタンをめぐる内外情勢が緩和される方向に行けば、自由化、民主化はさらに進むかもしれない。
 第3は、中央アジア諸国の今後の地域協力だ。ウズベキスタンはこれを支持しているものの、隣国との関係はよいとは言えず、地域協力には総論では賛成だが各論では難しいという状況だ。しかし最近はこれを改善しようとする動きも見られ、各国の大統領による非公式の首脳会合も開催されている。同じバック・グラウンドを持った国々なので、このような形で少しずつ地域協力を進めていくのがよいと思う。政治的野心のない日本が触媒となり、地域協力を進めていくことは、彼らにとっても受け入れやすいと思う。

(敬称略 / 講師肩書は講演当時 / 文責:貿易研修センター)

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担当:総務・企画調査広報部