第68回-1 中央ユーラシア調査会 「中央アジア・ウズベキスタンを取り巻く地殻変動」日本貿易振興機構(ジェトロ) 海外調査部ロシアNIS課 課長代理 下社 学【2006/11/29】

日時:2006年11月29日

第68回-1 中央ユーラシア調査会
「中央アジア・ウズベキスタンを取り巻く地殻変動」


日本貿易振興機構(ジェトロ)
海外調査部ロシアNIS課
課長代理
下社 学

下社 学 JETROが中央アジアで初の事務所をウズベキスタンに設立したのが2000年10月で、私は立ち上げに伴って赴任し、今年7月末までの約6年間、現地で貴重な経験をさせていただいた。私自身まだまだ勉強中だが、今後この地域がどうなるのか関心を持っている。

1. ウズベキスタンの外交における変化
 ウズベキスタンが独立して15年が経つが、中央アジア諸国で、ウズベキスタンほど内外を取り巻く情勢、国際関係が変化した国はないのではないか。独立後、ロシアと一線を画した外交運営をしていたが、その後は国際通貨基金(IMF)とうまくいかなくなり、米国と少し疎遠になった。米国はウズベキスタンの人権問題への批判を強めていた時期があったが、その後は米国同時多発テロ(9.11)が転機となって、ウズベキスタンと欧米の距離が縮んだ。ウズベキスタンは為替の改革努力などをしてIMFの8条国になったが、その後は再度、欧米との距離が開いていった。いくつか理由が指摘されるが、1つは、ウズベキスタンは必死に金融改革をやり、西側からの見返りとしての融資を期待したが、実際には期待ほど拠出されず、ある意味、失望があった。そしてロシア経済が強くなってきたため、その庇護を求めようという動きもあった。さらにそれを決定づけたのが、2005年5月のアンディジャン事件だった。事件をめぐり、欧米は国際的な調査団の受け入れを要求したが、ウズベク側はこれを拒否して溝が広がった。アメリカもハナバードの空軍基地から撤退を余儀なくされ、また欧州は形のうえだけだが、ウズベキスタンへの経済制裁を導入した。そのような状況でロシアとの関係は強くなっていき、また中国もプレゼンスを高めている。しかし最近は、再び欧米との対話を模索する動きが見られ、欧米側もこれに応えようとしている。このようにこの15年間、針が振れており、最終的にどう収斂していくのか私も大変関心がある。

2. 外資系企業をめぐる変化
 ウズベキスタンにおける戦略部門、資源エネルギーを中心とした部門へのロシア企業の誘致、進出も、時を同じくして進んできた。ロシア企業が戦略部門に入ってくる一方で、非ロシア系の外資系企業に対する風当たりは若干強くなってきている。
 2006年6月から、ウズベキスタンは外資系企業にそれまで適用されていた優遇措置を、かなり見直した。他方で石油、天然ガスでは、ガスプロム系やルクオイルのような企業が入っているPSA(生産分与協定)に基づく契約、開発協定を結んでいる企業に対して、引き続き優遇措置を続け、そうでないところにはかなりの優遇措置を撤廃するとしている。内資と外資への差をなくすという意味では、国際基準に近づいているという見方もできるのかもしれないが、ロシア企業の排他性を確保することにつながりかねない。
 他方で中国企業の存在感も増しており、これを牽引しているのは、まさにトップ外交だ。04年6月のタシケントにおける上海協力機構のサミットには国家主席が参加して、カリモフ大統領もその後、中国を訪問した。カリモフ大統領の訪中は05年5月末で、アンディジャン事件の混乱が覚めないうちに訪中を行ったことになる。中国にとっては近い将来のエネルギー需要を満たすための、エネルギー外交という意味合いがあり、ウズベキスタン側にとっても、枯渇しつつある既存の鉱床や設備の老朽化に対して中国資本を入れることで、少しでも何とかしたいという意図があるかと思う。

3. 欧米との関係改善と周辺地域
 欧米との関係も最近になり、少しずつ変わってきた。米国務省のバウチャー次官補が今年8月にウズベキスタンを訪問し、この11月半ばにも国務省の南および中央アジア局のトップが再訪したという。最近は欧州連合(EU)も、アンディジャン事件後の経済制裁措置を、解除しようという動きを見せている。ウズベキスタンをこれ以上、孤立させることは、この地域にまさしくロシアと中国の権益が伸び、関係が強化されることだ。したがってこれ以上、ウズベキスタンを避けずに対話を深め、仲直りしようというのかもしれない。
 またこの地域でウズベキスタンと並ぶ大国というのがカザフスタンで、こちらも圧倒的な存在感を発揮している。10%近い経済成長率が続いており、ナザルバエフ大統領が9月に訪米し、数日前には英国を訪問した。カザフスタンは2009年には、欧州安全保障協力機構(OSCE)の議長国就任も目指している。

4. 中央アジアにおける日本企業の活動
 中央アジアという地域で、JETROとしては日本企業に何とかプレゼンスを発揮していただきたい。先日、当時の小泉純一郎首相が中央アジアを歴訪し、カザフスタンとはウランに関しする話が出たが、非石油、非資源部門で、日本との民間経済交流をいかに活発にしていくかを考えると、なかなか妙案が浮かばない。
 京都議定書の枠内でのクリーン開発メカニズム(CDM)、排出権取引の可能性については、日本企業の関心も非常に高いが、CDMを進めるうえで必要な、各国の事務局設置がなかなか進んでいない。また玄武岩という岩からできるバサルトファイバーという繊維があり、これを自動車に使われている石油化学系のプラスチックやゴム部品の代わりに使って、ショック、音、温度の緩衝材として利用できるかもしれない。
 いずれにしても、とくにウズベキスタンは二重内陸国で、ロジスティックスの問題が付きまとう。綿花、果物、大理石がある、といった話などを聞くが、同じようなものは他のロジスティックスが有利な国にもあるので、中央アジア特有のものがない限り、企業によるビジネスは難しい。それでなくても周囲に難しい国がたくさんあり、一筋縄ではいかない。どのようなことができるか、みなさまのお知恵をいただければと思う。

(敬称略 / 講師肩書は講演当時 / 文責:貿易研修センター)

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担当:総務・企画調査広報部