第75回 中央ユーラシア調査会 「最近のカザフスタン経済の動向と日本・カザフスタン経済委員会の活動」三菱商事株式会社顧問/帝京大学経済学部教授 高島 正之【2007/06/15】

日時:2007年6月15日

第75回 中央ユーラシア調査会
「最近のカザフスタン経済の動向と日本・カザフスタン経済委員会の活動」


三菱商事株式会社顧問/帝京大学経済学部教授
高島 正之

1. 好調なカザフスタン経済と求められる雇用創出
高島 正之 カザフスタン経済は好調で、実質の国内総生産(GDP)成長率は2005年には9.5%、2006年度は上半期が9.3%、通年では10.6%となっている。今年度の見通しは7.5ないし8%だが、過熱気味なところがあり、政府はむしろ慎重にこれを見ている。
 今の政府の慎重姿勢の理由は、やはり物価が上がっており、消費者物価指数(CPI)上昇率が前年比8.6%で、インフレターゲットの7.6%を上回っているためだ。産業構造はGDP構成比で見ると、鉱工業のシェアが2005年で31%と最大で、とくに鉱業の割合が高い。また最近は不動産ブームで、アスタナに行けばどんどんビルが建設されている。そのようなこともあり、建設業が伸びている。それに伴い、工業、サービス業も上昇傾向にある。
 一方、就業人口では農林業が全体の33.1%と最大だ。以下、商業の14.6%、製造業の7.1%、鉱業の2.6%、電力2.5%、教育関連9.3%、運輸通信業7.2%となっている。国の産業で、稼ぐ部分と就業人口の配分とがずれているところに問題がある。失業率は、2004年が8.4%、2005年が8.1%、2006年が7.8%と下がっている。まだ5%をかなり上回っており雇用水準が高いとは言えないが、成長する経済を背景に次第に下がっており、よい傾向だ。
 石油産業が伸びているが、石油産業ではあまり人を使わないため、どのように産業構造を変えていくかが課題となっている。今後は手工業、モノづくり産業、そして今はないがコンピューターのソフト産業、電機、電子、自動車のような分野へ人がまわっていくようになれば、産業構造と就業構造がマッチした安定した形になっていくのではないか。実はそこに、日本カザフ経済委員会が期待されているポイントがある。

2. 対日関係と甘利経済産業相の訪問
 日本との関係だが、対日貿易は2006年には680億円で、輸出が388億円、輸入が292億円となっている。この数字自体は、前年比20%増という非常に大きな伸びになっているが、絶対値は小さい。カザフスタン側としては、この貿易の数字をもちろん伸ばしたい、そして日本からの直接投資増加にも、大いに期待している。日本からカザフスタンへの直接投資は累計で11億6000万ドルだ。これは大使館から出ている数字だがまだ少なく、この辺にもカザフスタンが期待するところがあるようだ。そして経済事情に関しては大使館から出されている4月20日付の簡単な報告書に要点が全てカバーされている。
 2番目に、甘利経済産業大臣のミッションについてお話したい。小泉純一郎前首相が現地を訪れたのは、2006年8月だったと思うが、これは非常にカザフ側から大歓迎された。 そして経済産業大臣が訪れるのは今回が初めてで、しかもウランを買う資源外交ということで、かなり大きなおみやげも持って行き、非常に歓迎された。
 日本側からは資源のない国で、もっと早くから資源外交を展開していなければいけなかったと思う。2003年ごろから鉄鉱石や石炭の値段が急激に上がり、「日本には資源外交が足りないので、もっとやってもらいたい」という発言が業界からかなり出ていた。甘利経済産業相も、今後の資源確保は民間主体でやるが、政府も大いにサポートしたいとコメントしている。今回の中央アジアへのミッションにより、資源外交の端緒を開くことができたと言える。
 日本はウランの加工技術や原子力発電設備のメンテナンス、安全運転に関するいろいろな技術を出すことになった。日本のウラン輸入に占めるカザフスタンのシェアは、現在は1%程度しかない。価格が16倍に跳ね上がり、ますます入手が難しくなる中、今回カザフスタンとこのような約束がなされた。これが実現すると、将来は日本が輸入する総量も増えるだろうが、カザフスタン産のウラニウムが占める割合は、これまで1%だったのが30から40%に上昇しそうだ。カザフスタン自体は、世界第2位のウラン資源の埋蔵量を持っているということだ。またカザフスタンは大雑把に言えば、ロシアに次いで2番目に可採埋蔵量の多い国と言えそうだ。大臣のミッションの成果は、評価してよいと思う。

3. 日本カザフスタン経済委員会の活動状況
 次に、日本カザフスタン経済委員会の活動についてお話したい。カザフスタン独立後、この活動は直ちに始まり、2006年3月にはアスタナで第8回の会議が開かれた。今後はより実務的なテーマについて、アクション・プランをつくり進めていこうと合意している。
第9回会議は東京で、9月か10月に開かれる予定だ。実務的なテーマについて話し合うことが決まり、カザフスタン側から約50のテーマが出され、5つが選ばれた。カザフスタン政府としてはまず、貧富の差拡大是正が最大の課題で、雇用機会を増やしたい。さらに天然資源に依存した経済からの脱却、産業構造の多角化も進めなければいけない。そして環境問題では、アラル海の問題などで頭が痛いようだ。さらに保健医療、国民福祉も十分でない。
 最後に、カマルディノフ氏という新しい大使が日本にみえた。日本語は上手で、大変な知日家だ。私との面談では両国間の貿易は増えているが、もっと増やしたい、直接投資も増やしてほしい、そしてアラル海の問題も取り上げてほしい、と云っておられた。今年12月には別府でアジア太平洋水サミットが開かれる予定で、そこでもこの問題が取り上げられる。塩水湖で水が減り、塩しか残らなくなってしまった。それによって土地利用が難しくなっており、他の関連する問題があるという。また大使の目標は3つあり、1つは原子力の平和利用に関して協定ができたが、条約にしなければならない部分があるため、それを実現したいということだ。そして投資の推進に向け、二重課税防止条約の早期締結と投資保険制度の整備を、在任中に実現したいという。さらに投資フォーラムやカザフスタン・セミナーも開催していきたいそうだ。
 カザフスタンは中小企業の振興によって雇用機会を増進したいと考えており、日本側も協力していこうとしている。政府も支援してくれるということだ。小泉前首相以降、かなり風向きが変わり、われわれの委員会の仕事もやりやすくなった。ぜひ皆さんのご支援もお願いしたい。

(敬称略 / 講師肩書は講演当時 / 文責:貿易研修センター)

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担当:総務・企画調査広報部