第76回 中央ユーラシア調査会 「中央アジアの経済開発と環境問題」国連大学共催 Central Asia Roundtable【2007/06/29】

日時:2007年6月29日、場所:国連大学 エリザベス・ローズ会議場

第76回 中央ユーラシア調査会
「中央アジアの経済開発と環境問題」
国連大学共催 Central Asia Roundtable


基調報告(1)
「キルギスタン-問題提起及び経済・環境政策」
アスィルベク・アイダラリエフ・キルギス共和国大統領特別顧問、キルギス国際大学学長


アスィルベク・アイダラリエフ 21世紀の幕開けと共に、貧困な山岳地帯の国々が社会的、政治的に不安定な地域となってきた。国連は2002年を国際山岳年と宣言した。山岳地帯の国々の多くがテロリズム、過激主義、分離主義、麻薬ビジネス、局所的な紛争の原因となっている。不安定性の基本的な要因は、住民の貧困にある。世界で極貧状態にある人たちは数十億人で、うち8億人以上が山岳地帯に住んでいるといわれる。また山岳地帯での自然資源の長期にわたる開発により、それらの国々の経済的な潜在可能性は低下してきている。住人たちは厳しい気候条件、エコシステムの高い脆弱性、農業の低い効率、いろいろな物質やエネルギー・コストの高さ、通信からの孤立、市場に対する結びつきの弱さ、社会、経済的なサービスへのアクセスの制限などいろいろな問題に直面している。
 また山岳地帯では生存のために多くの資本を投下しなくてはならず、住民は所得の大部分を食料に使わなければならない。こういった貧困により、山岳地帯の住民は生態系について過酷な取り扱いをしてしまう。また世界的な気候変動は危機的な状況にある山岳地帯諸国における生態系の状況を悪化させ、隣人である低地国にも影響を与えている。

 キルギスタンやその他の山岳地帯の国々は、山岳地帯イニシアティブをとりながら、支援を貧困の山岳地帯諸国に提供しようとしている。国連の文書では、ミレニアム開発目標を達成するための実践的な開発計画投資という文書の「特別なニーズを持つ国々」というカテゴリーの中で、初めて「山岳地帯の国々」という概念が導入された。今後はテロリズム、懐疑主義、社会的な対立や麻薬取引といった原因を乗り越えるための山岳イニシアティブの実施が必要だ。

基調報告(2)
「ウズベキスタン-問題提起及び経済・環境政策」
ミルソビット・オチロフ・駐日ウズベキスタン共和国大使


ミルソビット・オチロフ 2006年、わが国のGDPは7.3%増だった。工業製品の伸びは10.8%、農業生産は6.2%、サービス部門は19.5%の伸びで、投資の伸びは11.4%、インフレ率は6.8%にまで下がった。2006年で最もよかったことは、輸出の可能性と競争力がついたことだ。構造改革は今も続いている。例えばエネルギー産業の近代化、能力の構築、冶金企業、石油部門、また繊維、絹、化学製品などの企業の近代化だ。金融市場も急速に発達している。自動車産業、バイオテクノロジー、薬品産業、通信産業などもそうだ。
 2007年には国内の経済成長を重視しているが、国際経済関係も重要だ。日本がわが国の改革実行に大きな役割を果たしてくださったことに感謝している。ウズベキスタンのカリモフ大統領が2002年に訪日し、小泉純一郎前首相が2006年にウズベキスタンを訪問してくださり、以降、両国の国際貿易関係が強化された。さらに経済産業大臣の甘利氏が、2007年4月にウズベキスタンを訪問され、日本の企業の方たちも来られた。石油、ガス、ウラニウム、鉱業資源などについて、具体的な投資プロジェクトの実施を討議している。

 この2年間、戦略的な分野で両国間の経済委員会が開かれている。その分野には電気通信、家電、観光業などが含まれる。ウズベキスタンは鉱物資源が大変豊かで、日本の投資家とウラニウム、その他の鉱物資源の探査、また抽出について話し合いたい。さらに日本のパートナー、企業、投資家とCDM(クリーン開発メカニズム)分野でも協力したい。そしてやはり協力のセクターと考えるのは繊維だ。また自動車産業などにも関心がある。ウズベキスタンは、技術的にも高度な人材を持っている。さらに観光業も協力の目玉の1つだ。シルクロードがウズベキスタンを通過しているのはご存知だと思う。皆さまにぜひ、いらしていただきたい。

問題提起へのコメント

(1)「ガバナンスと民主的アプローチについて」
袴田 茂樹(青山学院大学教授)


袴田 茂樹 中央アジア諸国には3つの課題があると思う。それらは(1)政治の民主化、(2)経済の改革、(3)社会の安定だ。民主化と経済改革と安定という3つは本来、優劣をつけられない。したがって、この3つを同時に追求する諸条件があるなら、そうすべきだが、そのような条件が整っている国は多くない。中央アジア諸国では、欧米的な民主化の処方箋をそのまま当てはめられない。私は、第1が安定、次は経済改革、その後に民主化だと考える。権威主義的な開明主義、あるいは開明主義的な権威主義といった方がよいかもしれない。そういったアプローチは、いくつかの国では避けられないと思う。ただ安定を第1に置くことには危険がある。それは既得権益を擁護し、腐敗、汚職を蔓延させる可能性もある。したがって安定が制度化されるのは、その下で改革が真剣勝負で進められる条件においてのみだと考える。

(2)「中央アジアの環境問題」都留 信也(アース・ウォッチ・ジャパン副理事長)

都留 信也 中央アジアの環境について問題化していることを3つ挙げると、1つは気候変動が大規模化していることだ。そして2番目に地殻変動が大型化してくるという話がある。中央アジアでは巨大化した地震等の地殻変動がいずれ起きる。3番目に人口が増えれば天然資源の大量消費が起きる。さらに水資源管理の問題がある。地域的にはパミールや天山山系は大きな山系なので、森林植生や植林計画、あるいは土壌浸食防止なども考えなくてはならない。国連が決めた国際山岳年などもアピールできるが、やはり自然を相手にするプロジェクトには年月がかかる。1つの国、地域で対処するのは難しく、これらの問題は国際的に扱われなければならない。山岳、高原、低地、荒漠地帯がタジキスタン、キルギスタンなど中央アジア地域にあるので、こういったところのインフラの再構築も必要だ。岩石の滑落や土砂崩壊、自然災害防止も大変重要と考える。

(3)「経済開発の現状と課題」田中 哲二
(国連大学長上級顧問、中央アジア・コーカサス研究所長)


田中 哲二 中央アジア、南コーカサスは8カ国から成る。約半分の国ではソ連時代のGDP水準以上に回復しているが、残りの半分は独立時の水準に達していない。最大の原因はエネルギー資源を保有しているかどうかだが、これらの国はもともとランドロックド・カントリーで、交通や流通インフラの整備にも差が生じているということだ。さらに厳しい乾燥大陸性気候への対応が大きな負担で、移行経済としての二重の負担もある。これは社会主義計画経済から市場経済化への体制変換の負担と、一般的な途上国として経済をテイクオフ水準にまで引き上げる負担だ。「IMFアングロサクソン開発モデル」による急速な自由化への適用能力の差は、エネルギー資源を持つ国とそうでない国にはっきり表れている。他にペースの遅い製造業育成の問題、貿易立国によい国際環境に恵まれてこなかったこと、また環境問題としてソ連時代の負の遺産を抱える一方で、市場経済化と共に発展する新しい環境問題にも対応しなければならないという負担も存在している。

大慈弥 隆人 IIST専務理事

大慈弥 隆人
IIST専務理事

ハンス・ファン・ヒンケル 国際連合大学学長

ハンス・ファン・ヒンケル 国際連合大学学長


開催風景
パネリスト

(敬称略 / 講師肩書は講演当時 / 文責:貿易研修センター)

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担当:総務・企画調査広報部