第81回-1 中央ユーラシア調査会 「キルギスの農業と農業金融の動向」農林水産長期金融協会基金第二部長 川井 晨嗣【2007/11/14】

日時:2007年11月14日

第81回-1 中央ユーラシア調査会
「キルギスの農業と農業金融の動向」


農林水産長期金融協会基金第二部長
川井 晨嗣

1. 増加する国外への出稼ぎと中国の影響
川井 晨嗣     キルギスは一人当たり国民所得が500ドルを切り、経済的に困窮しているイメージを持っていたが、この9月に訪問した際、街を見ると非常に豊かな印象を受けた。不動産投資が活発化しているが、中間層の形成による住み替え需要に加え出稼者からの送金の影響、カザフスタンやロシアからの、投資目的での動きなどが要因としてあげられる。中国製品が溢れており、農産物にも低価格品が大量に入っている。1998年のWTO(世界貿易機関)加盟が失敗だったと農業関係者らは口を揃える。輸入の増加により小麦等の耕種部門は不振で、農業銀行の融資は畜産が80%を占め耕種部門は1%程度しかない。畜産も肉に偏り、加工流通体制に問題のある牛乳や国際価格が低迷する羊毛などは減少している。

2. 進む農業の集約化
 大型経営への農地集約の加速化が注目された。公式統計では農業労働力が5割を超えているが、実態はロシアやカザフスタンへの出稼ぎが多く、日本の高度成長期に似た状態である。
 100へクタールを超える家族経営が出現する一方で、小規模農家の共同化の動きも見られる。連作障害を防止するため、営農指導組織は再集団化による輪作を指導している。
 農業・農村金融は、キルギス農業公庫と、農村部の信用協同組合の融資が中心であったが、近年マイクロファイナンスを行うNGOの伸張が目立つ。全国に約300あり、3割程度の融資シェアを有している。なお、キルギス公庫は今年5月に、100%国の出資のまま普通銀行化された。農村部に限定されるが、預金業務が認められたのがメリットである。

3. 日本の支援に必要な見直し
 90年代後半は、キルギス農業公庫などが新たな意識を持った農民を育てていった時期であったが、全体の生産を支えていたのは日本の援助であった。
 10年間農業・農村金融分野で協力してきたが、金融、市場経済化に対する意識改革に効果があった。今回気になったのは、非常によい経営が銀行離れしていることである。
また、マイクロファイナンスの限界も感じた。月利3%での商売は可能だが、年利43%に見合う収益を農業で上げるのは不可能であり、限定的なものになる。

 研修プランも見直しが必要である。戦後の復興期の成功体験に基づいた制度論をベースに、組織や金融実務などを組み込んできたが、双方の状況が価値観を含め変化している。高度成長期とアナロジーというような問題もあるし、国際化についてもキルギスでは全く猶予期間なしでスタートしており、日本の経験が参考にならない部分がある。その辺も含め今後の課題としたい。

(敬称略 / 講師肩書は講演当時 / 文責:貿易研修センター)

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担当:総務・企画調査広報部