平成19年度 中央ユーラシア調査会公開シンポジウム -第84回 中央ユーラシア調査会-「中央アジアと東アジア協力の展望」【2008/02/04】

日時:2008年2月4日、場所:霞が関東京會舘ゴールドスタールーム

平成19年度 中央ユーラシア調査会公開シンポジウム
-第84回 中央ユーラシア調査会-

「中央アジアと東アジア協力の展望」


基調講演
「カザフスタン、日本関係の展望とSCO を通じた対中国関係」
アクルベク・A・カマルディノフ 駐日カザフスタン共和国特命全権大使

アクルベク・A・カマルディノフ  世界は今上海協力機構(SCO)に注目している。カザフスタンはSCO との相互関係を対外外交政策の優先的な方針の1 つとみなし、活発に活動している。SCO 加盟国はユーラシアの5分の3の面積を占め、人口は世界の4 分の1 に及ぶ。発足から7 年を経て、SCO は強力な組織構造を確立、活動域内の安全と安定を保障する役割を十分に担っている。重要なことは、SCO は幅広い国際協力を目指す開かれた組織だということだ。SCO は現在、多岐に及ぶ緊急に解決を要する問題を抱えている。それらは組織域内における安全、平和、安定の保障や国際テロリズム・過激主義・分離主義対策、さらには経済協力の促進などだ。2007 年8月のSCO サミットでは、機構内の安全と安定をより強固にし、経済統合を促進することへの参加国の決意が確認された。
 SCO の参加国は経済発展において、極めて高いパフォーマンスを示している。2007 年1~8 月のカザフスタンの上海協力機構加盟国との貿易取引高は180 億米ドルになり、前年同期(118 億米ドル)比+52.7%の大幅増となった。その中でもとりわけカザフスタンと中国の2 国間関係の発展は、注目をひくものであった。中国との友好的な隣国関係の発達は、カザフスタンの優先的な対外外交政策の1 つである。1992 年には3 億6800 万ドルだった両国の貿易取引高は、年々増加し15 年で25 倍以上になった。両国の経済協力における最優先的なものはエネルギー分野だ。アタス~アラシャンコウ間の石油パイプライン建設は完了し、クムコリ~アタス間でも建設が急がれている。さらに、ムイナクの水力発電所建設の計画も進んでいる。また、今年、両国を結ぶガスパイプラインの建設も予定されている。その輸送能力量は、100 億立方メートルとなる見込みだ。
 昨年9 月に両国間で締結された「戦略的協力の強化・拡大に関する枠組協定」では、原子力分野の戦略的パートナーとしての最重要指針が組み込まれ、また、天然ウランの採掘や中国の原子エネルギー産業のカザフスタンへの投資のための共同会社設立も含まれている。さらに近年、両国は環境保全、水資源の共同利用といった分野でも、関係は深まっている。主要な国際問題に関する両国政府の立場は非常に近く、そうした立場を基礎にした緊密な協力体制は、両国のバイの関係においても、SCO などの組織内においても維持されている。
 日本もカザフスタンの対外外交政策、対外経済協力において重要な国だ。両国は相互協力の一層の活発化に向けて、可能な限り努力していく準備が整っている。2006 年8月には小泉純一郎元首相が、本年4 月には甘利明経済産業大臣がカザフスタンを訪問した。今や日本のビジネス界の関心は、カザフスタンとの一段の関係強化に向かっているようである。とくにウラン採掘は、日本のエネルギー市場で大いに期待されている。わが国にとってとくに重要なのは、先端技術や現代的マネージメント、資金調達能力を持つ中小企業を含め、できるだけ多くの日本企業がカザフスタンに進出してくれることだ。

第1セッション 「現地調査報告」発表
「トルクメニスタン」岡田 晃枝 東京大学特任講師

 昨年11 月22 日から1 週間ほど、トルクメニスタンで現地調査を行った。ニアゾフ前大統領のときには非常に強いいわゆる権威主義体制、事実上、独裁に近い形の体制だった。しかしニアゾフ前大統領が一昨年末に急死し、昨年2 月に行われた選挙では、後継者になるとはほとんど誰も思っていなかったベルディモハメドフが大統領に選出された。
 新大統領の下、前大統領の体制がどのよう変化していくかが注目される。今回現地を訪れたところ、ニアゾフ政権の下では、国内の至るところに掲げられていた大統領の肖像画が、適度に肖像がはずされているのがみてとれた。現地での調査活動を通じ、大統領の地位は以前のような絶対的な君主というよりも、相対化されたものになったのではないかと感じた。
 一方、市民生活は一見非常に豊かになったようにみえる。4、5 年前につくられ、当時はほとんど客をみかけなかったトルコ系のショッピングセンターも、今回はたくさんの買い物客で賑わっており、ここで買い物をできるほど経済的な余裕のある市民が増えたのだと思う。
 また国民がゆったり過ごせるような場所も増えており、ロープウェイ・パークなどにも多くの市民が集まっていた。
 ベルディモハメドフ政権が個人崇拝の体制を維持するには、2 つの方法がある。1 つはニアゾフ大統領を神格化することにより、後継者としての自分を際立たせる、もう1 つは自分自身を神格化させることだ。どちらの方法をとるかだが、結局は自分自身の肖像画を高く掲げてニアゾフ前大統領にとって代わるものと位置づけることは難しく、国民はついていかないという感じだ。実際、ベルディモハメドフ政権は基本路線を維持しつつ、できるところでうまく差別をはかる選択をしている。また日本との関係でいえば最近、国立大学に日本語学科ができた。今後いろいろな意味で、日本との交流も盛んになっていくだろう。

「タジキスタン」稲垣 文昭 慶應義塾大学大学院特別研究講師
 昨年11 月20 日から30 日まで、タジキスタン調査を実施した。奇しくも、11 月上旬に在日本タジキスタン共和国大使館が開設され、一等書記官が旧知の人物だったため調査のアレンジなど同大使館の協力をえることができた。「ロシアとの関係」に関する調査ということで希望をだしておいたが、結果としてほぼダム、水力発電関係を中心とした調査となった。これは、タジキスタンの経済において重要な位置をしめる同施設の建設には、他国の協力が必要であり、ロシアがその重要なパートナーであることが要因と思われる。
 現地ではまずノラクダムへ行ったが、ここは1960 年に建設が開始されたダムで、1310 万kWh の発電力があり高さは300mある。タジキスタンの中心的なダムだが、ダム上部に出るための坑道は工事中のような状態で、メンテナンスを行う十分な資金がないとの感想も持った。他方、ログンダムも1976 年のソ連時代に建設が開始されたが、1991 年のソ連崩壊により事実上建設が停止した。2004 年にはタジキスタンとロシアが経済発展協定を結び、その一環としてロシアのアルミニウム工場、ルスアルが投資する形で建設契約に調印した。このときの内容では、ルスアルが51%の支配権を持つことになっていたといわれる。しかしその後、建設はなかなか進まず、2007 年4 月に「ログン発電所の建設で米国企業との間で交渉中である」ことを財務大臣が発表、8 月にはタジキスタン政府がルスアルとの契約破棄を発表した。タジキスタンは最低でも6 割の支配権を求め、有利な契約に変えたかったといわれる。そしてサントゥーダにも行ったが、中は見学できず外から見るにとどまった。さらにドゥシャンベとスグドをつなぐトンネルも見学し、これはイランがつくっているのだが建設現場には中国人が多かった。2006 年に開通式をしたが、今も建設中で、中国が人もお金も持ってきて建設しているようだった。
 ロシアとの関係について現地でいろいろ話を聞いたところ、タジキスタンにとってロシア
は絶対的になければ困る存在で、手を引かれた場合の代替物が必要、若しくはロシアとの交渉を有利にするためのもの、その意味での他国が必要だということだった。

開催風景

コメント/清水 学
ユーラシアコンサルタント代表取締役社長:

清水 学  トルクメニスタンの大衆レベルでは、強烈なイメージの前大統領が亡くなり、それに代わるべき体制、メカニズムが具体的にみえないのではないか。したがって惰性的に、前の体制に対するのと同様の反応をする。このような中で、ベルディモハメドフ大統領自身がどの程度、体制を変えようとしているかというイニシアティブの問題になると思う。外交的にはおそらく、以前よりオープンになってきただろう。そしてタジキスタンだが、ロシアとの関係の調整で苦労していることを伺った。1 つの資源ナショナリズムの現れかと思う。中央アジア諸国は独立時とは異なり、かなり冷静に判断しながら大国間のパワーを調整しようとしていると感じた。また南アジア、東南アジアなどとの関係をどう調整して可能性を求めていくかが、中央アジアにとって新しく可能性をみる1 つの出口になるのではないかと考える。

第2セッション 「中央アジアのアイデンティティ」
問題提起/コーディネーター
袴田 茂樹 青山学院大学教授、調査会座長:

袴田 茂樹 「中央アジアのアイデンティティ」に関して、5 つの問題点を提起したい。第1 は、中央アジアは統一的な地域としてのアイデンティティを確立できるのかという問題だ。われわれが関心を持つのは中央アジア諸国の共通性で、旧ソ連の構成共和国だったことが1 つの強い要素かと思う。そしてイスラム文化圏としても、歴史的、文化的、社会的な共通性が、地域のアイデンティティとどう関わるかだ。さらに中央アジアを結びつけるものとして、権威主義的要素もある。2 番目に、独立国家としてのアイデンティティの確立という問題がある。中央アジア諸国では、独立国家をつくるプロセスがしばしば対立要因に転化してきた。
 そして3 番目に、多方面外交と国際的なアイデンティティの確立という問題がある。中央アジア諸国は多方面の駆け引きにより、あらゆる国々から利益を引き出そうとしてきた。 CIS諸国は形骸化し、地理的な概念に過ぎないという見方さえある。その中でブロック化も進んでいるが、主たる問題は二国間関係で決められている。いる側面がある。4 番目に、エネルギー問題と国家アイデンティティの確立という問題がある。いわゆる「パイプライン戦争」は、各国のアイデンティティ確立問題と不可分だ。第5 に、文化、言語面でのアイデンティティ確率の問題がある。中央アジアではソ連時代とは違う独自の歴史認識も必要で、また各民族の言語、教育、文字の問題、そして教育をどのような形でどの言語で行うか、あるいはロシア語と民族語の関係といった問題も存在する。

「中央アジアの地域としてのアイデンティティの現状と課題」 ティムール・ダダバエフ 筑波大学大学院人文社会科学研究科准教授
ティムール・ダダバエフ 中央アジア地域のアイデンティティはいまだに定着しておらず、地域外のみならず地域内でも、それがいかなるものかに関しては、認識理解が明確ではない。
 中央アジア諸国の歴史、政治、経済、伝統、生活様式などには昔から共通点が多く、この地域に住む人々も交流を活発に行ってきた。それらが地域としての中央アジアのアイデンティティ形成・維持を支えてきた。しかし、ソ連崩壊後の様々な課題が各国のリーダーや人々の考え方に影響している。彼らは、課題に取り組む過程で、地域全体ではなく自国の利益のみを優先し始めた。皮肉なことに、そのような行動は各国の立場をむしろ弱めた。結果的に、中央アジアを地域として認識し、そのようなアイデンティティを再構築する重要性が明らかとなった。アイデンティティ再構築の過程には複数の課題があり、中央アジア諸国の将来は、彼らが様々な課題を乗り越えられるか否かにかかっていると言っても過言ではない。
 中央アジア地域としてのアイデンティティ結成の利点は主に3 つほど挙げられる。1 つは、今までの傾向と対蹠的に中央アジア地域をロシア圏、トルコ圏もしくは中東・アラブ圏の一部としてみるのは重要だが、そのために中央アジアの地域としてのアイデンティティの形成が不可欠である。さらに第2 の課題として、中央アジア共同体とそのアイディアをささえることができる中央アジアの地域としてのアイデンティティの関連の話を検討すべきではないか。そして最後の課題は、国益の再検討そのものが必要ではないかということだ。

「小国の強さ:「帝国」的世界秩序の中の中央アジア」
宇山 智彦 北海道大学スラブ研究センター教授

宇山 智彦  中央アジアの状況を語る際に繰り返し語られてきたのは、グレート・ゲームの再来、大国間の勢力争いということで、実際さまざまな形で競争が行われている。しかし大国が乗り込み勢力圏の分割を行う、異国の勢力圏に入るといった状況にはなっていない。米同時多発テロ事件(9.11)以降に米軍基地が置かれ、中央アジアもアメリカ世界帝国の一部になったという言説があったが、米軍はウズベキスタンからすぐに追い出された。またクルグズスタン(キルギス)のチユーリップ革命の背後に米国の影響力をみる見方もあったが、政権交替後はむしろ、反米意識が高まった。ロシアの存在は全体としては大きいが、分野や時期によって濃淡がある。また中国は積極的に進出しているが、十分な信頼関係が築かれているとはいえない。日本は親日国をつくろうと90 年代早くから関与してきたが、限界がある。
 これらの現象には主に2 つの理由がある。1 つは大国が中央アジアに関心を持っているといわれるが、影響力を競う競争のような面があり、具体的に何の利益が生まれるのかについて明確な戦略を持つ国は少ない。他方で中央アジア諸国は国家主権の意識を強く持ち、各国から関与を受ける際、バーゲニングを行う能力をかなり発揮してきた。グローバル化により国家の役割が変わっているといわれるが、治安をはじめとする最低限の部分で国家の役割は消えていない。それと帝国的な体系が並存する二重構造があり、なおかつ帝国、大国が実際に綿密な統治を行っている空間と、影響力を広げたいと考える外延的空間の間に差がある。外延的な空間については情報の不完全性が生じる。外延的空間に位置づけられた小国、中小規模の国は、情報の不完全性を利用して大国の裏をかくことができる。
 そして中央アジアの事情として無視できないのはソ連という過去だ。アイデンティティを含む民族文化の育成でも、ソ連体制が用意した共通のフォーマットに基づいてではあるが、個別の民族の文化が発展させられた部分がある。ソ連崩壊直後には民族問題が深刻化していくという話もあったが、結局はそれぞれの国の中心民族のヘゲモニーを前提としたうえで少数民族が適応し、アイデンティティの問題は後ろに下がっているようだ。 基本的に各国はプラグマティックな国益重視の外交をしており、さまざまな対立はあるが、アイデンティティのせいというよりむしろ国益を狭く捉えてしまっているためだといえる。

第3セッション 「東アジアの対中央アジア関係-上海協力機構(SCO)を媒介項に-」
問題提起/コーディネーター
田中 哲二 国連大学長上級顧問、調査会代表幹事:

田中 哲二 中央アジアを東アジア側からみるときに、上海協力機構の枠組は無視できない。SCO は「上海ファイブ」の時代を合わせるとすでに10 年以上続いているが、その間、上海協力機構の求心力は変化しているが、最近は域内経済協力の強化やオブザーバー国の増加等からこれが強まっているとみなければいけない。上海協力機構はどのような力を持ち、何しようとしている組織なのか、最近の動きから次の5 点にまとめられる。つまり、それらは(1)国境の画定と国境地域の信頼醸成、(2)「民族分離主義」、「イスラム過激主義」、「国際テロリズム」の脅威への共同防衛、(3)兵器、麻薬等の非合法取引の禁止、(4)貿易促進、エネルギー資源の域内開発・利用推進、(5)政治、防衛分野の地域協力の推進、米国の単独行動主義に対抗する地域機構整備、である。国境画定問題はすでにほぼ解決しており、上海協力機構の求心力に関する最も大きなテーマは変質してきている。国境確定→対国際テロ対策(共同軍事訓練)→経済協力といった順だ。日本が上海協力機構ないしは中国にどう対応するかだが、上海協力機構が今後発展すれば、中国は中央アジアと東アジアの双方にまたがる有力な参加国として、東アジア経済共同体形成運動に対する1 つの外交カードとして上海協力機構を使ってくる可能性がある。また、中長期的にみれば、SCO の外側で日本がユーラシア大陸から孤立する図式もないとは言えない。
 日本はSCO の動向を十分に注視していかねばならない。

「東アジア共同体の諸問題とSCO」
渡辺 利夫 拓殖大学学長

「東アジア共同体の諸問題とSCO」 渡辺 利夫 現代の中国には、2 つの大きな外交的ベクトルが働いているのではないか。1 つは東アジア共同体で、これを自らの主導によって形成しようという思考性が1 つのベクトルだ。もう1 つは上海協力機構だが、中国にはこの機構の主導国として北の脅威を排除することにより、自国の安全保障を確たるものにしようという志向性があるのではないか。
 中国は今、国力の膨張期で、この国力を背景に軍事力、とくに海軍軍事力の増強に走っている。これによって台湾を統一し、外洋進出を果たそうというのが積年の夢であり、これが少しずつ実現しつつあるのではないかと思う。中国は口を開けば反覇権だというが、これはありえない話だ。中国が東アジアにおける覇権を握ろうとすれば、もう1 つの大国である日本の覇権を封じ込めなければならない。中国が東アジア共同体を主唱する理由のかなり大きな理由として、共同体に日本を招き入れることにより日米を離間させるという戦略がみえてくるような感じがする。東アジア共同体が中国の地域覇権主義の海洋における行動空間であるとすれば、上海協力機構は中国の地域覇権主義のユーラシアにおける行動空間として形成していくことを望んでいるのではないか。
 上海協力機構を主導することで、米国の一極支配に抗しようというのが中国の意図ではないかと思う。巨大化する中国が、一方で東アジア共同体の主導者たる地位を明確にし、他方で上海協力機構の主導権を掌握、次代における米国との覇権争奪の争いを有利に展開させる、そういう遠大な戦略が今後10 年もすれば明らかになっていくのではないかと想像している。

「東アジアの安全保障とSCO」
茅原 郁生 拓殖大学国際学部教授

茅原 郁生  中央アジアが比較的、ユーラシア大陸内陸部の国家としての共通性を多く持つのに比べ、東アジアには海洋国家や大陸国家、島嶼国家や半島国家が混在し、宗教、民族のるつぼといわれるほどに多様である。東アジアの国家のほとんどは、第二次世界大戦後に発生した。その点では中央アジア諸国よりも一歩先んじていたが、この地域にはなお冷戦構造の残滓がある。東アジアからSCO をみると、中国がSCO を主導しながらこれを基盤に東アジアにおける安全保障上のトラブルに対し、優位な立場を構築するのではないかという懸念がある。
 SCO は今後、安全保障でどのような役割を果たすか、どのような組織に移行するか、中国とロシアという巨大なアクターがどこまで協力するのか、どういう思惑でこれを進めるのかといった点が注目される。私が着目するのは、2006 年のSCO 成立5 周年の上海サミットだ。
 ここにはオブザーバー国として、インドやパキスタンの他、イランまで招かれた。ここでの共同声明などでは東方の北大西洋条約機構(NATO)ではないと否定しつつも、かなり戦略共通目標を設定し、西側の価値に対してわれわれは異なる価値を持つ、独自性があるという主張や、内政干渉を許さないという、ある意味、冷戦後を仕切ってきたアメリカに対するアンチの立場を明確にしたように思う。2 つ目の事例として注目されるのは、昨年8 月にロシアのウラル地方で反テロ戦争合同演習が行われたことだ。加盟6 カ国では1 カ国だけがオブザーバーを出し、その他の国はロシア軍を主力に総勢6000 人規模で、中国は約1600 名の兵力を参加させた。安全保障の諸々の課題を抱える東アジアからみると、これは近年進んでいる日米安全保障体制の強化、あるいはミサイル防衛網構築の協力に対する1 つの対抗措置ではないかと考える。
 SCO について私は、中国、ロシアの主導の下で軍事ブロック化の方向が強まっているのではないかと思う。しかしこの地域は、経済的には発展途上の段階で、政治改革の上でも変動期にあり、軍事ブロック化が加盟国にとってよいことなのか、というも観点から再検討してみる必要があろう。

「日本の中央アジア政策とSCO」
宇山 秀樹 外務省中央アジア・コーカサス室長

宇山 秀樹 中央アジアに対する日本外交の主な目的は(1)中央アジア地域全体の安定と繁栄の確保、(2)エネルギー資源、鉱物資源の供給元の多角化、(3)民主主義などの基本的価値の定着をはかること-の3 つ。これらを念頭に、二国間関係強化や地域協力促進を進めている。日本は中央アジア独立直後から、政府開発援助(ODA)を中心に支援し、各国との政治対話にも努めてきた。 2006 年には小泉純一郎総理が日本の現職総理としては初めてカザフスタンとウズベキスタンを訪問した。また2004 年に立ち上げた「中央アジア+日本」対話が対中央アジア外交で重要な位置を占める。とくにエネルギー資源、鉱物資源のいわば国際的な争奪戦が激しくなる中、資源小国日本にとって中央アジアとの関係強化は重要だ。小泉総理訪問以降、カザフスタン、ウズベキスタンとはウランをめぐる協力が進み、レアメタルも有望な協力分野だ。自由、民主主義、基本的人権、法の支配、市場経済といった価値の定着を目指すことも重要な要素だ。日本としては対話と協力、例えば法制度整備支援などを通じて将来的に中央アジア諸国が基本的価値を共有するパートナーとなることを目指している。
 SCO については、今後、テロや過激主義の取り締まり以外の分野でどのような方向性をとるのか、加盟国間の協力によってユーラシアの安定と繁栄に貢献するものになるか注視したい。その関連で、SCOのアフガン問題への関与の可能性に注目。また、SCOの活動の透明性向上を引き続き求めていく。SCOについての情報収集と共に、SCO加盟国及び事務局との接触・対話を、機会をとらえ行っていきたい。

貿易研修センター 専務理事 大慈弥隆人

貿易研修センター
専務理事 大慈弥隆人

会場
第1セッション

第1セッション

第2セッション

第2セッション


(敬称略 / 講師肩書は講演当時 / 文責:貿易研修センター)

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担当:総務・企画調査広報部