第99回-2 中央ユーラシア調査会 「日中逆転下の中国経済」朝日新聞 経済部 兼GLOBE編集部 吉岡 桂子【2009/10/28】

日時:2009年10月28日

第99回-2 中央ユーラシア調査会
「日中逆転下の中国経済」


朝日新聞 経済部 兼GLOBE編集部
吉岡 桂子

1. 日中の経済規模の逆転
吉岡 桂子     2003年4月に中国の上海支局へ赴任し、その後は北京に移って2007年夏まで中国に滞在した。そして昨年夏まで、ワシントンの戦略国際問題研究所(CSIS)というシンクタンクで米中関係を見ていた。東京へ戻ってからは経済部で国際経済を担当し、その後は朝日新聞の『GLOBE』という新しいメディアで中国の経済力に関する特集があったため、その記事を書く仕事を数ヵ月間行った。この特集記事のためにアメリカや中国へ出張したので、きょうはこれらの取材に基づいてお話したい。
 建国60年を迎えた中国は、来年には国内総生産(GDP)、経済の規模で日本を抜く。ただ世界では、来年日本を抜くということよりも「中国はいつアメリカを抜くだろうか」ということへの関心が高い。国際通貨基金(IMF)の予測では、中国が日本を抜くのは2010年とされている。日本がGDPで世界第2位になったのは1968年だったので、この40年と少しの間にわたる世界第2位の座が、来年は中国になる。そしてアメリカを抜くのは、2020年から2040年の間といわれる。これはドル表示なので、人民元をより早いペースで切り上げていくならば20年ぐらい、今のペースであれば40年ぐらいということだ。
 中国は日本が来年、中国に抜かれたときの日本国内の反応を中国自体が楽しんでいるところがある。特集記事の取材では、中国でかなりたくさんの政府関係者や識者から話を聞いた。それらの人たちの多くは、「中国が規模で日本を抜くのはたいしたことではない」、「日本から学ぶことはたくさんある」といい、また「規模というのは無駄の多い規模だ」、「中国は日本を粗鋼の生産量で1996年に抜き、今は日本の3、4倍を生産しているが、過剰生産で無駄ばかりだ」という話をしていた。したがって、「省エネ、環境、そして人に優しい成長方式に転換してこそ、中国経済がさらに発展したといえる」とも言っていた。
 また米中のG2については皆が、「とんでもない」、「中国はまだ発展途上国だ」といい、「途上国の代表であり、世界をアメリカと管理するような意思は全くない」としていた。1つは「日本を抜いた」、「アメリカに迫る」、「G2」などといって目立つことにより、「大国としての責任を負いなさい」といわれるのは困るということだろう。とりわけG2というのは、それをまさにやろうとする場としてアメリカが用意しているもので、そのようなものに乗るほど馬鹿ではないという解説が1つある。そしてもう1つは、「本当に貧しいのだ」、「国内には民族問題もあり、公害も大変だ」ということだ。また共産党の統治が本当に安定しているかというと、それほど安定していない。したがって、外に向かってはしゃぎ倒す余裕はない。

2. 国際会議や機関で強まる存在感
 ただ中国の存在感が、国際的に高まっていることは事実だ。中国は国際会議や国際機関では、取れるものは今から取っておこうという反応をしている。例えばIMFや世界銀行の改革では、人事(ポスト)なり出資比率なりを上げようとしている。またG2、G4は嫌だが、G20という場で途上国として発言していこうとしている。このように、取れるものは取っておこうとする一方で、アジア共同体のようなものについては、今すぐやる必要性はないという感じだ。中国のアジアにおける力は、今後どんどん高くなるので、今これをやる必要はない。特に主権を譲り合わなければならないような協力は、10年後であれば、日本や韓国との関係でもさまざまな形で自分たちが強くなっている。したがって、もう少し経ってからやった方が有利だと思っている。アジア共同体構想といったものに対する中国の姿勢は、私が現地にいた2003~2004年ごろをピークにむしろ後退していると、今回の取材では感じた。
 ASEAN+3などといわれるが、これは互いに関税を引き下げるなど実利がはっきり見えるものに関してで、通貨のような主権をゆずりあう必要があることはやるつもりはない。つまり国家の根幹に触れないところ、また組織を持って本部をどこかに置くという話にならないものについては、「皆で仲良くしようね」という感じでやっていこうとしている。また鳩山由起夫首相が何を意味して共同体といっているのかはっきりしないが、中国ははっきりしないままずるずると時期的に後ろへ行った方がよいと思っているようだ。
 またこういう中国に対するアメリカの反応だが、先の大統領選では中国問題がもっと出てくるかと思ったが、それほど優先順位の高いイシューではなかった。おそらくそれでは票が取れないということがあったのと、今までの政権が選挙期間中に中国を叩いてそれに縛られ、発足してから困って途中で柔らかい路線に変える転換をしてきたという経緯もある。これも中国の台頭する経済力の影響だと思うが、オバマにしてもヒラリーにしても、それほど中国を叩くことなく大統領、国務長官になった。アメリカは、経済危機もあって弱っている。またアメリカはアメリカで、さまざまな問題を抱えて戦線を拡大したくないということもあるだろう。そして全体的なイメージでいうと、中国の経済規模が大きくなっていくことを止める、閉じ込めるのはもう無理だ、しかしながらアメリカの立場は守りたいという感じだ。

3. 内なる弱さ
 中国は外から見ると非常に強く見え、大きくなっているのは事実だ。そして中国自身、そう思ってもらって得なところはそう思ってもらおうという感じだ。しかし、中にものすごく弱点があることは、中国崩壊論を唱える外国の学者以上に自分でわかっている。したがって今後もできる限り、外向きには安定を優先した外交を続けていった方がよいと考えている。
 今は中国の対外投資が急増し、500億ドル程度にまでなっている。これは今年、さらに増えるだろう。中国国際投資というソブリンウェルスファンドのトップにインタビューしたところ、「日本も含めて今年から投資を再開する」ということだった。これまでに日本の目立った企業や不動産が買われていないことについては、日中関係に配慮して、あるいは面倒なことを起こしたくないということから中国が止めている可能性がある。逆にいうと、国民感情的にも両国の関係が安定すれば、買いにくることが増えるのではないかと思った。

(敬称略 / 講師肩書は講演当時 / 文責:貿易研修センター)

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担当:総務・企画調査広報部