平成22年度 第2回 アジア研究会 ●報告1「台頭するインドと東南アジアとの相互の直接投資-シンガポール、タイ、マレーシアを中心に-」法政大学 教授 絵所 秀紀、●報告2「日本、マレーシア、中国の産業内貿易に関する実証分析」麗澤大学 国際経済学部 教授 ラウ・シンイー【2010/06/15】

日時:2010年6月15日

テーマ「東アジア経済統合、周辺国の経済深化」

平成22年度 第1回 アジア研究会
報告1「台頭するインドと東南アジアとの相互の直接投資-シンガポール、タイ、マレーシアを中心に-」


法政大学 教授
絵所 秀紀

絵所 秀紀 インドは1991年に経済自由化政策へ転換し、同時にルック・イースト政策を打ち出した。背景には、ソヴィエト社会主義の崩壊、中国の台頭、そして東南アジア各国の高度成長がある。 1980年代までは、インドとASEANの関係は希薄だったが、その後インドは順調にASEANへ擦り寄っていった。1997年にはアジア通貨危機があり、かつインドが98年に核実験を行って相互の不信感が高まったことから、かなり疎遠になった。しかし、米同時多発テロ事件(9.11)でインドはいち早く「テロとの戦い」という立場を鮮明にし、アメリカとの距離が近づいた。そして、これを契機にASEAN・インドの関係も再び緊密になった。
 最近、発展途上国の多国籍化が大きなテーマになっている。特に国連貿易開発会議(UNCTAD)の2006年のワールド・インベストメント・レポートが、途上国や移行経済国の企業の多国籍化をテーマに据えたこともあり、学問上の大きなテーマとなった。このレポートで東南アジア諸国を見ると、対外直接投資の量はシンガポールが群を抜いて大きい。またインドのOFDIは、特に2006年以降、急激に伸びている。またインド側で唯一とれるIFDIに関する統計を見ると、やはり非常に増えていることがわかる。
 インドと東南アジア3カ国の相互のFDIでは、インドとシンガポールの関係が圧倒的だ。1995年の包括経済協力協定(CECA)が、明らかに両国のFDIを飛躍的に高め、ウィンウィン・ゲームになった。対照的にインドとタイ、マレーシアの相互のFDI関係は相対的に比重が低下している。1つの可能性として、それぞれの国におけるインド人ディアスポラの社会的地位が影響を与えているのではないかと考えている。
 インド政府は2004年以降、インド人ディアスポラ政策を積極的に展開しており、新しく海外インド人担当省(Ministry of Overseas Indians’ Affairs)を新設した。インド人ディアスポラには、NRIs(Non-Resident Indians)とPOI (Person of Indian Origin)の2つがある。NRIsはインドのパスポートを持っているが長く海外に住んでいる人たちで、POIはインドのパスポートを持っていないが、祖先がインド人と認められる人たちだ。インド人ディアスポラはマレーシアで非常に多く、170万ぐらいいて、人口に対する比率も大きい。一番数が多いのはミャンマーで、次がマレーシアだ。シンガポール数は少ないが、人口比で見るとかなり多い。それに比べるとタイには7万か8万ぐらいしかおらず、少ない。マレーシアでは元々プランテーション労働者だったので、職業構成を見ると、あまり良い職種に就いておらず、少し下に見られている感じだ。結局、社会的なポジショニングの違いがあり、シンガポールは英語社会なので、インド人にとってインドより良いのではないか。一方、タイに移住したインド人は大半が商人であり、あちこちから来ている。タイのインド人ネットワークにはすごいところがある。ファミリー・ビジネスだが非常に大きく、タイをうまく輸出拠点として使おうとしている。目立たないインド人といわれるが、最近はこのように少し目立ってきた。インド大使館も派手に宣伝するようになり、今後伸びていくと予想している。

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報告2「日本、マレーシア、中国の産業内貿易に関する実証分析」


麗澤大学 国際経済学部 教授
ラウ・シンイー

ラウ・シンイー この20年間の日本、マレーシア、中国の輸出入を見ると、中国の輸出量と輸入量は3倍に増加している。また日本とマレーシアの貿易は、日本と中国の間ほど多くはないが、日本がマレーシアにとって重要な貿易相手国であることは明らかだ。さらに中国とマレーシアの貿易量が増大した背景には、日本企業による投資、分業体制がある。
 中国、マレーシア、シンガポール、日本における貿易の変化を見てみると、雁行形態論が確認できる。日本の企業がまずシンガポールへ行き、シンガポールで何年かやるとマレーシアへ移っていくというパターンが生じている。また日本とマレーシア、日本と中国もそうだが、産業内貿易の指数が時間と共に高くなってきている。そして産業内貿易の関係では、分業体制が非常に進んでいる。
 ヨーロッパ域内では産業内貿易が非常に密接で、経済統合が進んでいるとよく言われている。一方、東アジアの場合、どちらかというと域外の貿易が発達しているが故に、域内において産業内貿易は大した進んでいないと思われている。したがって当地域では統合がうまくいかないと学会や学術研究で指摘されている。しかし、当研究のIIT指数を見ると、必ずしもそうではなく、当地域は実に産業内貿易は進んでいることが確認できる。
 食料品に関しては、日本と中国は地理的に距離が近く、食文化も近い。このような非経済的要因によって、日本企業が中国に投資するときには力を入れている。一方、電気・電子産業を見ると、水平分業体制から垂直分業体制に転換してきていることがわかる。本来ならば、垂直分業体制から水平分業体制へと進むはずなのだが、日本と中国、マレーシアの3ヵ国間では、これらの品目については逆に進んでいる。おそらく中国では、マレーシアよりも技術力が付いてきており、マレーシアでは同じ製品に関して差別化する技術能力が、中国よりも低い。
 経済統合の貿易関係では、競合関係が発生するのではないかとよくいわれるが、分析によると、必ずしもそうではない。中国と日本の分業体制は、かなり地理的な要素と非経済的な要素に影響を受けているのではないか、そしてそのように投資家が行動しているように思う。これからマレーシアの製品が日本向けの輸出で、どのように中国と競争するかに関しては、マレーシアと中国の製品はそれぞれ異なった市場セグメントを目指しているといえる。これは日本とマレーシアの間のより高い垂直分業体制、産業内分業体制の度合いによって証明されている。したがって中国に投資をすると、マレーシアの投資が減るのではなく、マレーシアはマレーシアで、日本企業にとっての優位性を持ち、分業体制が成り立っているということだ。
 分析を通じ、東アジアの経済統合に向けては、互いに競争するのではなく、むしろ産業内貿易の頻度が高まり、従来の先進国同士の経済統合のような傾向になってきているということが確認できたと思う。

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(敬称略 / 講師肩書は講演当時 / 文責:貿易研修センター)

Keirinこの事業は、競輪の補助金を受けて実施したものです。



担当:総務・企画調査広報部