平成22年度 第3回 アジア研究会 ●報告1「インドネシアの経済発展と市場・投資対象としての重要度の増大-韓中等との関係を含めて」(株)ニッセイ基礎研究所 上席主任研究員 平賀 富一、●報告2「アセアン、中国、インドに対するこれまでの円借款援助と今後の新展開」政策研究大学院大学 特任教授 古賀 隆太郎【2010/09/30】

日時:2010年9月30日

テーマ「東アジア経済統合、周辺国の経済深化」

平成22年度 第3回 アジア研究会
報告1「インドネシアの経済発展と市場・投資対象としての重要度の増大-韓中等との関係を含めて」


(株)ニッセイ基礎研究所 上席主任研究員
平賀 富一

平賀 富一 インドネシアでは、政治体制の安定度が増し、経済動向は堅調で、投資も増え、アジア通貨危機当時とは大きく異なる状況となっている。国内総生産(GDP)成長率(実質)は、アジア通貨危機直後にはマイナス13.1%まで落ち込んだが、その後の諸改革を経て回復してきた。主要国際機関による直近の同予測値も、世銀の2010年5.9%、11年6.3%と高めとなっている。
 日本は依然インドネシアの重要な貿易相手だが、その一方で、中国との貿易や東南アジア諸国連合(ASEAN)域内での貿易が増加している。同国への外国直接投資の経年変化を見ても、日本の地位はそれほど高いものではなくなり、韓国が拮抗するようになっている。また中国の投資は現状、規模はそれほど大きくはないが増加傾向にある。
 インドネシアは、アジア通貨危機後に金融や企業の改革に取り組み、銀行もかなり整理・淘汰された。近年では銀行セクターの不良債権比率がグロスベースでも3.94%というように相当低下しており、自己資本比率も比較的高水準になっている。また特徴点として、イスラム金融の急速な伸びがある。企業セクターでは改革を通じて力をつけた有力グループが大きな存在になっている。
 インドネシアには日系企業が約1000社進出しており、現地で32万人を雇用している由である。これら進出企業の75%は、2000年以前に既に進出していた。わが国は、インドネシアへの政府開発援助(ODA)で第1位のドナー国としての実績もあり、インドネシアは企業進出も含め相当深い関係がある国だ。各種報道を見ていると、日本企業の多くが、市場としてのインドネシアに注目し投資を拡大・実施する方針のようだ。
 しかし、インドネシアで熱心に活動している日本企業だけではないではないことにも留意が必要である。同国への投資で日本企業と競っているのが韓国企業で、現在2500社が進出している。韓国企業の進出はインフラ、エネルギー、資源分野も多いが、家電ではLG、三星(サムスン)の2社がマーケット・シェアで35%の水準を占めており、これら企業は現地ニーズに合ったデザイン、機能、価格の製品の提供やアフター・ケアの良さで人気がある。
 一方、中国は、1990年にインドネシアと国交を回復し、投資を再開したのは1992年なので投資規模は現状それほど大きなものとはなっていないが増加傾向にある。中国の投資では資源・エネルギー確保を目的としたものが多く、さらに家電の美的、テレビの長虹、自動車、通信企業なども出ている。韓国と比べれば規模は小さいが、国家戦略に基づいて取り組んでおり、今後益々企業の進出が増加するだろう。
 日本企業がASEAN、インドネシアに出ていく場合には、これまでの長い関係による日本企業、日本の製品、日本人への信頼という貴重な財産を大切にした上で、韓国企業に見られるようなトータルな市場攻略を行う必要があると思う。またサービス業、中小企業の進出なども含め官民トータルでの取組みや支援も重要になると思う。

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報告2「アセアン、中国、インドに対するこれまでの円借款援助と今後の新展開」


政策研究大学院大学 特任教授
古賀 隆太郎

古賀 隆太郎 円借款による支援は、戦後日本の社会資本形成とよく似た構成を持っている。円借款は戦後の社会資本形成とほぼ同時期に始まり、冷戦時の共産主義によるドミノ化を防ぐための支援といった性格のものではなかった。東南アジア諸国連合(ASEAN)、インド、中国の発展途上国の基幹インフラ整備は、日本の高度成長時代で言えば、入り口から中間レベル程度にあると思う。そうすると引き続き、日本がかつて社会資本整備をしてきた際と同様のニーズが膨大にあると考えられる。また現在の新しい展開として、PPP(public private partnership)、BOP(bottom of the pyramid)というものがある。
 円借款の実績(JICAのホームページ上のデータで円借款契約承諾額ベースのもの)を見ると、2009年度までの承諾額は26.4兆円で、3004件ある。全体の構成は運輸が29.4%、電力・ガスが22%、社会的サービスが15.3%で、この3分野の比率が非常に大きい。セクター別の承諾額の比率を見ると、商品借款等は、数は少ないが承諾額は大きい。逆に社会的サービスや農林水・灌漑等では、規模の小さいものが比較的多い。ASEAN、中国、インドの承諾額と案件数を国別に見ると、一番大きいのはインドネシアで相当な金額になっており、件数も600件を超える。2番目は中国、3番目はインドだが、中国については2007年で新規の借款供与をやめている。またインドは非常に増えており、累計額でも、早晩、インドネシアを抜いてトップになるのはほぼ間違いないと思われる。
 日本の高度成長期とASEAN各国の一人当たりの国内総生産(GDP)、同電力消費量を比較し、各国が日本の高度成長期のどの時期に当たるのかを見てみると、ベトナム、インドは、日本の1955年ごろという感じで、GDPだけを見ればそれより低い。一方、フィリピン、インドネシアは既に55年を超えている。中国は少し変わっており、一人当たり電力消費量が一人当たりGDPの数値より比較的先行していて、非常に戦略的に社会資本への投資を行っている可能性がある。タイも同じような意味で、道路と電力に相当投資している。マレーシアはエネルギー資源が豊富ということもありやはり電力インフラの整備が比較的高く、1970年、73年など、既に日本の高度成長の終わりごろに達していると思われる。シンガポールは、既に日本より高いレベルだ。
 今後のODAの活用についてはPPPを促進していくほか、これまでは所得レベルが低すぎて顧客にならなかった層の人たちを広く対象にするBOPビジネスを進めるための支援を行う方法もある。さらに経済連携に向けたさらなる活用、新ニーズの掘り起こしも必要だ。アジアの国々は今後10年、20年は高度成長の時代だ。したがって20年後、15年後にアジアで生じるニーズについて、現在の高度成長を通り過ぎた段階の日本のニーズに重なる部分が多いと思われ、それに応える形で支援していくことが必要だ。
 さらに今後は地球温暖化絡みで、河川氾濫など防災関連の案件が相当出てくる可能性がある。このほか次第に老朽化する社会資本のストックを長く持たせなければいけないという発想に立ち、少子高齢化を踏まえた社会資本更新対応支援を前広にアセアン諸国に取り込んでいくことも必要だろう。

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(敬称略 / 講師肩書は講演当時 / 文責:貿易研修センター)

Keirinこの事業は、競輪の補助金を受けて実施したものです。



担当:総務・企画調査広報部