第101回-2 中央ユーラシア調査会 「中央アジアの韓国企業ヒアリング調査報告」日本貿易振興機構(ジェトロ) 海外調査部ロシアNIS課 課長 下社 学【2010/02/17】

日時:2010年2月17日

第101回-2 中央ユーラシア調査会
「中央アジアの韓国企業ヒアリング調査報告」


日本貿易振興機構(ジェトロ)
海外調査部ロシアNIS課 課長
下社 学

1. ウズベキスタン、カザフスタンにおける調査の概要
下社 学     ウズベキスタン、カザフスタンなど中央アジアには、中国のほか、韓国からの企業が多く進出している。業種で言えば、車、銀行、流通部門、建設などがあり、もっと卑近なところでは韓国料理店、韓国カラオケもある。中央アジアへ行くときも、ソウル経由のアシアナ航空や大韓航空を利用することが多いと思う。そこで、韓国企業、そして韓国がどのような動きをしているのか、また何が今の韓国の強みなのか、さらに中央アジアや旧ソ連圏において日本と韓国の企業が連携し、共同で市場を攻略するためのヒントやチャンスはあるか、という点を調査する目的で現地へ行った。
 調査は昨年12月に行い、アルマトイ、アスタナ、タシュケントの3都市を訪れた。日本貿易振興機構(JETRO)のソウル・センターにいる韓国人スタッフにも同行してもらった。主な訪問先だが、デベロッパーはカザフスタンで2社ほど訪れた。また韓国におけるJETROのような貿易と投資を促進する機関、KOTRAでも話を聞いた。さらに韓国のナショナル・オイル・カンパニー、KNOCや、銀行、証券、電子・電気、商社、ロジスティックス関係、自動車のディーラーなどを訪問した。ほとんどの会社で、韓国から派遣されている韓国人マネージャーに会うことができた。全部で25~26社を、5日間で回った。
 これらの地域では、一般的なビジネス環境についてはまだ問題が多く、劣悪というほどかもしれないが、今回の調査では、なぜここまで果敢に韓国企業が出ているのか、どうやって成功しているのかという点が浮かび上がってきた。現地でのヒアリング結果によれば、カザフスタンに進出している韓国企業は30~50社で、ウズベキスタンでは30社前後のようだ。ウズベキスタンでは必ずしも経営の実態を伴わない会社も含めると、200ほどになるという話もあった。大手の進出企業は大宇、サムスンなどがあり、中小では社長が1人でやっているような零細企業もある。ちなみに日系企業の数は、カザフスタンでは14~15社、ウズベキスタンではやや少なく10社強だと思う。
 韓国の人口は、せいぜい5000万人ぐらいで、市場は既に飽和状況になっている。したがって「持続的な企業の発展を目指すには、外へ出ざるを得ない」と言っているところもあった。新規市場といっても世界にはいろいろな市場があるが、やはり家電、自動車分野で世界的に見ると後発の、日系企業があまり進出していない地域に韓国企業が出ていったのだと思う。その一方で、首都アスタナで高級コンドミニアムを展開している会社に聞いた話によれば、現地では「億ション」といえるような物件が、非常に良い勢いで売れているということだ。

2. 韓国企業進出の背景と戦略
 これだけの企業が進出している背景には、当然資源関係もある。カザフスタンの石油公社から伺った話が主だが、中東からの輸入に大きく依存する中で、韓国はいち早く、中央アジアを新たな調達先として位置付け、アプローチをかけてきたということだ。またKNOCの方によれば、21世紀に入り、韓国のエネルギー戦略は資源の購入から権益の確保へと大きく転換したという。このほか韓国勢は中国勢とは異なり、地元のコミュニティーにも利益を落とすような形で病院や通信関係、道路のインフラ整備などもやっており、「先方政府との間で非常に良好な関係を築いている」ということだった。
 進出の背景には、いわゆる朝鮮系住民、カレイスキーの存在もあるのかもしれないが、これについては評価が分かれる。これらの人たちは言語、行動様式、考え方、教育などで韓国人とは異なり、韓国人側もそういう意識で接している。したがって、「最初の時点では役割が大きいが、それ以上の役割はあまりないのではないか」と言う企業の方もいた。
 次に、彼らの戦略は何なのかだが、まず大胆な価格戦略がある。これについては先ほどのコンドミニアム、高級マンションの話しからだが、あえて高所得者層を狙った戦略が、ある程度、各社に共通しているようだ。もちろん電気製品、自動車などでは日本製品の評判が一番良く、それには少し手が届かないのだが、いわゆるボリューム・ゾーンというか、中間所得者層の間では韓国製品に根強い人気がある。さらに、ニッチな需要にビジネス・チャンスを見出す企業もある。これについては今回、物流関係のいわゆるB to Bビジネス、ビジネスをサポートするビジネスに、そのようなチャンスを見出している方が多いという印象を受けた。例えば、エコビスロジスティックスという会社は、いわゆる3PL(サード・パーティー・ロジスティックス)、ある企業の物流だけを請け負って展開する業務を行っている。これらの国では物流に関する問題が少なくないため、進出企業としては、そこをしっかり請け負ってくれるパートナーがいるのは心強いだろう。さらに韓国では、大統領などによるトップ外交も企業の進出をサポートしている。

3. 日系企業との連携の可能性
 最後に日系企業との連携の可能性だが、例えば韓国の高級セダンのディーラーなどは、「マニア受けする車種、ブランドの正規のディーラー権を取得したい」とのことだった。また先ほどのロジスティックスの会社などは、「通関のブローカーのライセンスを持っているので日系企業の通関代行やサード・パーティー・ロジスティックスもできる」と言っており、これは非常に現実的な話だろう。さらにデベロッパーは、「自分たちが既に取得したインフラや許認可を利用すれば、参入の障壁が低くなるのではないか」、「日系企業には、プロジェクト・ファイナンスでぜひ協力をしてほしい」などと言っていた。裏返して言うと、資金繰りにはやはり苦労しているということだ。他には「日本勢と韓国勢が共同で、現地政府に対するロビー活動を行うことが、最初のきっかけになるのではないか」と言う人もいた。そういったソフト、あるいはハード面でのインフラは、貴重な突破口になる可能性がある。

(敬称略 / 講師肩書は講演当時 / 文責:貿易研修センター)

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担当:総務・企画調査広報部