第102回-2 中央ユーラシア調査会 「中央アジアの経済特区の現状と課題」日本貿易振興機構(ジェトロ)海外調査部主幹 (ロシアCIS担当) 下社 学【2010/05/21】

日時:2010年5月21日

第102回-2 中央ユーラシア調査会
「中央アジアの経済特区の現状と課題」


日本貿易振興機構(ジェトロ)海外調査部主幹
(ロシアCIS担当)
下社 学

1. 中央アジア5ヵ国の経済特区とその状況
下社 学     中央アジア5ヵ国では、各国に経済特区がある。国によって若干、呼び方の差はあるが、経済特区、自由貿易区、自由経済区の定義を、外資投資を促進するための各種優遇措置を取り揃えた一定の区画とすれば、おおよそ各国とも同様のスキーム、ツールを持っている。唯一、トルクメニスタンだけは自由経済区という言い方はしていない。これらは2000年ごろから、各国で設置されるようになった。 その理由としては、1つは国によって差はあるものの、経済状況の改善が挙げられる。そして経済区をつくり、曲がりなりにも何とか外資を呼べるような状況になってきたのではないか。またロシアが経済特区をいくつか設置しているのを、横目で見ながら設置しているのではないかと思う。
 5ヵ国を国ごとに見ていきたい。まずウズベキスタンには、ナボイ自由工業経済区(FIEZ)がある。これは2008年12月8日付の大統領令に基づいて設置され、かなり後発だ。ウズベキスタンで初の試みとなる本格的な経済特区構想で、活動期間、設置期間は30年と規定されているようだ。ただし、「必要に応じて延長も検討する」という文言が付いている。面積は564ヘクタールで、東京ドームに換算すると120個分とかなり広い。ナボイの人口は、州全体でも41万人程度だ。資源はウズベキスタンの中でも多く産出されている。金、ウランなどの地下資源が豊富で、ナボイ・コンビナート(NGMK)、ナボイアゾトの化学肥料工場、セメント工場などがある。全国の鉱工業生産高の15%程度を占め、工業地域になっている。コンセプトは工業、ロジスティクス、イノベーション、観光・文化・レクリエーションのそれぞれの分野で、中央アジアにおけるハブを目指すということだ。
 主な優遇措置だが、各種の税や基金の支払免除がある。しかし、これらの優遇措置を享受するための最低投資額が非常に高く、300万ユーロ(約3億円)規模の投資をしなければいけない。日系企業ではまだ、ナボイに具体的なコミットメントしているところはないと承知している。一方、2009年にウズベキスタンの大韓貿易投資振興公社(KOTRA)事務所にお邪魔した際、150社規模の韓国の中小企業ミッションがウズベキスタンに来て、ナボイも視察したと聞いた。しかし、最低投資額が非常に高く、やはり中小企業がすぐに投資するような額ではないという反応だったようだ。
 優遇措置の規模や期間は、投資額に準じて強化される。また、そこで生産した製品を輸出する企業はさらに優遇される。国内市場型の企業であっても、それなりの輸入関税の減免等が得られる。そして外貨建て決済や、ウズベク企業による商品、労働、サービス提供へのハードカレンシー建て決済、さらには輸出入決済に当たり、自由な支払い形態と期間の設定が可能となっている。またナボイは、国際物流拠点としての活用法があり、ウズベキスタンはナボイ国際空港を中央アジアの物流のハブ空港にしたいとしている。これについては大韓航空がいち早く手を挙げ、現在、大韓航空の方が空港長として出向、貨物便も就航している。
 次にカザフスタンだが、一応6ヵ所あり、首都アスタナでは特別経済区(SEZ)、アスタナ新都市の中に、さらにインダストリアル・ゾーンをつくる構想もある。ブラバイというSEZがあり、ここは観光特区のようだ。そしてITパークというSEZもあり、旧首都のアルマトイに情報通信のセンターを設けるという。そしてオンティスティックという、東西南北の南という意味のSEZは繊維、あるいはテキスタイル産業の経済区にするという。アクタウのSEZは、マリンポート・アクタウという名前になっている。アクタウ港湾特区ともいえるが、いわゆる工業特区でものづくりがメインだそうだ。最後にアティラウは、まさに石油化学に特化した工業区だ。以上、6つが既存の工業特区で、新規の計画も議論されているようだ。
 キルギスについては4ヵ所あるようで、1996年から97年ごろに法律をつくったという。ビシケクのFEZのほか、カラコル、マイマク、そして観光と鉱業に関するナルィンというのがある。ビシケクのFEZは1995年ごろに設立され、25ヵ国の企業、64工場が操業、3500人を雇用しているという。今まで説明した中で実は、一番パフォーマンスが良いような感じもする。タジキスタンでは、パンジ自由経済区が南部に、スグト自由経済区は北部のホジャントにあるそうだ。いずれも2005年にできたが、実際に何かを生産している段階ではないようだ。トルクメニスタンだが、今までご紹介したような何かをつくる経済特区とは異なり、観光に関するものだ。観光関係のビジネスで何かをやろうしてここへ行くと、ビザ発給の要件が緩和され、関連の優遇措置が受けられるという。

2. 今後の課題と問題点
 ウズベキスタンのナボイ自由工業経済区では、300万ユーロという初期投資費用が高額で、投資意欲を削ぐ要因になるだろう。KOTRAで聞いた話でも、中国と比べて特にメリットは感じられないという。ロシアとベラルーシ、カザフスタンの関税同盟については、共通関税を今年1月1日から導入している。今年7月から、この3カ国では税関がなくなるというタイム・スケジュールでやっているはずだ。インフラ整備状況は、どこの国にも共通する課題だと思うが、ロシアでも同じようだ。ロシアの工業団地、自由経済区というと、敷地だけがあり、電気や水道、通信のインフラは自分でやるという状態だ。そして、各国のビジネスのインセンティブは、自由経済区だから何かが激変してよくなるという訳では決してない。何をつくってどこへ持っていき、誰に売るのかというマーケットは、自由経済区をつくったからといって全部セットになって出てくる訳ではない。
 ロシアの場合、工業生産型特区や研究型特区、観光レクリエーション、港湾特区を導入し、着々と実績を上げている。やはりロシアの消費が盛り上がって車が売れるようになり、今まで輸出していたけれども販売、消費の場と近いところで生産しようという自然な流れがある。しかし、中央アジアの場合は、必ずしもまだそういう状況ではない。

(敬称略 / 講師肩書は講演当時 / 文責:貿易研修センター)

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担当:総務・企画調査広報部