第104回-1 中央ユーラシア調査会 「東アジア共同体と日中和解・日米同盟―拡大EUからの教訓」青山学院大学 国際政治経済学部教授 羽場 久美子【2010/07/26】

日時:2010年7月26日

第104回-1 中央ユーラシア調査会
「東アジア共同体と日中和解・日米同盟―拡大EUからの教訓」


青山学院大学 国際政治経済学部教授
羽場 久美子

羽場 久美子     拡大EUの8つの教訓から、東アジア共同体を考察したい。1番目は、既に東アジア共同体(East Asian communities:EAc)、は小文字複数形の形で存在しているという事実である。コアとなるのは、ASEAN、+3、+6であり、米露が入った枠組みASEAN+8、その外側にはASEAN+10がある。ARFはAPECを凌ぐ大きな安全保障の枠組みであり、異体制間対話の枠組みである六者協議、さらにSCOとSAARCという大きな地域統合体もある。ヨーロッパとアジアの話合いの枠組みASEMも進み始め、東アジアには10以上の重層的、多元的な地域統合の枠組みが既にある。2番目の教訓は、得意な分野から始めることである。制度や法制化はヨーロッパの得意分野であり、アジアはアジアの得意分野である経済により、発展と繁栄を目ざす。経済の振興を基盤とする共同体の発展がなにより重要である。3番目は、日本の成長戦略としての地域統合である。EUは統合によってアメリカを凌ぐ経済圏になった。地域統合の波に乗らなければ、アジアの急成長に日本は乗り遅れるのではないか。4番目として日米同盟が挙げられるが、私は日米同盟と東アジア共同体は並存しうる、と認識している。EC/EUは、戦後、対社会主義圏という新たな敵に対する統合として米国と結んでヨーロッパを統合し、冷戦終焉後は東ヨーロッパを取り込み、EUとロシアを共存させた。躍進するアジア経済をアメリカにとっても利益となるような形にし、全てを一つの機構にせず、安全保障において敵対する構造を作らなければアメリカも認めざるを得ないのではないか。教訓の5番目は、歴史問題は乗り越えられる、ということである。日中和解がアジア共同体の鍵であり、統合アジアこそが、繁栄を生み出す。和解の目的は、安定と発展、共同の成長のためであり、欧州共同体は、敵対した独仏の和解から始められた。6番目の教訓は、地域統合、金融統合のみが、今後の金融・情報化時代を生き残れることである。EUは、ギリシャの経済危機を統合による相互扶助で乗り越えた。地域統合を持たない日本のほうが危ない、アジアで孤立するのではないかと言われ始めている。7番目は、エネルギー、環境の共同体である。拡大EUは石炭鉄鋼共同体、原子力共同体として、エネルギー共同体から始まった。似たような形で、エネルギー関係や環境問題での共同を促進し、枠組みの議論が開始されるのではないか。8番目として、制度化の始まりはゆっくりとパスファインダー(全てを共同でやらなくても良いというアプローチ)でよい。拡大EUにもオプトアウト制度があり、2速2元のヨーロッパとも言われている。機能別の重層的な制度化が既に着手され始めていると思う。最後に、現在既にある東アジア共同体を戦略政策として推進し、(1)均衡ある成長、(2)包括的成長、(3)持続可能な成長、(4)革新的成長、(5)安心安全の成長(APECの成長戦略)、という可能なところからの共同、自国に利益が戻る経済的・発展的共同から始め、政治や歴史がマイナスにならない形で、できるだけ緩やかなアジアの統合を、現状を基礎としながら進めていけばよいのではないか、というのが私の報告である。

(敬称略 / 講師肩書は講演当時 / 文責:貿易研修センター)

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担当:総務・企画調査広報部