第104回-2 中央ユーラシア調査会 「リーマンショック後の中国経済と東アジア共同体構想」拓殖大学 学長 渡辺 利夫【2010/07/26】

日時:2010年7月26日

第104回-2 中央ユーラシア調査会
「リーマンショック後の中国経済と東アジア共同体構想」


拓殖大学 学長
渡辺 利夫

渡辺 利夫    東アジア共同体構想:日本の近現代史をみると、アジア主義と親・欧米主義が繰り返されてきたことがわかる。現在の東アジア共同体構想はそのサイクルの一部である。条件を整えずに東アジア共同体を実現すれば、アジアは悲劇に陥る可能性がある。一つには、アジア各国には大きな格差がある。中国という大国がある一方、一人当たりの所得水準が300ドル前後の弱小国もある。EUのように、要素移動の自由化を認めた場合、予測できない混乱が発生するだろう。二つは、理念である。EUでは共通の価値が想定されているが、アジアでは価値を共有する国はほとんどない。価値を反映したものが政治体制であると考えれば、アジアの政治体制はばらばらである。三つに、安保体制問題がある。外交安保が異なる共同体がありうるか。4つは、和解に関係する。日中、日韓は、簡単には和解できまい。またアメリカも東アジア共同体には警戒的である。なぜFTAやEPAではだめなのか。それを越えるコミュニティはリスクが多すぎる。東アジアには物や投資資金の域内循環メカニズムが生まれており、FTAやEPAを重層的、多元的に展開していけばよい。これを30年、40年続けた結果、新しい条件ができたときに、東アジア共同体の議論がでるのであれば、それはそれで面白かろう。

リーマンショック後の中国経済:中国はリーマンショックの影響を受け、2009年第一四半期の経済成長率は6.2%、改革開放期の中国ではまれに見る低成長であった。しかし、2010年第二四半期は10.5%となり1年間でV字回復した。回復の理由は、一言で言えば官製である。「積極的財政政策・適度緩和金融政策」を打ち出した。財政、金融2つの同時発動・緩和は中国では初めてのことである。日本円に換算して56兆円の緊急刺激策が発表され、これに応じて地方政府の予算外支出が大きく誘発された。このお金は、一つはインフラに、二つは130~160社くらいの党有企業「史企」に向かった。国有企業ではなく党有企業と呼ぶのは、幹部がすべて党幹部の子弟だからである。四大家族官僚資本の再来であり、党有企業に湯水のごとくお金を流している。余剰なお金が株式と不動産に回りバブル化し、今そのバブルがはじけようとしている。ソフトランディングをさせるのが党の最大の課題である。本来ならば中国は内需主導型のゆったりした先進国型の経済に戻りたいのだが、そんな余裕はない。中国経済を特徴付けるキーワードは、輸出投資主導型で家計消費低迷型である。所得水準が上がっても家計消費は低迷し、絶対量では増えているが比率は上がらない。是正しなければまともな内需主導型の、他国とのバランスのとれた中国経済にはなりにくい。今回の人民元弾力化は、人民元相場を弾力的に運用しなければバブル崩壊もありえるという危機感が背後要因にある。

(敬称略 / 講師肩書は講演当時 / 文責:貿易研修センター)

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担当:総務・企画調査広報部