第108回-1 中央ユーラシア調査会 「上海万博を振り返って-中国が国際社会と協調していく契機となったか?-」財団法人貿易研修センター 理事長 日欧産業協力センター 事務局長 塚本 弘【2010/12/20】

日時:2010年12月20日

第108回-1 中央ユーラシア調査会
「上海万博を振り返って-中国が国際社会と協調していく契機となったか?-」


財団法人貿易研修センター 理事長
日欧産業協力センター 事務局長
塚本 弘

塚本 弘     上海万博は、2010年5月1日から10月31日まで184日間行われ、名実ともに史上最大の万博となった。参加国の数も史上最多で、190カ国、56の国際機関が参加した。会場の面積(展示エリア)も愛知万博の倍で、開催期間中には大阪万博を超える7千万人が訪れた。世界経済危機の余波の中でも世界経済の牽引役としていち早く回復成長基調に戻った中国が、国の威信をかけて開催し、成功裏に閉幕した。
 万博の全体のテーマは、「より良い都市、より良い生活(Better City, Better Life)」である。日本館のテーマは、「こころの和、技の和」で、(1)日中の交流(遣唐使、朱鷺(トキ)の交流)、(2)ハイテク(ロボット、環境技術)、(3)美しい日本(季節感のある暮らし、伝統美術)を展示のポイントとした。ハイテクを楽しくわかりやすく展示し、特にバイオリンを弾くロボットは、その最たるものであった。日本館は人気館の一つで、平均入館待ち時間は3時間45分、来館者総数約542万人となった。日本館はタイプA(4,000平米以上の敷地面積をもつ独自パビリオン)展示部門で「様々な技術がコンビネーションよく展示されている」と評価され銀賞を受賞した。
 私は万博の運営委員会の議長を務めた。運営委員会とは、参加国と主催国間のコミュニケーションをスムーズにするのがその役割である。公用語は、英語とフランス語と主催国の言葉である中国語で、議長はそれまでヨーロッパの人が務めるのが通例であった。
 初めの1,2ヶ月は苦難の日々であった。(1)セキュリティ優先問題(入館パスの制限、ゲートでのチェックなど)、(2)車両の乗り入れ規制、(3)行列問題など多くの問題が生じたが、誠心誠意、率直に議論することにより、最終的には成功をおさめることができた。この成功の要因としては、次の4つが考えられる。第1は、リーダーシップである。上海市の最高責任者である兪正声上海市共産党書記が「オリンピックと万博は違う」と、強力なリーダーシップで、トップダウンで決定事項を実行していった。第2は、「日々改善」の精神である。愛知万博のノウハウを継承しながら、色々な取り組みが行われた。第3は、新聞の役割で、特に中国語の万博専門誌「毎日快報」を通し、ダフ屋の問題や行列の混乱といったネガティブな情報も隠さずに公開することで改善が可能になった。第4は、中国代表との信頼関係である。中国の華代表とは、議論を重ねるうちにお互いを理解するようになり、華代表は「兼听即明」(広く意見を聞くと明らかになる)、私は「率直対話」が大事だと話し合い、信頼関係を築くことができた。
 今回の万博の成功は、中国が国際的なイベントを運営していくノウハウを習得した点で、大きな意義があったと思う。今回の成功が一つの自信となり、そのことによって、他人の考えや意見を受け入れる度量の大きさ、広さにつながり、中国が「より国際的な調和を図りつつ発展していくこと」を期待したいと思う。

(敬称略 / 講師肩書は講演当時 / 文責:貿易研修センター)

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担当:総務・企画調査広報部