第108回-2 中央ユーラシア調査会 「中国経済-安定かつ持続的な成長に向けて-」株式会社 野村資本市場研究所 シニアフェロー 関志雄【2010/12/20】

日時:2010年12月20日

第108回-2 中央ユーラシア調査会
「中国経済-安定かつ持続的な成長に向けて-」


株式会社 野村資本市場研究所 シニアフェロー
関志雄

関志雄 2008年9月のリーマンショックを受けて、先進国は深刻な経済危機に陥ったが、中国経済は高成長を続け、世界経済における存在感が高まっている。中国経済が今後どこに向かうのかを考える上で、一番気になるのはインフレ動向である。 現在インフレ率は上がってきているが、中国ではGDPに3四半期おくれてCPIが動くという傾向があり、景気が2010年第1四半期をピークに減速してきており、CPIもそろそろピークアウトするのではないか。また、中国では党大会にあわせて景気が上向くという5年サイクルが見られる。今後2012年の党大会に向けて拡張的な金融政策が採られ、中国経済は本格的に回復に向かうとみている。アメリカでも同じように4年に一度の大統領選挙にあわせて景気が変動する政治的景気循環が見られる。2012年は中国では党大会、アメリカでは大統領選挙の年にあたり、世界第1位のアメリカと第2位の中国が同時に好況を迎えることになる。世界経済を考える上でも、これは朗報だとみている。
 短期見通しを考える上でのリスク要因としては不動産バブルがある。4月以降、中国政府がバブル対策に乗り出し前年比で伸びが鈍化した。確かに調整は避けられないが、中国の成長性、レバレッジの問題も含めて、日本のバブル崩壊後のような極端なケースにはならないのではないか。ただし、地方政府が設立した融資プラットフォームを経由して一部の銀行の資金が不動産市場に流れていると言われており、この融資問題のリスクが一番高い。
 2011年から始まる第12次五カ年計画の骨子において、一番重要とされた課題は、経済発展パターンの転換でこれには3つの側面がある。一つは、需要サイドでは従来のように投資と輸出を伸ばして成長するのではなく、より消費の比重をあげなければならないことである。次に、中国はこれまで世界の工場と呼ばれてGDPの約半分を工業部門が占めていたが、やはり経済が発展すればするほど、工業の割合を下げ、サービス業のウエイトを上げていかなければならない。三つ目としては、従来のように労働力と資本の投入の拡大によって成長するのではなく、より生産性の上昇に頼らなければならない、ということである。さらには、これからの中国の成長性を考える上で、「ルイス転換点」の到来が非常に重要なテーマである。今後10%成長を維持するのはきわめて難しい。少しでも成長を伸ばすには、発展パターンの転換を行い、投入量の拡大ではなく生産性の上昇をもっと加速させていかなければならない。
 以上を踏まえて、日本として、中国の台頭にどう対応すべきか。リーマンショックのあと、世界は軒並みマイナス成長に陥ったが、中国の成長率は9.1%で一人勝ちという様相を呈している。今年に入って主要国も回復してきているが、中国は依然として最も成長率が高いという状況には変わりがない。また10年ほど前から、中国の世界経済成長への寄与度が、アメリカの寄与度を上回っている。日本では、去年戦後初めて対中輸出が対米輸出を上回るようになった。欧米の経済が良くない中で、日本の対中輸出が伸びているのは、中国が世界の工場から世界の市場へ変わろうとしていることの表れでもある。日本の景気が少し良くなった背景には新興国効果が果たす役割が大きいといわれることが多いが、新興国効果の8割くらいは実は中国であると理解すべきではないのか。中国が好きか嫌いかは別にして、日本企業の中国離れという戦略は考えにくい。

(敬称略 / 講師肩書は講演当時 / 文責:貿易研修センター)

詳細PDF


詳細PDFをご覧いただくにはIISTサポーターズ(無料)へ登録後に発行されるユーザ名、パスワードが必要です。またご登録後は講演会・シンポジウム開催のご案内をお送りさせていただきます。
ユーザ名、パスワードを忘れてしまった会員の方はこちらからご請求下さい。

Keirinこの事業は、競輪の補助金を受けて実施したものです。



担当:総務・企画調査広報部