第37回 IISTアジア講演会 「中国 東北・華北地域の経済開発政策と日中経済協力の新たなあり方」福井県立大学 経済学部教授 唱 新(Chang Xin)【2010/04/20】

講演日時:2010年4月20日

第37回 IISTアジア講演会
「中国 東北・華北地域の経済開発政策と日中経済協力の新たなあり方」


福井県立大学 経済学部教授
唱 新(Chang Xin)

Chang-Xinはじめに:中国経済の急成長と国有企業改革
 2000年以降の中国経済は、いろいろな問題を抱えていて危ないといわれながらも、急成長を維持してきた。中国の国内総生産(GDP)は、1999年から2009年の10年間で3.7倍になり、1人当たりGDPは、人民元の切り上げもあって4.1倍に増えた。この急速な成長の背景には、内陸開発、産業構造の転換、国有企業改革による国内企業の再振興という2000年以降の3つの政策転換があった。
 90年代の中国における1人当たりGDPについて地域構造を見ると、成長率が高い上位グループに入るのは、いずれも沿海地域だった。しかし、2000年に入ってからは、吉林省や内モンゴル、陝西省、河南省といった内陸地域が上位グループを占めるようになった。これは2000年以降、中国の経済成長のパワーが沿海地域から内陸部に広がったということだろう。
 次に産業構造の変化だが、2000年から2006年までの年平均成長率を見ると、最も高い産業は非鉄金属精錬で、後は情報通信機器製造、金属精錬、設備、交通輸送機械という順序だった。この交通輸送機械というのは、主に自動車産業のことだ。生産額で最も高いのは情報通信機器製造業で、次が鉄鋼産業などの金属精錬、そして交通輸送機械となっていた。また現在、中国で急成長しているのは鉄鋼産業で、2009年には鉄鋼産業の生産額が、既に情報通信製造業を抜いた。2000年以降、中国は重化学産業を中心とする成長構造に転換してきたと思う。
 中国の国有企業改革による国内企業の急成長について見ると、東北3省には国有企業が非常に多かった。一番厳しい時期は90年代後半で、このとき大手国有企業はいずれも経営難に陥った。例えば、瀋陽機床集団(SMTCL)というのは工作機械メーカーだが、90年代後半には倒産寸前になっていた。しかし、2000年以降の企業改革、そして株式制度の導入によって、郊外に新工場を立ち上げ、急成長した。2007年の売り上げは100億元(約1600億円)になり、今では世界の工作機械メーカーで第9位だ。非常に立派な企業になり、ここでは技術開発も進んでいる。これ以外の旧国有企業では、主に機械を作っている瀋陽北方交通集団という会社があり、ここも急成長している。このように、遼寧省には国有企業改革によって急成長してきた企業が非常に多く、2000年以降の中国経済の成長を支えてきたセクターの1つは国有企業だと思う。
 昨年の世界的金融危機で中国は、経済回復を図るため、1年間で9つの国家地域開発計画を発表した。この9つの開発計画のうち、3つは東北3省にあり、3分の1を占めているということだ。 これらによって、東北3省が今、中国経済全体でどれだけの位置付けになっているかがわかるのではないか。

1. 東北・華北地域の特色とその将来性
 きょうのテーマである華北・東北地域では今、人口が2億3000万人と日本の約2倍、GDPは7兆6000億人民元で、中国全体の約2割を占める。そして、天津と内モンゴルの急成長している新興地域も含まれている。また遼寧省と吉林省には、旧国有企業の改革によって今、成長している地域もあり、さらに東北3省と華北地域には、主に6つの開発計画がある。
 華北地域には、主に天津市、北京市、そして河北省があり、内モンゴルは細長いため、西部が華北地域に、東部は東北3省に入っている。この地域にある6つの開発計画のうち4つは国家レベルで、国家に承認された地域開発計画ということだ。その中で例えば天津濱海新区を見ると、2006年に国務院から第11次5ヵ年計画の重点開発地域に指定され、それから急速に成長してきた。開発計画の概要としては、主に8つの開発区と6大産業の育成に取り組んでいくことになっている。また天津には天津港があり、これは華北地域唯一の港で、地域の窓口になっている。したがって、地理的に非常に重要な地域だ。
 一方、遼寧沿海ベルト地帯の開発計画だが、これは昨年7月、国務院に承認された長期開発計画だ。遼寧省にある遼東半島は渤海と黄海に挟まれており、この渤海沿岸地域と黄海沿岸地域の開発計画が国家開発計画にレベルアップされた。今後は装備製造業、近代サービス業、近代農業の育成に力を入れていく。大連はつい最近立ち上げた開発区で、これら29ヵ所の開発区を中心に、この地域の開発を進める計画である。
開催風景1 次に、今年3月に承認された地域開発計画に、瀋陽国家新型工業化総合試験区がある。この計画の概要は、瀋陽を中心に周辺の8つの都市を高速鉄道で結び、1時間経済圏にしようというものだ。新興産業の育成、既存産業の高度化、低効率・エネルギー消費の高い中小企業の淘汰、低炭素経済・循環経済の発展などを中心に、2020年には中進国の水準に達する北東アジアの経済中心地域にする非常に野心的な開発計画である。
 また吉林省の「長吉図開発開放先導区」開発計画というのがあり、「長」は長春市、「吉」は吉林市、「図」は図們江のことだ。この開発計画の主な内容は2つあり、1つは環日本海ルートを開設し、日本海沿岸地域との交流を拡大していくことだ。もう1つは自動車、鉄道車両を中心とする輸送機械産業や、その部品産業、さらに石油化学産業、農産品を中心とする食品産業、製薬、ハイテク産業を育成していくことだ。
 私が長春に帰った際に聞いた話だが、長春市は今、中国最大の自動車生産地域になっており、中国最大の鉄道車両の生産企業も長春にある。今、中国では新幹線の話が盛り上がっているが、この新幹線の車両も長春で造っている。これはもちろん、日本と共同で生産している。長春は今後、自動車産業の育成に取り組んでいくとともに、近代製造業、光学電子通信産業、新エネルギー産業と素材産業、バイオ製薬など5つの産業に取り組む計画を作成している。
 この華北・東北地域を東南沿海地域と比べると、この地域では産業集積基盤が非常に強い。天津、瀋陽、大連、長春はいずれも20世紀初頭に、鉄鋼、石油化学、造船、機械、電子、自動車など幅広い分野で産業集積が始まったところだ。このため現在は、産業基盤と技術の蓄積が強い地域になっている。また社会主義時代から、有名な大学や科学技術研究所が集まり、教育、科学研究、人材など知的インフラの面でも中国の他地域より優位になっている。さらに、従来の国有企業が集積する地域でもあり、企業改革によって現在では大型有力企業の成長が非常に目立つ。特に、知的インフラを生かした技術指向型企業の成長が目立っている。このほか都市化が非常に進んでおり、「京津塘」、「遼寧中部(瀋陽)」という2大都市圏や多くの大型産業集積都市が分布しているので、市場圏として非常に将来性があるのではないか。
 華北地域、東北地域とも、産業育成の中心は近代製造業、近代サービス業、装備製造業であるが、中国で特に力を入れているのは、装備製造業のいわゆる機械産業の育成であり、交通輸送設備製造業、電気機械製造、電子通信機器製造、精密機械、武器など、主に7つの産業と220の業種を指す。華北地域、東北地域とも、今後の産業育成では装備製造業の振興が中心になると思う。
 今の中国経済はもちろん、いろいろな問題を抱えており、多くの課題と壁がある。しかし、成長の流れは変わっておらず、今後は経済成長に伴い、問題を解決し、ハードルを乗り越えていけるのではないかと思う。
 また、特に今の中国はひとつの転換期を迎えているといえよう。今年の全人代での温家宝首相の政府活動報告では、今後中国はイノベーションを原動力に内生的成長を実現していくという方針を打ち出した。今年は中国の第11次5ヵ年計画の最後の年で、来年からは第12次5ヵ年計画の時期に入る。中国はおそらく今後、経済の量的拡大から質の向上へ方向転換していくのではないか。そのために今、中国が非常に力を入れているのは技術開発、企業の技術力向上、そして企業の効率向上とエネルギー消費の削減だ。 こうした中で、華北地域も東北3省も産業の集積地域なので、今後はおそらく第12次5ヵ年計画と第13次5ヵ年計画の重点開発地域になるのではないかと思う。
 この地域の将来については、2020年にはおそらく京津塘(北京・天津・河北)と遼寧半島という二大都市圏、そして天津濱海新区と瀋陽経済開発区の二大総合経済地域、さらに長吉図開発開放先導区、遼寧沿海ベルト地帯、内モンゴルの成長デルタ地域、黒龍江「哈大斎ベルト工業地帯」など、いくつかの巨大な産業集積地域が形成される。特に注目すべきなのは、京津塘と遼寧半島の都市圏だ。京津塘には北京、天津、河北省が含まれ、ここは非常に日本の関東圏に似ている。関東圏には東京があり、横浜、神奈川県もある。北京はこれから中国の東京となり、天津はおそらく横浜に、また河北省は、神奈川県とよく似ている。したがって、将来この地域は関東圏並みの一大経済圏になると思う。
 また遼寧半島都市圏というのは瀋陽から大連の地域を指すが、ここは関西圏に似ている。例えば瀋陽は大阪、大連は神戸のようになっていくのではないか。そしてその真ん中には、いくつかの産業集積地域もある。したがってこの地域は将来、関西圏並みの大経済圏になるのではないか。さらに長春についてだが、現在の開発計画では2020年に長吉図地域のGDPを2兆元に引き上げようとしている。これは大体、26兆円で、そうなると非常に愛知県に似た産業集積地域になると思う。今後の華北・東北地域では、非常に大きな経済圏が形成され、その中に、日本の愛知県、静岡県、兵庫県のような産業集積地域がいくつか形成されるのではないか。
 将来を予測すると、これは私の試算だが、2009年のこの地域のGDPは7兆6000億人民元で、約1兆ドルだ。2009年の平均成長率は13%で、今後は2020年まで8%の成長率で推移するとすれば、この地域のGDPは2兆3000億ドルになる。この水準になると、フランスを抜くことになり、さらにもしも10%の成長率で推移すれば、2020年には2兆7000億ドルでイギリスを凌駕する巨大な経済地域になると思う。ただし、この地域は現在、いろいろな問題も抱えている。例えば、非効率化の問題や環境問題、農村経済の問題などあるが、今後も経済成長の勢いが衰えることはないだろう。そして成長に伴い、いろいろな問題が解決され、この地域は次第に良くなっていくのではないか。
 現在の中国、特に東北・華北の産業発展では、モジュール型生産(組合せ型)が圧倒的に多い。日本は基本的に部品設計を相互調整することにより製品毎に最適設計して、製品全体の性能を高める方式であるインテグラル型生産(擦り合わせ型)である。一方のモジュール型生産とは部品間のインターフェースを標準化して部品を寄せ集め、多様な製品を作る方式だ。これは1980年代にIBMが開発し、アメリカで広がった。90年代には台湾の電子電気産業がモジュール型生産方式を導入し、その上で、OEM/ODM、EMS、ファンドリー生産など、いろいろなビジネスモデルを開発した。そして2000年以降は、まず中国の電子・電気産業がモジュール型生産方式を導入し、さらに中国でこの生産モデルを自動車、機械、航空機、造船など、すべての組立産業に普及させた。
開催風景2 現在、中国の企業と産業が急成長しているが、技術力がそれほど強くないのになぜ急成長しているのかというと、中国企業が基本的にモジュール型生産方式を採用し、技術や中核部品のほとんどを外部から調達しているためだ。このモジュール型生産方式が良いか悪いかに関しては、賛否両論がある。現在では中国、台湾、そして韓国もモジュール型生産を展開しているが、国の産業の発展から見ると、生産規模拡大に伴って機能が分化され、機能分化の上で水平分業化が進んできたということではないか。いろいろな問題はあるが、新興国の工業化においては非常に大きな役割を果たしていると思う。
 モジュール型生産の発展によって今、国際分業、特に東アジアでの国際分業形態も急速に変わってきた。主に産業の水平分業化が進み、日本では垂直非統合型、垂直分裂型などいろいろな言い方があるが、要するにこの生産方式の成長により、企業の成長戦略が大きく変わった。 「ものづくり」を中核とする能力構築から、「ものづくり+α」となり、自社資源・能力中心の成長戦略(内部化戦略)から、M&Aやアウトソーシングへと展開した。その次は、インテグラル型アーキテクチャからモジュール型アーキテクチャ、さらに段階的な海外展開から同時展開へ、そして製品ライフサイクル型海外生産から生産・販売の世界同時展開へ、本国志向から地域志向、グローバル志向へ、世界中に分散配置された拠点を統合する。このように、いろいろな変化が起きた。これらをまとめると、いわゆるグローバル志向、技術移転、経営連携、生産・販売の世界同時展開などの変化があり、日本企業の成長戦略の転換も1つの課題になっているのではないか。

2. 日本の対中輸出、今後の日中間協力
 次に、東アジア諸国の中国に対する輸出についてみる。輸出額では日本が一番多く、2008年時点では1500億ドルだった。第2位は東南アジア諸国連合(ASEAN)で、韓国、中国台湾がそれに続いている。ただし昨年の対中輸出では、ASEANが急速に伸び、日本にかなり迫っている。対中輸出の成長率を見ると、一番高いのはマレーシアとタイで、ASEAN全体も急速に伸びている。その次は韓国、中国台湾で、日本は伸び率の面では少し遅れている。ASEANの輸出、特にマレーシア、タイの輸出には、現地の日系企業による輸出も多く含まれる。しかし日本の経済力や技術力を考えれば、日本の対中国輸出は2500億ドル程度になってもおかしくないと思う。日本の対中国輸出では、その力が完全に活かされておらず、日本がいろいろな対中ビジネスを通じて中国への輸出をどのように拡大していくかは、重要な課題だろう。 
 今後の中国の経済成長に伴い、どの分野が日本企業に活躍してもらえるかというと、次の5つの分野だと思う。第1に、低炭素経済、低炭素社会の構築に対する協力がある。実は私が今回中国へ帰った際に感じたのは、中国の社会のキーワードが変わったということだ。中国におけるこのようなキーワードは、時代の変化を反映している。例えば80年代のキーワードは「改革開放」で、90年代に入ってからは「グローバル化」へと変わった。そして今は、「低炭素経済、低炭素社会の構築」が社会のキーワードになっている。来年からの第12次5ヵ年計画ではおそらく、このような低炭素経済、低炭素社会、そして循環経済の構築が最大の方針になるのではないか。
 一方、中国は日本に対して強く期待しており、日本企業にとってはビジネス・チャンスが非常に多いと思う。今日の日本経済新聞に、日中韓賢人会議に関する記事が出ていたが、今後の日本、中国、韓国による経済協力で中心になるのは、中国の低炭素経済、低炭素経済構築への協力だという。具体的にはどの分野が可能かというと、まずはグリーン発電だ。中国の現在のエネルギー構造は日本と異なり、石炭が中心だ。そして発電所の二酸化炭素(CO2)排出量は、非常に大きい。したがってCO2排出量が少ない発電所を造ることは、中国にとって最大の課題になっている。そしてこの点では、日本が世界一強い。90年代以降、中国の電力市場は急速に伸びており、1997年からはその電力市場を外国にも開放した。しかし、グリーン発電の分野で強い技術力を持っている日本企業は、この分野で存在感が薄い。
 例えば内モンゴルは、中国最大の石炭の産地だ。そして中国では、石炭の産地付近に発電所を造り、そこで発電した電力を北京、天津、河北省、東北3省に送電している。こういうことを盛んにやっているが、日本の電力会社が将来、この地域に発電所を建設し、東北3省と華北地域へ送電するようになれば、企業としての可能性も非常に高い。また長期的には、中国のエネルギー構造は今後、原発に転換すると思う。中国の計画では、今後200ヵ所の原子力発電所を造ることになっており、これも日本企業にとって最大のビジネス・チャンスだと思う。今から積極的に協力をすれば、将来の原子力発電所建設の交渉で有利になるだろう。
 次に、CO2の排出削減では、やはり日本が非常に強い。この分野での協力は、中国の環境改善や日本から中国への輸出拡大につながるため、両国にとって良いことだと思う。
 また、今の中国では次世代送電網の構築、物のインターネットの構築、新エネルギー自動車の開発などが活発で、世界の変化に敏感に積極的に対応している。日中韓賢人会議では今後、中国、日本、韓国の間で次世代送電網の構築に関して協力するとした。したがって、これらの分野における協力も、非常に潜在力が大きいだろう。中国が例えば、次世代送電網の整備をしようとしても、その要素技術が弱い。またシステム構築面でも弱く、外国企業との連携が必要だ。日本の方がこれを断れば、中国はヨーロッパやアメリカの企業と連携するようになり、これまでこのようなケースが非常に多かった。したがって、日本の方から積極的に対応する必要があるだろう。日本は要素技術の面では非常に強く、次世代送電網でも物のインターネットでもそうだ。 物のインターネットの中核技術は主に、センサーだ。そして新エネルギー自動車の場合、リチウム・イオン電池の要素技術が必要になり、日本はここの面でも非常に強い。これらの分野における協力を通じ、日本からの輸出を拡大できるのではないだろうか。
 そして中間財、資本財産業もある。中国では現在、自動車産業が急速に成長しているが、中国はその部品産業で非常に弱い。したがって、これから部品産業分野の協力を通じ、輸出を拡大していく可能性も十分あると思う。さらに都市開発は、日本ではあまり注目されていないが、日本企業にとって最も大きなビジネス・チャンスではないか。例えば、これから華北地域でも東北3省でも、都市開発が進んでいく。日本は都市開発、特に建設面で非常に優れた技術を持っており、日本の建築材料は大変品質がよい。中国の建物は5、6年経つと古くなってしまい、これはなぜかというと建築材料がだめだからだ。日本の建築材料は良いのだが、中国への輸出は非常に少ない。今、韓国からは多くの建築材料が中国へ輸出されている。今後、日本の建築材料を中国へ大量に輸出しようと思ったら、建設会社は中国へ進出しなければならない。中国ではオフィス・ビルディングや空港、そして病院の建設ブームだ。日本の建設会社が工事を請け負い、日本の建築材料を使って建設した物は、10年や20年経っても全く変わっていない。中国人がそれを見れば、「やはり日本の建築材料は良い」とわかり、中国国内の建設会社も日本から輸入するようになると思う。
 先週金曜日のニュースによれば、瀋陽が1つの近代建築開発区を立ち上げたということだ。その開発区の中心的な担い手は、日本の建設企業ということだったが、これが日本の建設産業による対中進出へのきっかけとなるかもしれない。
 次に流通業だが、流通分野での進出は現在、多少はあるが、やはりいろいろな問題があると思う。実際、中国と日本の間では今、非常におかしな現象が起きている。例えば日本企業が中国で作った製品を日本へ持ち帰って売ると、日本での販売価格は中国国内より安い。そして日本企業は、あまり現地で販売をしない。なぜしないかというと、問題は中国の流通システムにある。中国の流通システムは難しく、いろいろな問題があり、例えば代金の未払いがあるほか、経費も高い。そしてある程度、独占もある。こういう中国の流通システムで販売をすれば、非常に値段が高くなる。
 日本企業が中国で作り、日本では1000円で販売されている製品が、中国では1500円や2000円になる。さらに中国の所得水準の上昇に伴い、日本の高級品、スーツなども中国で売れるようになっているが、値段は大体、日本の倍ぐらいだ。中国では流通システムがスムーズに動いておらず、日本から中国への輸出を妨げていると思う。今後はユニクロのような革新的な流通システムで中国に進出し、現地の日系企業向けに高級な製品を販売すれば、日本からの輸出が拡大するのではないか。将来的にはやはり、スムーズな流通システムを作らなければならないと思う。今後どのように効率的な流通システムを作るかは、日本にとって最大の課題になるのではないか。
 今後の課題だが、従来の中国と日本の関係は「市場と労働の補完関係」だったが、今後は「技術と市場の互恵関係」ということになる。つまり日本の技術的進歩は中国の近代産業の発展につながり、中国の経済発展は日本からの輸入拡大につながる。このような互恵関係を構築しなければならないと思う。必要なのはまず、国家ベースでは政府の協力体制で、これはできつつある。ただし重点地域において、政府がバックアップする対中ビジネス促進体制と、企業同士の協力体制はまだしっかりできていないのではないか。今後いかに民間の協力体制、企業ベースの協力体制を構築するかは、日本企業にとっても中国企業にとっても1つの重要な課題になるだろう。
 もちろんこれからの対中ビジネスには、いろいろなリスクも存在し、リスク管理体制の整備も必要だ。しかし中国と日本は経済相互依存関係が非常に強いので、中国の経済成長に伴い、中国と日本の経済協力関係はさらに推進されていくと思う。

(敬称略 / 講師肩書は講演当時 / 文責:貿易研修センター)

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