平成22年度 第1回-2 国際情勢研究会 報告2「日中経済関係の構造転換-その背景と展望」 専修大学経済学部教授 大橋 英夫【2010/05/31】

日時:2010年5月31日、場所:(財)貿易研修センター

平成22年度 第1回-2 国際情勢研究会
報告2「日中経済関係の構造転換-その背景と展望」


専修大学経済学部教授
大橋 英夫

大橋 英夫 日中間の貿易構造は、垂直貿易から水平貿易へと大きく変化した。そして水平貿易の中身も、繊維から機械に変わってきた。また、機械貿易の中身は最終財から中間財へと変わってきている。なかでも大きな変化は、中国から日本へのモノの動きである。1980年代は長期貿易協定に基づき原油が半分ぐらいを占めていたが、1990年代初め頃には繊維製品が中心となり、現在は機械が約4割という構造となっている。また安全性で話題を呼んだ食料品も日本の対中輸入の5%程度を常に占めており、無視できない品目である。2009年に日本の輸出入に占める中国のシェアは20.5%となり、初めて2割を突破した。日本の輸出に占める中国のシェアも18 .9%となり、アメリカを抜いて最大の輸出相手国となった。
 日中経済関係は、かなり双方向の動きとなってきている。まず、中国の世界貿易機関(WTO)加盟後、サービス貿易の動きが活発化した。また、電子商取引が新たな動きとして始まろうとしている。さらに、海外旅行や仕事で国外に出掛ける中国人が急増している。その数は2000年に1000万人を突破し、2008年には4500万人となり、世界第5位となっている。その増加の背景にはさまざまな要因があるが、所得上昇はもちろんその前提だと思う。
 最近では、中国企業の対日投資やM&Aが目立っている。当面は日本企業の経営方針を踏襲し、リストラをしないなど、友好的な対応に特徴づけられる。今後はどうなるかわからないが、今のところは日本の資産である技術やノウハウを取得するのが大きな狙いであるため、日本企業の転売など、あまり無茶なことはなされないと思う。一方、日本企業も新たな分野、新たな地域へ進出し始めており、内陸市場の開拓にも熱心である。また中国はWTOに加盟して、事実上初めてサービス分野の市場開放を行ったのであり、今後ともサービス分野が投資の中心になるかと思う。
 今後は第三国、あるいは多国間関係における日中経済関係も考えておく必要があるだろう。第1に、第三国・地域での日中両国企業の競合問題がある。もちろん日本製品と中国製品は質的にも価格的にも競合するものではないが、日本企業もボリューム・ゾーンに徐々にターゲットを変えていかざるを得ない時代を迎えている。第2に、資源確保や囲い込みの問題があり、オーストラリアやカナダなどを舞台に日中両国の競争が激しくなっている。第3に、日本でいう政府開発援助(ODA)や経済協力プロジェクトをめぐっても、日本と中国とでは目的や進め方がかなり異なるので、ある種の競争状態のようなものがみられる。
 改革開放後、これまで中国は自らを国際的なレジームに接合させるような行動をとってきた。しかし、ここ数年、この面でも大きな変化がみられる。グローバルな秩序に関して言えば、これまでのG7/G8体制からG20体制に変わりつつあり、中国の役割はさらに大きくなっている。また国際標準・規格に関しても、中国が巨大な国内市場を背景に発言力を高めてきている。その意味で、第三国・多国間関係における日中関係という視点も不可欠であろう。

(敬称略 / 講師肩書は講演当時 / 文責:貿易研修センター)

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