平成22年度 第3回-2 国際情勢研究会 報告2「中国の海洋進出:その目的と現状の考察」 桜美林大学 リベラルアーツ学群教授 佐藤 考一【2010/07/27】

日時:2010年7月27日、場所:(財)貿易研修センター

平成22年度 第3回-2 国際情勢研究会
報告2「中国の海洋進出:その目的と現状の考察」


桜美林大学 リベラルアーツ学群教授
佐藤 考一

佐藤 考一 中国の海洋進出に関しては、「主要敵」や目的となる防御対象が変化し、防衛線が前倒しされていくという問題がある。中国では1947年に人民解放軍総部が設立されだが、それまでの戦略は敵を中国大陸の内陸部へ引き込んで戦うという人民戦争戦略だった。そして1950年には、海軍司令部が創設された。当初は沿岸防御を志向していたが、1960年代以降は戦略潜水艦による第2撃力の確保にも関心を持つようになった。1970年代に入ってからは、近海防御を志向し、1978年末以降の改革開放政策で沿海地区の経済特区を防御する必要が高まった。そして、Green WaterからBlue Waterへ出てくる。さらに1990年代以降は、南シナ海・東シナ海の「海洋国土」防御、エネルギー資源や水産資源の確保、中東等からの石油を運ぶ自国のシーレーンの防御を志向するようになっている。
 2001年にはアメリカの偵察機が南シナ海の公海上で中国軍機と衝突したほか、その後は旅海級ミサイル駆逐艦の深センが欧州を訪問、旅滬級駆逐艦の青島が中国海軍艦艇として初めて世界一周するなど、少しずつ外へ出ていった。また明級の潜水艦が大隅海峡を浮上航行したり、中国民間保釣連合会が魚釣島へ上陸したり、漢級原潜が領海を侵犯したりと好ましくないこともやってきた。
 注目されるのは、2006年10月に東シナ海の公海上で中国海軍の宋級潜水艦が米空母キティ・ホークを追尾したことだ。そして2008年12月には、中国が2015年までに5~6万トンの空母2隻を造るという計画を公表した。同時にソマリア沖のアデン湾へ海賊対策のため海軍艦艇を派遣するとし、硬軟両面でアピールするようになる。また2009年には米海軍の非武装調査船、インペッカブルが中国船舶の妨害を受けた。今年4月には、キロ級潜水艦を含む10隻の中国艦隊が沖ノ鳥島周辺で演習を行っている。
 海へ出ているのは軍だけでなく、海上保安機関もそうだ。1993年には公海上で、日本の船が追尾、威嚇射撃されたケースがあり、日本側はかなり怒った。今年は奄美大島沖で測量船が追尾される事件があったほか、魚釣島の西北西83kmの日本の排他的経済水域に中国海洋大学の海洋調査船、東方紅2号が出てきている。どのような目的で出てくるのかというと、大陸棚の自然延長線の根拠データ収集や、潜水艦の航路調査、資源探査などのためだ。また、日本へ来る中国の要人を牽制することもある。一方、中国の領土・領海に関する主張には、強硬かつ根拠薄弱なところがあり、特異な海洋法理解をしていると感じる。
 日本は基本的に、中国を敵視する必要はないだろう。互いに戦争はできないので、盾を片手に握手すべきだ。信頼醸成を進め、チキン・ゲームをさせないことが重要だ。海上保安庁には、複数ある海上保安機関との交流を進めてもらいたいし、自衛隊は人民解放軍の上層部とだけでなく地方部隊同士の交流なども進めてほしい。尖閣列島に関しては、島へ上がられたら大変なので、灯台守を復活させて置くなどの対策をとる必要があると思う。また南シナ海・東シナ海では中台連携の可能性があり、南シナ海では漁業関係のデータ交換や漁業管理の制度化といった協力が始まっている。人民解放軍の関係者は頻繁に「一緒に防衛しよう」と呼びかけているそうで、これには注意が必要だ。他には、日本国内から軍事・汎用技術が流出しないようにしていただければと思う。

(敬称略 / 講師肩書は講演当時 / 文責:貿易研修センター)

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