平成22年度 第5回-2 国際情勢研究会 報告2「米中間選挙とオバマ政権の今後」 東京大学大学院 法学政治学研究科教授 国際情勢研究会 座長 久保 文明【2010/10/22】

日時:2010年10月22日、場所:(財)貿易研修センター

平成22年度 第5回-2 国際情勢研究会
報告2「米中間選挙とオバマ政権の今後」


東京大学大学院 法学政治学研究科教授 国際情勢研究会 座長
久保 文明

久保 文明 オバマ政権を歴代の政権と比べるのは難しいが、感覚的に言うと、実はかなり大きな成果を挙げていると見て良いと思う。アメリカでは景気刺激策がなかなか議会を通らない政治的体質があり、今回、7870億ドル(72兆円)規模の超大型景気刺激策が通ったことは奇跡に近い。また特にその段階で議会の立法は必要としなかったが、金融機関、自動車産業の救済も行われた。さらに大きな成果としては、健康保険改革法案の成立が挙げられる。このほか金融改革法の成立もあり、これは緩和の方向へ向かっていた従来の金融規制の流れを転換するもので、非常に重要な法律になるだろう。外交についてはそう簡単に成果が出るものではないが、米ロ新戦略兵器削減条約やイラク撤退がある。あるいはアフガン増派についても、一応、公約は達成したといえる。
 ただオバマ大統領への評価は芳しくなく、現在の支持率は44~45%程度だ。当初の約70%という支持率から、1年10ヵ月でここまで落ちた。しかし米国では近年、どの大統領についても支持率が低迷しがちで、これは政治不信の増進といったものによって説明できるのではないか。そしてもう1つ、アメリカ政治の顕著な現象として、イデオロギー的な分極化が指摘できる。オバマ大統領は「保守、リベラルのイデオロギー的な壁を取り払う」と言っていたが、この公約とは裏腹に、ある意味、民主党支持者と共和党支持者の分極化を最も促進する大統領になってしまった。
 戦術的な側面では、オバマ大統領は皆保険制度を実現することに、ややこだわり過ぎてしまった。これを議会で通そうとしている間に、Tea Partyといわれる保守派のリバタリアンによる運動が盛り上がり、世論でも「オバマ大統領は、国民の関心事である雇用には関心がない」などといわれるようになった。またオバマ大統領はおそらく、自分の大統領選での勝ち方に関して過信し、さらに危機の雰囲気をやや過大視してしまったのだと思う。
 中間選挙については現在のところ、上院では民主党が50対50ないしは51対49で何とか踏みとどまるという予想が多い。ただ風向き次第では、ひっくり返る可能性もある。下院はかなり民主党に苦しい戦いで、現在の勢いが続けば7対3ぐらいの割合で共和党が勝つのではないか。また今回、注目に値するのは、Tea Party系の候補者が共和党の公認になることにかなり成功していることだ。彼らの中には共和党の「時には妥協も必要だ」という考えに反対する人が多く、徹底的に自分たちのイデオロギーを貫き通そうとするだろう。そうなると、かなり極端な予算案ができることも予想されるが、これはオバマ大統領にとって政治的に復活するチャンスを生み出すかもしれない。つまり、それに対して拒否権を発動することで、自分のイメージを相対的に「国民の生活を守る大統領」として定義できるかもしれない。
 外交では特に日米関係などへの直接的な影響はないと思うが、例えば米ロ核合意などはまだ批准されていない。今後、民主党の議席が大幅に減る中で、どの程度、批准が進むかだ。特にTea Party系の人たちは世界秩序にあまり興味がないので、かなり突き放した態度をとるかもしれない。そういったところで、外交にもいずれ様々な形で変化が及ぶと思われる。

(敬称略 / 講師肩書は講演当時 / 文責:貿易研修センター)

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