APEC事業「持続的キャパシティ・ビルディングのための戦略」東京ワークショップ 【2011/02/14-16】

APEC事業「持続的キャパシティ・ビルディングのための戦略」
東京ワークショップ


概要


 IISTは2009年からAPEC人材育成事業として、「持続的キャパシティ・ビルディングのための戦略」を実施している。
 2010年は、APEC首脳会合などが日本で開催され、20年のAPECの歴史を踏まえ、今後の域内の経済の自由化、活性化のために、持続的・包括的な成長を目指す横浜宣言が採択された。また、2010年9月には、人材養成大臣会合が中国で開催され、今後の域内の経営者を含む人材育成の重要性が確認された。
 上記を背景に、本事業では、持続的・包括的成長には経営者のキャパシティ・ビルディング(CB)が重要な役割を果たすとの観点に基づき、中長期的なCB戦略を策定するため、シンポジウムやワークショップを開催してきた。本ワークショップでは、これまでのプロジェクトの成果を基に、中長期的なCBの戦略的枠組みを構築し、最終とりまとめを行うため、人材育成等の専門家による意見交換を実施し、APEC人材養成作業部会(HRDWG)及びキャパシティ・ビルディング・ネットワーク(CBN)の今後の活動の指針とする提言を行う。

日程:2011年2月14日~16日
場所:東京(ホテルニューオータニ)
主催:APEC、貿易研修センター
参加地域:カナダ、香港、韓国、ニュージーランド、フィリピン、米国、日本


内容


 2月14日午前のセッションでは、「21世紀のAPECにおけるCBの優先事項」をテーマに議論を行った。プレゼンテーションでは、米国の専門家より、経営修士課程(MBA)が、企業や団体の管理者育成におけるグローバル・スタンダードとなり、現在分野別、国別などの様々なコースがあること、また、経済の自由化に対応するため、創造的思考の強化など、よりハイレベルなCBが必要になることなどが紹介された。また、香港の専門家によるプレゼンテーションでは、中国政府は、経済成長の原動力として科学技術に着目し、人材育成を重要視したため、この数十年で高等教育への進学率や、科学技術分野において大きな成果を上げているが、国内の地域格差や、先進国との格差が顕著であるという課題が提示された。

 午後のセッションでは、「APECにおけるCBプロジェクト実施の方法論と評価方法」をテーマに議論が行われた。フィリピンの専門家によるプレゼンテーションでは、社会システムの持続性には政治・経済・社会という多面的な要素を考慮する必要があること、また、持続性を実現するプロセスとして、リーダーが、ステークホルダーと共同で、問題を抽出し、解決していく方法論や、過去の事例にとらわれず、将来像を描き、それを実現していく方法論が紹介された。

 2月15日午前のセッションでは、カナダの専門家より、過去のCBプロジェクトのスットクテーキングを基に分析を行い、中間報告としてとりまとめたAPECのCBプロジェクトの戦略的枠組みとガイドラインについて説明された。主にAPEC HRDWGで実施されたCBプロジェクトは、計画の多面性や、ステークホルダーのニーズに対応しているなど、概ねCBの成功要因を有しているが、単発プロジェクトも多く存在すること、成果の普及方法や評価方法が確立されていないことなど、今後の課題も指摘された。

 これらの議題について、専門家の間で、これまでのAPECにおけるCB活動の経緯や、グローバル化に伴う経済活動の多様化、また、民間人、学者を含むステークホルダーの関与などの必要性について、多角的な論点から議論が行われた。議論の内容について、2月15日午後のラップアップセッションで確認され、2月16日に最終取りまとめが行われた。

 議論の結果、今後のAPECにおけるCBの優先事項について、(1)地域統合、生産性向上や、地域・セクター間における新たな競争を背景に変わりゆくビジネスモデル、(2)優良企業・団体における従業員のエンプロイアビリティ[雇用維持の為の能力開発{のうりょく}]の維持と向上、 (3)国内外における労働力格差是正と人材の育成と確保(4)グリーン産業における人材育成、(5)各分野からのステークホルダーの関与 からなる5つの分野・課題が取りまとめられた。

 これらを基に、今後CBNで実施するプロジェクトの案として、持続的成長やグリーン成長を牽引するための指導者の能力開発や、地域・コミュニティの開発に必要なリーダーシップなどが提案された。

 また、プロジェクトの運営母体であるCBNを活性化させるためには、ステークホルダーを明確にすること、ビジネス関係者、学術関係者とのネットワークを強化すること、これら関係者がCBNに参加するよう、強力なインセンティブを提示することが議論された。

 本事業の成果については、2011年3月に米国・ワシントンで開催されるHRDWGにおいて、参加エコノミーと議論を行う予定である。今回とりまとめた事業戦略は、今後のAPEC HRDWGにおけるCBプロジェクトの方向づけとして、またCBNの運営方針に示唆を与えるものであり、中長期的にAPECの持続的・包括的成長に資することが期待される。


「ワークショップでのプレゼンテーション(2月14日)」

「ワークショップでのプレゼンテーション(2月14日)」

「活発に意見交換を行う専門家」

「活発に意見交換を行う専門家」




担当:人材育成部