第115回-1 中央ユーラシア調査会 報告1 「タジキスタンに於ける甘草事業の概要と今後の展望」宏輝システムズ株式会社 代表取締役 吉田 博 (よしだ ひろし)【2011/11/16】

日時:2011年11月16日

第115回-1 中央ユーラシア調査会
報告1「タジキスタンに於ける甘草事業の概要と今後の展望」


宏輝システムズ株式会社 代表取締役
吉田 博 (よしだ ひろし)

生産開始にあたって
吉田 博 過日、約3年という長い期間を経て、紆余曲折の末、タジキスタンの工場で医薬品原料となる甘草根からの抽出物の生産が始まった。
 9月22日には大統領閣下を筆頭に閣僚の方々、日本からは前臨時代理大使、現臨時代理大使もお招きし開所式が催された。【写真1】
 工場は、概ね250万ドルの設備投資をし、道路も水も電気もない原野に建設した。【写真2】
 その処理能力は、年間、乾いた甘草で3000トン、濡れた甘草で6000トンである。
 今(2011年9月現在)、濡れたままの状態で約1,700トンの甘草根が集まっている。【写真3】
 (※甘草は採掘した水分の多い根を半分以下の重さになるまで乾かしたものを加工する。)
 今回、工場が稼動することにより、200名の正規、或いは季節的な労働者の雇用の機会が生まれた。
 この様な工場を今後、中央アジアで5、6カ所、設備等進化させつつ建設する目標があり、ここはその1番目のプラントである。
 マーケットの規模からすると過剰投資と映るかもしれないが、これは、甘草が採れる場所は他にもあるということを相手に気付かせる一つの牽制手段である。私たちがこの十数年来、中国を始めとする海外での事業展開を通じて身に着けてきた知恵であり、中小企業に出来るセルフディフェンスはこれくらいしかないのではという思いがある。
 弊社のビジネスモデルは投資環境の整っていない地域で事業を展開する為の工夫がなされていて、現地事業体の経済的負担を軽減している。一例としては、現地合弁会社を過小資本にする、設備類はレンタルにするといったことだ。
 そのようなビジネスモデルのシステム設計とともに、ヒューマンリレーションシップも確立していくわけだが、いずれも心の世界という部分が非常に重要である。
 どの地域に於いても、官民、地位の上下を問わずそこには様々な人間模様があり、それを無視してビジネスを推進することは有り得ない。特に今回は国のトップまで関与する形になったわけで、我々もその部分の調整には大いに腐心した。
 とりわけ現地の社長が優秀であったこともあり、この度現地での生産開始に至ったわけだが、やはり何を置いても本村氏の幅広い人脈、お力添えを抜きにしてこの事業を語ることはできない。

医薬品原料メーカーとして
 漢方薬は甘草がないと成り立たない。甘草の資源保護を如何にして成し得るかという研究も行っているが、例えば再生しえた量だけ毎年採っていれば資源は枯渇しない。また、このプラントのバイプロダクツは甘草にとって大変優良な肥料であることも弊社研究部で確認している。
 これは中国でもどこでもできないことで、甘草は世界的規模で少しずつ枯渇している。
 私たちは医薬品原料メーカーなので、徹底的に品質保証ができるよう、加熱して何年で劣化するか、規格を外れるか、包装はそれでよいかといった研究も行っている。これが医薬品原料メーカーの特徴である。

今後の見通し
 今後、AVALIN(アバリーン)という、この合弁会社が成功していくことが大切である。成功すれば、日本の企業がもっと進出すればよいという話しになる。タジキスタンにも蜂蜜などたくさんの商品がある。話しによると国民一人当たり、世界でいちばん蜂蜜の消費量の多いのがタジキスタンである。日本にも蜂蜜メーカーがあるので繋げていかれるとよい。
 ビジネスは成功しないといけないが、その成功はどこでわかるか。税金がたくさん入れば国家として成功である。商品が出荷されて外貨が入ってくる。出荷されたパッケージに、メイド・イン・タジキスタンと書いてあればモラルがあがる。それを私たちも目指していた。然しながら、そう単純な話ではないところもある。
 今日はビジネスモデルと心の世界と両方の話をさせていただいた。

 ※甘草は、マメ科カンゾウ属植物(学名:Glycyrrhiza)の根(一部の種類は根茎を含む)を乾燥したもので、そのまま、またはエキスを製して生薬として利用される。漢方処方中7割に配合される。その作用としては、鎮痛、抗炎症、鎮咳去痰、解毒、抗潰瘍などがある。主成分は、甘味を有するグリチルリチン酸である。この成分は抗炎症作用などを有しているが、その他の成分(フラボノイド類)も多様な活性を有する。医薬用途以外にも、化粧品原料、食品、食品添加物等として幅広く利用される。
カンゾウ属植物は、世界で10種以上存在しており、地中海地方、小アジア、ロシア南部、中央アジア、中国北部、北アメリカなどに自生する。

【写真1】中央がラフモン大統領

【写真1】中央がラフモン大統領

【写真2】プラント遠景

【写真2】プラント遠景


【写真3】手前事務棟のすぐ奥が採取した甘草根の一部 ※プラント建屋最上階から撮影

【写真3】手前事務棟のすぐ奥が採取した甘草根の一部
※プラント建屋最上階から撮影


(敬称略 / 講師肩書は講演当時 / 文責:貿易研修センター)

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担当:総務・企画調査広報部