平成23年度 国際情勢講演会 「Doing Business with India」 在大阪・神戸インド総領事館総領事 ヴィカース・スワループ【2011/05/30】

講演日時:2011年5月30日、場所:関西経済連合会会議室

平成23年度 国際情勢講演会 インド経済交流セミナー
「Doing Business with India」


在大阪・神戸インド総領事館総領事
ヴィカース・スワループ

※主催:一般財団法人 貿易研修センター
共催:公益社団法人 関西経済連合会、在大阪・神戸インド総領事館、独立行政法人 日本貿易振興機構(ジェトロ)大阪本部、大阪商工会議所

ヴィカース・スワループ 1. 毎年9%の成長を続けるインド
 日印両国の間では2月16日に、包括的経済連携協定への署名がなされた。これによって両国間の貿易総額の94%にあたる物品で関税が段階的に撤廃され、看護師や料理人などヒトの移動もより容易になる。両国はまた、2014年に2国間貿易を250億ドル規模にまで拡大させることを目標に掲げている。2010年に国際協力銀行(JBIC)が日本の製造業500社以上を対象に行った調査では、インドは長期的に見て最も有望な投資先国に選ばれた。中小企業にとっても中期的に有望と考えられる事業展開国として、初めて中国を抜いて1位になった。
 2010-11年度のインドの経済成長率は8.6%で、インドの計画委員会は2012~17年の第12次五ヵ年計画の成長見通しを9~9.5%と決定した。この成長は、増え続ける若い人口、そして中間層による消費や投資、貯蓄の拡大によって国内需要が高まっていることによる。国民所得の35%を超える総貯蓄率と40%近い総投資率によって、インドには持続的な経済成長の基盤があるといえる。こうしたしっかりとした経済基盤を支えているのが、各セクターで見られる健全な成長だ。インドの工業生産は、2010年4月には17.6%に成長した。またテレビや冷蔵庫などの好調な販売を反映し、資本財産出は63%と大きく増加、耐久消費財の産出は昨年7月、22.1%に伸びた。自動車の販売台数は2010年に31%増加し、携帯電話市場では同年10月に1890万台もの新規加入者があった。インドのGDPは既に1.5兆ドルを超え、2020年までに4.5兆ドルを超えると見られている。ゴールドマン・サックスは2032年までに、インドが世界3番目の経済大国になると予想している。

2. 急激な成長の4つの要因
 インドには、(1)安定した政治形態、(2)豊かな資源、(3)多彩で優秀な人材、(4)巨大で拡大する市場、(5)勢いのある人口動態、(6)コストの低さ-といった強みがある。またインドはビジネスだけでなく、海外投資にも開かれている。インドの海外投資政策は他国からの直接投資の促進に力を入れており、規制や認可などは自由になってきている。日本に対しては、従来までのものに加え、特に再生可能エネルギー分野への技術提供や投資を期待している。また特別経済区の設置や、製造工場の設立への投資も歓迎される。  よく「インドの成功の秘密は何か」という質問を受ける。自分なりに考えを重ねた結果、私は近年のインドの劇的な成長には4つの要因があると考えるようになった。これを私は4つのEと呼ぶ。それは、教育(Education)、エンパワーメント(Empowerment)、起業家精神(Entrepreneurship)、そして英語(English)だ。まずは教育(education)で、教育システムの改善は今日の経済成長の大きな要因の1つだといわれる。インドでは世界で二番目に多い科学者とエンジニアの人材を融資、毎年40万人のエンジニアを拠出している。2つ目のEは、empowermentである。インド人は民主主義だけでなく、テクノロジーからも力を得ている。テクノロジーは機動性を上げ、貧困から抜け出す手段となったり、デジタル格差を埋める役割を果たす。3つ目のeは、起業家精神(entrepreneurship)だ。インド人は生まれながらの起業家で、細胞に起業家精神が埋め込まれているとまでいわれる。さらに私たちはグローバル・ビジネスやインターネットの世界で使用される言語、英語(english)を話し、これが4つ目のeだ。インドの英語教育はイギリスの統治時代にさかのぼるが、私たちはもはや英語を植民地時代の負の遺産とは考えていない。英語はより良い教育や仕事、将来を掴むための言葉だと考えている。

3. 互いに補える日印の経済
 もちろん、インドが豊かな発展した国家になるためには、まだ長い道のりがある。10%近い成長率を維持するには、製造業、農業、サービス業を積算して約1兆5000億ドルの資本が必要だ。また2020年までに3億2000万トンの食糧を生産し、2030年までに80万メガワットの電力を生み出す必要がある。そこで、日本とのパートナーシップが重要になる。日本とインドの関係は、仏教が日本に伝わった6世紀までさかのぼる。現在、両国の友好関係は、民主主義、そして開かれた社会、人権、法の支配、市場経済などいくつもの価値観を共有する戦略的グローバル・パートナーシップに発展した。この友情と連帯感は、東北地方で起きた大震災の後、形となって表れた。インドの歴史上初めて、外国で起きた災害の犠牲者を悼むメッセージをインドの首相が議会で読み上げた。またインド政府は震災後すぐに、支援物資や救援復興チームを日本へ送った。
 インドに対する関心の高まりは、貿易と投資の数字にも反映されている。2国間貿易は2001年には50億ドルにも満たなかったが、2008~09年には120億ドルを超え、2014年までに250億ドルを超えると予想される。貿易収支は引き続き、日本に有利な状況が続きそうだ。またインド国内の日系企業の数は、過去3年間で倍増し、日本からインドに対する投資が8000億円を超えた。
 日本経済とインド経済では、互いに補える点がある。インドの若々しい活力は高齢化が進む日本にプラスとなり、日本の進んだ技術はインドの豊かな資源を活用できる。そして、インドのソフトウェアの優れた能力と日本のハードウェアの優秀さは、他に負けない組み合わせとなるだろう。さらに日本の投資のための資本余剰金は、インドの巨大で成長する市場で高い収益を誇っている。

4. 日印のパートナーシップに向けて
 ところで、多くの企業がインドへ進出を望んでいても、インフラ整備の遅れに対する懸念から見送られることが多いという。インフラ整備はインド政府の最優先課題で、2012~17年の五ヵ年計画では1兆ドル以上が費やされる予定だ。この計画では、民間投資が大きな役割を果たす。インドの重要なインフラ・プロジェクトは、貨物専用鉄道建設(DFC)とデリー・ムンバイ産業大動脈(DMIC)で、いずれも日印のパートナーシップの代表的なプロジェクトだ。これらが軌道に乗れば、インドのインフラは見違えるように変わるだろう。今こそ、このプロジェクトを大いに活用し、産業大動脈に工場や合弁会社などを設立するときだ。また、DMICプロジェクトの新たな側面として、スマート・シティの構築が挙げられる。このスマート・シティは、物流や水処理、都市交通、リサイクル、そして持続可能なインフラ開発などの分野で先進技術をもたらすもので、北九州のエコタウンや堺市をモデルとしている。関西は特に環境分野の技術に優れており、この新しいインドとの協力分野で最も利益を得ることができるだろう。またインドの企業も投資先を探しており、喜んで日本へ来るだろう。
 海外進出を考える企業が求める条件として、(1)生産コストが低く安定している、(2)優秀な現地スタッフを採用できる、(3)大きな国内市場を抱える、の3つがある。インドは中国以外で、この3つの条件をすべて提供できる国だ。独立した司法やしっかりした行政のある安定した民主主義国家で、生産コストはまだまだ低く、7億人以上というアメリカの総人口の倍以上の市場を抱えている。そして何よりも投資家に優しい政策と、インセンティブ・スキームがある。皆様にもぜひ、包括的経済連携協定(CEPA)やインドの大きな機会を活かし、日印、そして関西とインドのパートナーシップを次の段階へ発展させていただければと思う。そこから得られるものは、皆様にとっても大きくすばらしい物だと自信を持って言える。

(敬称略 / 講師肩書は講演当時 / 文責:貿易研修センター)

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 平成23年度 JKA補助事業 IIST国際情勢講演会 報告書 (PDF:3MB)


担当:総務・企画調査広報部