平成24年度 国際情勢講演会 インドネシア・タイ投資セミナーin九州「インドネシアの投資環境」 (一社)日本貿易会 常務理事 市村 泰男【2012/11/14】

講演日時:2012年11月14日、場所:(社)九州経済連合会会議室(福岡)

平成24年度 国際情勢講演会 インドネシア・タイ投資セミナーin九州
講演2「インドネシアの投資環境」


(一社)日本貿易会 常務理事
市村 泰男

※主催:一般財団法人 貿易研修センター
共催:九州経済産業局、(社)九州経済連合会、九州経済国際化推進機構

成長を続けるインドネシア
 インドネシアは1万7000の島々からなる島国で、国土は日本の約5倍だ。東西5000キロ以上に広がっており、これは米国の西海岸から東海岸までの距離とほぼ同じだ。海洋面積は世界一広く海岸線の長さも世界一なので、養殖や水産業などは今後、かなり伸びるだろう。現在の人口は、2億4000万人強だといわれる。これは世界第4位の人口で、若い人が圧倒的に多いことから当分、「人口ボーナス」が期待できる。人口の大半はマレー系民族だが、数パーセントに過ぎない華僑が経済の実権を握っている。また全体の9割がイスラム教徒だが、いわゆる敬虔なイスラム教徒ではないため、酒も飲め、日本と同様の生活ができる。ただし、労働者はモスクへ行くので、金曜日は礼拝時間が必要になる。断食を行うラマダンの時期もある。
 インドネシアは世界有数の資源国家で、エネルギー資源、鉱物資源、そして農林水の資源がいずれも豊富だ。このため、これらに関連するビジネスを行うには非常に魅力のある国だ。政治については、ユドヨノ政権になってから今年で9年目となり、2014年には選挙が行なわれる。近年の経済成長をうまくリードしてきたのはユドヨノ大統領であり、国民の直接選挙で選ばれた初の大統領でもあるため、非常に公正だといわれる。
 インドネシアには親日派が多く、アンケートでは国民の8割以上が、「一番好きな国は日本」と答えており、歴史的にも日本が非常に信頼されており、日本への留学生も多く、超一流のバンドン工科大学やボゴール農科大学では教授の3分の1が日本の留学生を占める。
 歴史の流れでは簡単に言うと、戦後50年余りは、スカルノ大統領とスハルト大統領の2人に統治された。スハルトはASEANという言葉を初めて使った人物でもある。その後スハルトの重臣ハビビ、宗教家のワヒド、初代大統領のスカルノの娘メガワティ、そして04年10月に、国民から直接選ばれた大統領として9年目を迎えるユドヨノである。スハルト体制が98年に崩壊して、04年に新しいユドヨノが出て、選挙は2期目に入って圧勝し、落ち着いてきたということだ。
 国を支えているのはテクノクラートで、例えば現在、副大統領を務めているブディオノは、インドネシア大学の経済学の元教授だ。また2009年まで財務大臣を務めていたスリ・ムリアニは、インドネシアの経済復興に非常に努力したことで評価され、今は世界銀行の専務理事になっている。現在、「2014年問題」として、誰が次の大統領になるかが注目されている。結論から言うと、大物はおらず、よくわからないということだが、前回、メガワティと組んで敗れたプラボウォという人が、若干浮上してきたともいわれる。メガワティについては根強い人気があるが、国民投票の結果はわからないものだ。
 インドネシアは、なんといっても人口が多く、新興国の代表格になっている。今後は国内消費や豊富な資源、インフラ投資の増加によって経済成長が続いていくだろう。リーマン・ショックの際、インドネシアの経済成長率も落ちたがマイナスにはならず、これがエコノミストに評価された。タイやシンガポール、マレーシアのような国では、国内総生産(GDP)に占める貿易の割合が6割を超えるが、インドネシアでは25%程度で、国内消費が圧倒的に大きい。このため、世界の貿易が大きく減少したリーマン・ショックでも、インドネシアへの影響は少なかった。以降、インドネシアは注目されるようになっている。
 「人口ボーナス」は、2030年ごろまで続くといわれる。また、実質GDPの成長は6%台という非常に高いレベルで推移しており、消費、投資、輸出の三拍子が揃っている。このような国は、他にあまりない。為替と株式についても、現在は非常に安定している。世界の格付け機関は最近、インドネシアについて「投資適格」と判断するようになっており、投資については安心して検討することができるだろう。

投資ブーム、中間層の増加による市場の拡大
 インドネシアでは昨年、実行ベースで約200億ドルの投資がなされ、非常に大きな投資ブームになっている。国別に見ると、シンガポールからの投資がトップだが、これはインドネシアの華僑や大金持ちが、国の政情が不安定だった時代に財産をシンガポールへ預け、そこから国内へ投資してきたことによる。しかし、最近は政治が安定してきたので、国内からの投資も急増している。
 10年後の国内市場をどう見るかというのは、重要なキーワードだ。インドネシアは必ず成長する。その根拠となるのはまず人口2億4000万の巨大市場で、国土が広く、資源も豊富だ。インフラへの投資は今後増加し、経済規模が大きくなるにつれ、内需も増えていくだろう。通常の耐久消費財なら買えるというレベルの中間層も増えており、今後さらに急増するとみられる。またBOPビジネスも、大きく伸びるだろう。
 パナソニックやシャープのような日本の家電メーカーは、インドネシアでは中間層に合わせ、無駄な機能は付けない製品を低価格で販売している。このため、韓国や中国の家電メーカーと比べても、圧倒的なシェアを持っている。オートバイについては現在、年間800万台売れており、その98%は日本メーカーの製品だ。自動車の販売は今年、「100万台突破が確実」という報道があったが、やはり日本車が95%を占めている。さらに最近、人気が出てきているものとして、ソフト、コンテンツ関係がある。
 インドネシアには最低賃金法があり、これは労働法の1つで、州ごとに最低賃金が決められている。最低賃金は毎年公開され、そのベースになるのは前年度のインフレ率だ。したがって、現地で賃金を決める際にはこれを守り、さらに会社の余裕によってプラスしていくことになる。投資コストに関しては、国内ではジャカルタが最も競争力がある。ジャカルタでは、電気料金も安くなっている。法人税率については、タイの方が下がってきており、インドネシアにはもう少し下げるよう求めている。

MPAで期待される経済波及効果
 最近、インドネシアの経済調整大臣が来日し、首都圏の投資促進特別地域(MPA)に関して枝野幸男経済産業大臣と最終的に合意した。合意した金額は3兆円で、2020年までに投資することになった。これは港湾から空港、道路、発電、ゴミ焼却施設など、必要なインフラをすべてそろえようというプロジェクトで、大変な経済波及効果があるとみられる。このため現在、様々な方面の方が投資を考えている。
 一方、インドネシアの日系自動車メーカーは、従来は国内向けに生産を行っていたが、最近ではトヨタを柱に、日産もスズキも輸出型に変わりつつある。特に、自動車に関しては、中間層が増えてくると販売台数が飛躍的に増えるとみられ、中国はその典型だ。このため、インドネシアでは今後も、市場の拡大が予想される。またインドネシアでの販売を支えているのは、日系の金融だ。銀行、消費者ローン、そしてリース会社もあり、それぞれ特色がある。
 インドネシア・ルピアのトレンドを見ると、2009年のリーマン・ショックで大きく下がったが、その後は、非常に安定してきている。インフレについても非常に安定しており、「ASEANの優等生」といわれる。一方、対外債務はまだ多く残っているため、経常収支は若干赤字だ。しかし、輸出産業が成長しており、いずれバランスが良くなるだろう。
 インドネシアに進出している日系企業の数は、正確にはわからないが、1社でいくつかに分社化しているところも含めると、数千社になるようだ。一流企業はほとんど進出しており、メーカー、商社、銀行、物流、サービスなど、あらゆる分野に及ぶ。一方、工業団地については、過去3年で土地代が約3倍に上がっており、土地の入手が非常に難しくなっている。しかし、工場団地で空の工場をレンタルで借り、機械を持っていくという方法もあるので、中小企業の方にはそのような方法をお勧めする。

(敬称略 / 講師肩書は講演当時 / 文責:貿易研修センター)


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担当:総務・企画調査広報部