平成25年度 第4回 アジア研究会 報告「アジア市場の開拓と今後の課題」 株式会社ファミリーマート 執行役員 海外事業本部 海外事業部長 山下 純一 (やました じゅんいち)【2013/11/29】

日時:2013年11月29日

テーマ「変貌するアジア(主要国の新しい動き)
~2015年アセアン統合及び主要国指導者交代を見据えて~」

平成25年度 第4回 アジア研究会 報告
「アジア市場の開拓と今後の課題」


株式会社ファミリーマート 執行役員
海外事業本部 海外事業部長
山下 純一 (やました じゅんいち)

1. 海外8ヵ国で展開するファミリーマート
山下 純一 ファミリーマートは日本の会社で、1981年9月に設立された。2013年10月末現在の店舗数は、全世界で2万2872店となっており、世界で第2位のコンビニエンスストアチェーンだ。現在、日本のほか、台湾、韓国、タイ、中国、アメリカ、ベトナム、インドネシア、フィリピンという海外の8地域で展開している。最初の海外展開は台湾で、1988年12月に1号店が開店した。2009年には海外の店舗数が国内の店舗数を追い越し、海外店舗は現在、全体の56%を占めている。
 アジア地域の特徴としては、人口が多く、人口密度が高い、そして平均年齢が非常に低いことが挙げられる。また、カントリーリスクは比較的低く、経済成長率が高い。このような特徴を持ったアジアは今後、さらに伸びていくとみられ、コンビニエンスストアにとって魅力的な市場だ。
 我々の海外進出には、基本のフォーマットがある。異国での事業展開は、まず異文化であることから相互理解が大切になる。そして、インフラ構築も重要だ。コンビニエンスストアは非常に小さく、簡単な店のように見えるが、ITシステムの構築や物流センターなどが必要だ。さらに、お弁当やおむすび、サンドウィッチなどを作る工場も必要で、1号店を開店するまでにすべきことは多い。また海外では商習慣の相違についても、認識しておかなければならない。さらに人材教育のほか、日本型のコンビニエンスストアがどのようなものであるかについて、マーケティングを通じて浸透させていく必要もある。
 これらの課題に対し、我々は基本的に、現地の有力パートナーとの合弁事業で対応している。現地企業が持つ現地情報やアイディアを活用し、我々が持つ日本型のコンビニエンスストアのノウハウと融合させる。我々がノウハウや商標を提供し、合弁会社が成功裏に事業展開することをバックアップする。将来的に利益が出たときは配当金がいただけるほか、取込利益も期待できる。また、ノウハウや商標の対価として継続的なロイヤリティを受け取っている。即ち、合弁事業ではこれら3つの収入をバランス良く得られるメリットがある。
 海外進出には様々なフォーマットがあり、我々が現地企業にライセンスを供与するだけのもの、そして合弁ではなく、我々が100%でやっていくものがある。この場合は取込が100%我々の利益になるが、リスクも100%となる。また、海外では商慣習が異なるので、我々だけで対処できない問題も多い。特に政府関係の話では、現地の政府に精通したところと組むのが策だと考えている。

2. 地場の企業にノウハウ提供し、事業を育てる
 我々の海外進出の基本ポリシーだが、日本独自のコンビニエンスストア・ビジネスモデルを輸出していると自負している。先ほどお話ししたように、コンビニエンスストアの進出では、1号店を開店する前に行うことが多い。お弁当やサンドウィチなど中食といわれるものや、ファストフードの品揃えを良くし、絶えずおいしいものを提供していかなければならない。そのため、専門の工場を造って対応する必要がある。物流については、200~300社の取引先と商品のトレーディングを行うため、独自の物流センターを造り、メーカーからそこへ運んでもらう。物流センターからは我々のトラックで店舗に届けるので、1日1回の納品で済む。また、多数の店舗からなるので、コンピューターシステムの構築も重要になる。物流センターやITシステムは、お店を効率良く運営するための仕組みということで、我々は開発してきた。それらを提供することで、現地の合弁会社にもプラスになっていると思う。
 そして、接客教育も重要だ。日本では最近、ホスピタリティという言葉が一般化し、お客様に感動を与える接客をしているが、東南アジアではまだまだ接客に対する意識が低い。このため意識改革から始める必要があり、かなりの神経と力を注がなければならない。あとは、品質管理技術があり、これは中食、ファストフード工場とも相まっている。食の安心・安全は、最近は日本だけでなく東南アジアでも声高に叫ばれている。そこで、日本で我々が培った技術を現地へ持っていき、高い品質を提供している。
 フランチャイズは、我々の事業の根本となっている。我々が海外で店舗を展開するときには、直営店とフランチャイズ店の2つがある。直営店では、大手外資系企業がやってきて地場の小売業を脅かしているという印象があると思う。我々はそうではなく、フランチャイズが専門なのであり、地場の小さなお店にそのノウハウを提供し、強くなっていただきたいと言っている。東南アジアには今後、大型店が増えていくとみられるので、零細小売店はフランチャイズになり、ファミリーマートのシステムを用いて大型店に対抗できる力をつけていただきたい。
 POSデータというのがある。POSはバーコードを読み取る機械だが、これがあると、いつ、どのような物がいくつ売れたか、どんな方がそれを買ったのかが即座にわかる。販売データの活用だけでなく、メーカーにもデータを加工して提供することで、メーカーの販売管理、製造管理につながっていく。こういったすべてのインフラを整えなければ、日本で展開しているようなコンビニエンスストアはできない。合弁会社を設立したときは、まずここに力を入れ、1号店開店前に整える。その国・地域の近代化促進、経済活性化の促進という2つを旗印に地域の発展と共に事業を拡大していくのが、我々の理念だ。小売業については基本的に、地場の有力企業がマジョリティであるべきだと考えている。我々はそれに対し、ノウハウを提供し、事業を育てていく。
 現地パートナー企業の選定基準としては、やはり人材が豊富であること、小売業に理解があること、そしてインフラ物流網に対して素養があることが挙げられる。また、中食・ファストフードは絶えず新しい物を出していかなければ、お客様が飽きてしまうので、商品開発力も必要だ。さらに、その土地のネットワークを駆使し、どこに店を出せば良いのかが、すぐわかるような店舗開発力も求められる。このほか、かなりの先行投資が必要なので、それに耐えられる財務体質も要求している。
 合弁会社に対するサポートでは、基本的に現地化が最終的なゴールとなる。事業のフェーズを3つに分け、1~3年目は我々が基本的な事業のフォーマットを作り、その間に人材教育も行う。商品と物流、システムと店舗会計、管理系という5組織の中に日本人が入り、強化する。その後は各部門のナンバー2をそれぞれの部門のトップに育てる教育をする。6年目以降は日本人を2人ぐらいにし、現地のリーダーシップで会社を運営していく。ここで大体、スピードが上がる。最初はスロー・スタートだが、足固めをしっかりやる。

3. 日本発祥のコンビニとして、アジア・ナンバー1目指す
 今後の課題については、以下のようなものがある。1つは外資規制、内資優遇策といわれるもの、そして現地の法制度、文化への適応、インフラ、労働力に関する課題がある。まず、外資規制ないし優遇策だが、そもそも小売市場への参入が制限されている国が多い。2番目に、小売企業の投資額条件がある。そして、店舗運営における規制では、タバコなどの販売禁止がある。さらにインドネシアなどでは、国産商品の販売義務付けがある。
 あとは曖昧な許認可基準、審査の長期化、そして急速な法改正がある。特に、タイ、インドネシア、ベトナムでは賃金が一気に上がり、メーカーは苦しんでいる。我々のような国内消費型産業は、賃上げによって利するところがあるが、まだ消費にはあまりつながっていない様子だ。あとは法律が非常に変わる、ということもある。もちろん宗教、特にイスラム教への対応も必要で、今後、マレーシアなどへ進出するときには考慮しなければならない。
 そして、インフラ網が脆弱であり、特に電気がなかなか安定供給されないこともある。物流システムに関しては交通規制があるため、配送、物流にかなり支障が出ることもある。通信システムについては、最近は海外から日本にデータを飛ばし、日本のデータセンターで処理して送り返しているが、海底ケーブルが切れるなどして、通信速度が遅くなることもある。さらに、外国人の就労に関する制限もある。技術支援で人を派遣する必要があるが、その都度、ビザを取る手間が生じるので、ビザなしで滞在できる期間を延ばしてもらいたい。一方、従業員に関する課題では、企業への低い定着率がある。我々の会社では人が命で、人がお客様にサービスを提供する。このため、優秀な人材に長く働いてもらえる企業風土を作らなければいけない。また、商習慣や文化を理解した上での教育も考えなければならない。
 2015年には、東南アジア諸国連合(ASEAN)が統合されるので、期待しているところが多い。オペレーションで言うと、国を超えた人材交流活発化があり、来年1月にはタイで国際人材開発センターを立ち上げる。また現在、ファミリーマートコレクションというオリジナル商品を500~600品目出しているが、これを海外の製造にシフトしていく。さらに、お店の什器については、タイなどで一括製造すれば、コストダウンにつながる。また日本のノウハウを導入すると、省エネの什器、機器ができ、ランニングコストを削減できる。
 各国のファミリーマートの強みを補完し合うことで、全ファミリーマートのレベル強化と、お客様へのさらなる利便性を提供し続けていきたい。ファミリーマートは、日本発祥のコンビニとして、アジア・ナンバー1を目指している。現在2万店を超える店舗ネットワークを、さらに拡大させたい。そして各国でお客様に喜ばれる店を作っていきたいというのが、我々の切なる願いだ。

(敬称略 / 講師肩書は講演当時 / 文責:貿易研修センター)

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担当:総務・企画調査広報部