第130回 中央ユーラシア調査会 報告1 「国際エネルギー消費効率化等技術・システム実証事業 基礎事業石炭高効率利用システム案件等形成調査事業 中央アジア諸国(ウズベキスタン・キルギス・タジキスタン)における 石炭高効率利用システムの基礎調査について」株式会社三菱総合研究所 主任研究員 平野 公康 (ひらの ともやす)【2013/09/25】

日時:2013年9月25日

第130回 中央ユーラシア調査会
報告1 「国際エネルギー消費効率化等技術・システム実証事業
基礎事業石炭高効率利用システム案件等形成調査事業
中央アジア諸国(ウズベキスタン・キルギス・タジキスタン)における
石炭高効率利用システムの基礎調査について」


株式会社三菱総合研究所 主任研究員
平野 公康 (ひらの ともやす)

 NEDO石炭FS基礎調査の結果を報告させていただく。本来なら調査の成果として、これから1兆円のビジネスになるといった報告ができるとよかったが、残念ながらこの3カ国で調べたところでは上手く行かないことが多かった。率直に報告して話題提供としたい。

1. 調査の概要
 NEDOからの委託調査、石炭FSの目的は、我が国の有する石炭技術、具体的には、石炭を高効率に利用するプラント輸出案件を、カザフスタンを除く中央アジア諸国において探す基礎調査である。中央アジアの国々で、トルクメニスタンは天然ガス資源に恵まれるため、石炭はほとんど使われてない。そのためウズベキスタン・キルギス・タジキスタンの三カ国において、基礎調査を昨年8月~今年の3月の期間に行った。

2. 三カ国の概況
 この三カ国は、日本との比較で見れば、経済規模が非常に小さい。日本で5兆ドル以上あるGDPが、キルギスでは45億ドルで、一人当たりGDPもキルギスとタジキスタンでは1000ドルを下回っている。産業については、ウズベキスタンは、綿、天然ガスなどがあり、キルギスではクムトールの金採鉱がGDPの相当な割合を占めている。タジキスタンはタルコがアルミニウムを精錬して輸出している。輸入品目はエネルギー製品、主に石油製品が多い。機械設備も自国ではあまり製造できないのでこれもまた輸入になる。
 今回の調査において重要となる電力は、ウズベキスタンではガスによる発電量が全体の75%を占めている。キルギスは約9割、タジキスタンではほぼ100%が水力発電によって成り立っている。キルギス、タジキスタンが水力発電の一本足でよいのかは大きな疑問である。冬季に水力発電が止まる可能性や、電力のために水を流すことは中央アジアの水資源問題を考慮すると課題がある。ここに石炭による発電が入る余地が大きいのではないかと思う。
 石炭は3カ国でかなりの埋蔵量がある。ウズベキスタンは可採埋蔵量が19億トンあると言われているが年間300万トンしか生産していない。キルギス、タジキスタンでは、億トン規模の埋蔵量があるのに、採掘は年間数十万トンにとどまっている。
 この石炭の使い道として、石炭火力発電所で電力にすることが挙げられる。三カ国の送電網、発電所を見ると、ビシュケクには、旧ソ連の発電所で、電力だけではなく熱を供給する熱電併給所があり、ウズベキスタンのアングレンには炭鉱と熱電併給所がある。キルギス、ウズベキスタンへ訪問調査を行い、これらの発電所等を見学させてもらった。
 ビシュケクの発電所(熱電併給所)は、もともと郊外に作られたが、街が膨張して今は街の中にある。初期に容量は666MW、ボイラ24基(うち160トンボイラが13基、220トンボイラが11基)あったが、故障や修理中で可動基が減り、現状では最大出力は300MW程度である。設備・機器は古く、1959~1989年製のものである。発生する石炭灰のうち96%が回収され残りの4%は煙突から放出されているため環境対策も必要である。ボイラや配管から蒸気が漏れている状態で、一刻も早い更新が必要な状況であった。燃料となる石炭は、旧ソ連の時代よりカザフスタン産を利用しているが、独立国になってから国内炭を使いたいという認識がある。カラケチュ炭鉱は比較的新しい炭鉱であるが、掘っているのはシャベル1台でトラックに積んでお仕舞である。通常、石炭は掘った後に選炭を行うものだが、カラケチュでは行われていなかった。
 ウズベキスタンのアングレン石炭火力発電所はビシュケクよりもきれいで手入れがされ、8台あるボイラ全てが動いていた。メーカーは違うが、年式、形状はビシュケクの発電所とほぼ同じであった。しかし、既に寿命期なので第1期改修工事を中国が行っている。訪問時には、第2期工事の話があった。
 タジキスタンには現状では火力発電所はない。石炭がドゥシャンベの近くで採掘できることがわかり、火力発電所を作る話があったが、残念ながら中国に決まったようだ。

3. 案件化の検討
 アングレン石炭火力発電所は第1期改修に中国企業が着手し、中国の民間金融機関が事業費全体の8割近くを融資していた。ウズベキスタン政府が政府保証を付けない方針を示すなど要求も厳しく、すぐにプロポーザルを出すのは難しい状況であった。日本が案件化する場合、中国と同等以上の条件を提示する必要がある。これらのことからアングレンの第2期よりも、キルギスのビシュケク石炭火力発電所を優先させるべきだろうということになった。
 ボイラの方式としては、循環流動層亜臨界ボイラ、超臨界圧微粉炭ボイラ、亜臨界圧微粉炭ボイラの3方式から選び提案することとした。循環流動層亜臨界ボイラは、アングレン石炭火力発電所で中国が提案したものと原理的には同じもので、砂を循環させながら石炭を燃やす仕組みである。装置が大きくなり、価格も若干高くなる欠点があるが、使える炭の範囲が広いメリットがある。亜臨界圧微粉炭ボイラは通常のボイラで、石炭を細かく砕いて燃やす形式で価格も安く、技術的にも汎用なもの。言い方を変えれば、日本の優位性が発揮できず、日本と他国の技術の差別化が難しいとも言える。

4. 調査終了後の動き
 本年3月にはキルギスから日本とFS調査を行いたい旨のサポートレターがあった。
 調査終了後、石炭ボイラメーカー各社に打診したが、6社全てがキルギスの案件には関心を示さなかった。現在、日本では、FIT(固定価格全量買い取り制度)の導入に伴い、国内バイオマス案件が増えている。国内でプラントが売れる中、なぜ中央アジアに持って行かなければならないのか。国内のバイオマスの市場規模は限られているため、日本の市場は早い者勝ちの様相であり、この機を逃したくないというメーカーの声も強かった。他にも、治安の問題や、規模の小ささを課題とする意見があった。
 その後、キルギスでは4月に内閣改造があり、エネルギー産業大臣が辞任した。1ヶ月の空席後、5月に新大臣が就任した結果、ビシュケク石炭火力発電所のFSは7月に中国企業に決定となった。その背景の一つには、水不足で水力発電の低下が見込まれ、計画を前倒したい要望があったと聞いている。また大使館などに問い合わせてみると、中国側の条件が良かったのではないかということもある。
 日本側は遅れを取り、相手にとって魅力的な提案ができなかったことも反省しなければならないだろう。日本のメーカーもあまり乗り気でなく、提案の体制すら整わない中で、7月に中国に決まってしまった。中央アジア地域というメーカーが及び腰となる地域への対外戦略はどのようにすべきか。官民の役割や連携も含め、わが国の課題は多いことを実感させられた。

(敬称略 / 講師肩書は講演当時 / 文責:貿易研修センター)

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担当:総務・企画調査広報部