平成25年度 国際情勢講演会 「ミャンマーから見た日本と、アジアの未来~元留学生の声」 Wa Minnグループ会長 / ミャンマー元日本留学生協会会長 ミン・ウェイ(Mr. Myint Wai)【2013/10/17】

講演日時:2013年10月17日、於:東海大学校友会館

平成25年度 国際情勢講演会
「ミャンマーから見た日本と、アジアの未来~元留学生の声」


Wa Minnグループ会長 / ミャンマー元日本留学生協会会長
ミン・ウェイ(Mr. Myint Wai)

ミャンマー元日本留学生協会(MAJA)の活動
 私は55年ほど前の1959年、日本の文部省(当時)奨学金で来日し、大阪で1年間日本語を学んだあと、東京工業大学へ進学した。東工大は、当時国立大学で唯一経営工学が学べる大学であった。東工大では、後に学長となられた松田武彦先生から経営工学とものづくりを学び、また外国人学生担当で後に文部大臣となられた永井道雄先生からは、日本のすみずみを良いところも悪いところも自分の目で見て、帰国してから国のために尽くすようにと指導を受けた。東工大を卒業したあとは、穂積五一先生が理事長をされていた海外技術者研修協会(AOTS)の奨学金で東芝のコンピューター・センターでプログラミングを学び、1967年にミャンマーへ帰国した。
 欧米に留学した学生でミャンマーに戻ってくるのは2割程度だが、日本で学んだ留学生は、7割以上がミャンマーに帰国し、国のために働いている。私もその一人だが、国のために働くよう教えてくれた松田先生、永井先生、そして穂積先生は、今でも私にとって人生の師である。
 ミャンマーは1948年にイギリスの植民地から独立し、1962年に軍事クーデターで社会主義政権が樹立されるまで、民主主義の道を歩んでいた。私の学生時代には民主主義を謳歌していたが、日本留学を終えて帰国したときには軍事政権による社会主義国家となっていた。しかし私たちは、どのような時代でも、国のために働くべきことを日本で学んだ。
 そしてミャンマーは今、再び民主主義の道を歩み始めている。日本へ留学するミャンマーの学生たちの送別会で、私はいつも「日本へ留学したら良いことも悪いことも経験し、必ず日本の精神を学んでミャンマーに帰ってきてほしい」と言っている。ミャンマーにとって、日本の考え方や技術、ノウハウが最も重要だと私たちは考えている。
 1950年代に日本の戦時賠償で造られたミャンマー最初の水力発電所は、その後、社会主義時代に部品入手が困難となり、停電が頻繁に起きていたが、現在はミャンマーのインフラも改善されつつある。
 我々元日本留学生は、ミャンマーのほか、ラオスやカンボジア、ベトナム、タイ、シンガポール、マレーシアなど東南アジア各国でも元日本留学生会を作り、日本の技術やノウハウを自分たちの国のために生かそうと、一生懸命活動している。ミャンマーの元日本留学生協会(Myanmer Association of Japan Alumni, MAJA)では、日本の文化をミャンマーに紹介したり、日本語を教えるなどの活動を行っている。約1500人の会員がおり、ミャンマー人の学生が日本へ留学するための支援をしているほか、ミャンマーにいる日本人のお世話もしている。かつてお世話になった日本の人達に恩返しをしたいと頑張っている。
 我々が毎年日本大使館から委託を受けて実施している日本語能力試験には、今年4200人が受験した。1級~5級の試験を行っており、毎年60~70%の人達が合格している。合格した学生達は日本へ留学したがるが、奨学金が少ないのでチャンスが限られる。日本の文部科学省が出してくれる奨学金では、毎年十数人程度しか日本へ送ることができない。お金を持っている親は私費留学生として子供達を留学させることができるが、日本では学費や生活費が高いため、その数はあまり増えていない。その一方で、日本語を学ぶ学生は年々増えてきており、今年の日本語能力試験の受験者数は、昨年より35%増えた。この数は来年以降、さらに増加するだろう。我々MAJAはまた、日本大使館と協力して、日本の大学の入学試験も行っている。このほか日本企業からビジネスマンが来てミャンマーでセミナーを行いたいというような場合にも、お手伝いをしている。

ミャンマーのビジネス・チャンス
 日本の人達がミャンマーで会社を創る場合には、登録が必要となる。登録は日本語や英語だけでなく、ミャンマー語ができ、ミャンマーのビジネス社会について知識がある人がいれば、やりやすくなる。我々MAJAはこのような仕事ができるミャンマー人を訓練し、日本企業に紹介している。
 我々も日本で勉強したので、日本へ留学した学生がミャンマーへ帰ってくるのは、国にとって良いことだと信じている。2、3年前までは「ミャンマーに帰っても仕方ない」、「軍事政権のためには働きたくない」という学生もいたが、最近は日本で勉強した後、すぐに帰国する学生が多くなっている。これらの学生は、ミャンマーで日本企業のお手伝いができると思う。今のミャンマーでは、ビジネスの機会が非常に多くなった。現在は民主主義制度のもと、大統領もクリーンな政府の実現に向けて、一生懸命やっている。日本の人達はミャンマーに行って、どのように仕事をすれば良いのか、すぐわからないかもしれないが、ミャンマーでよい相手を見つければ仕事は必ず成功する。中国や韓国がミャンマーで利権を独占する前に日本のビジネスマンに早くミャンマーに来てほしいと望んでいる。
 私自身はミャンマーで、金の採掘や、いろいろな仕事をやっている。錫やタングステン鉱山の経営、金の精錬、縫製業、ホーロー製品の生産、ステンレス製品の生産、住宅建設、都市開発事業など、様々な仕事をやっている。少し手を広げ過ぎだと思う方も多いと思うが、今のミャンマーにはビジネスの機会が多過ぎるほどある。ミャンマーで仕事をしたいと思う日本の皆さんは、専門知識やお金を持っていれば、すぐに良い機会をつかむことができるだろう。
 私の会社はミャンマー南部のダウェー港開発プロジェクトにも関わっている。ここは深海港で、数年後に完成するが、大型船の係留が可能となり、タイやメコン地域を視野に入れたビジネスが広がる。シンガポールの脅威になるかもしれない。ヤンゴン近隣のティラワ工業開発区には、安倍首相も見にきてくれたが、ダウェー深海港はさらに将来性がある。現在我々が請け負って進めているダウェーとタイを結ぶ道路が開通すればミャンマーからタイ、ラオス、カンボジア、ベトナム、中国へと、非常に良い輸送ルートができる。日本の皆さんがよくご存じのティラワとこのダウェー深海港を比べたら、ティラワはダウェーの規模の8分の1程度である。ティラワ港では今、工場団地を造り始めており、三井物産や住友などの会社が入る予定だそうだ。ミャンマー人は、錫やタングステンなどを掘って、中国とミャンマーの国境まで運んで中国人に売っている。中国人がそれを買って製錬し、日本や世界中に売っている。うなぎも、中国人がミャンマーで買って中国で育てて日本に売る事も多いらしい。先日ミャンマーのうなぎがほしいという日本の方がMAJAを尋ねて来て市場調査をしてそのことを知ったので、これからはもっと日本が鉱山開発にも関わり、また日本でミャンマーから直接買い付けたうなぎが食べられるのではないかと思う。

ものづくり大学設立に向けたMAJAの活動
 MAJAには、1943年から1944年にかけて南方特別留学生として日本で学んだ元留学生も参加しており、アウン・サン・スー・チー氏の父親であるアウン・サン将軍とも関係がある。MAJAはもともと彼らの時代に作られた。1957年に再び日本から奨学金が出るようになり、MAJAが活動を再開したが、その後ミャンマーは社会主義軍事政権の時代となり、具体的活動は禁止されていた。しかし、2001年に当時の小泉純一郎首相から「ミャンマーでも元日本留学生の会を作れば良い」とアドバイスをいただき、新たなMAJAが生まれた。
 MAJAの活動については今後、拡大していかなければいけないと思っている。ミャンマーは現在、再び民主主義になったが、私の年代は1948年~1960年の12年間民主主義を経験している。そのような人達が、まだミャンマーには残っている。これらの人達は貿易のやりかたもわかっており、市場開放経済となった現在、一生懸命、仕事をしている。
 首相就任前の2012年に安倍晋三首相がミャンマーを訪問された際、「日本から帰国した元留学生たちが何をしているのか知りたい」ということで、私が挨拶に行き、MAJAについてお話しした。そして首相就任後の今年2月と5月にもお会いする機会があり、MAJAがものづくり大学を創ろうとしていること、特に環境エンジニアリングを中心にやっていきたいということをお伝えした。安倍首相からは、「政府開発援助(ODA)でできるのではないか」というお話をいただいた。ODAは政府間の協力だが、ミャンマーは多くの教育問題を抱えており、我々としても民間の力でできるだけのことをしていきたいとお伝えしている。
 我々は既に、タイで元日本留学生・研修生が設立した同様の大学(TNI:泰日工業大学)を訪問してフィージビリティ・スタディーも行っており、今後2年以内にミャンマーでも同様の大学を設立したいと考えている。現在のところ、まだふさわしい土地が見つかっていないが、準備を進めている。今はMAJA センターというインスティテュートがあり、ここで日本語のほか、産業やビジネス・マネージメント、日本の習慣などを教えている。日本では安倍首相の夫人も、ミャンマーの教育に関心を持ってくださっている。外国からの支援をいただき、様々なノウハウの提供や技術移転と直接投資を受けることができなければ、ミャンマーの発展は遅れてしまうだろうと思う。

(敬称略 / 講師肩書は講演当時 / 文責:貿易研修センター)


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