平成25年度 第3回-1 国際情勢研究会 報告1「中国のエネルギー事情」(独)石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC) 調査部 エネルギー資源調査課 主任研究員 竹原 美佳 (たけはら みか) 【2013/06/07】

日時:2013年6月7日

平成25年度 第3回-1 国際情勢研究会
報告1「中国のエネルギー事情」


(独)石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)
調査部 エネルギー資源調査課 主任研究員
竹原 美佳 (たけはら みか)

1. 世界最大のエネルギー消費国、中国
竹原 美佳 中国は現在、世界最大のエネルギー消費国で、2012年の一次エネルギー消費は36.2億トンだった。一方、中国では2015年までに国内総生産(GDP)1万元当たりのエネルギー消費を16%削減し、2020年までにさらに削減する目標を設定している。目標が達成された場合、中国の一次エネルギー消費は、2020年には石油換算で28億トンになるとみられる。
 また、二酸化炭素(CO2)排出に関しても、2020年にGDP単位当たりで2005年比40~45%削減するという目標を設定している。2005年のCO2排出量は57億トンだったので、目標が達成された場合、2020年には85億トンとなる。2005年に比べて総量は増えるが、GDP単位当たりでは削減される。現在、世界最大のCO2排出国であり、2011年のCO2排出量は89.8億トンで、世界全体の排出量の26%を占めていた。
 中国はまた、世界最大の産炭国かつ消費国であり、2009年に純輸入国になった。昨年は2.3億トンの石炭を輸入している。石炭供給では、内モンゴル自治区の西部、山西省、陝西省の三西地域が全体の6割を占める。輸入依存度はまだ6%で、石油や天然ガスと比べて輸入比率は低い。インドネシアとオーストラリアから5割程度を輸入しているが、輸入相手先は多様化しており、モンゴルやロシア、南アフリカ、コロンビアからも輸入している。
 石炭については現在、神華、中煤など大手7社のシェアが全体の3割を占め、残りは地方の郷鎮企業だ。多数の小規模な炭鉱があるが、国有の大手企業による規模拡大や合併によって集約化がはかられている。ただ、地方の炭鉱企業は炭鉱を閉鎖しても別の場所で生産するため、供給過剰になっている。国際エネルギー機関(IEA)によれば、今後、石炭の需給ギャップは石油やガスほど拡大しない見込みで、供給過剰は短期的な問題とみられる。
 石油については、中国は世界5位の産油国である一方、米国に次ぐ世界2位の石油消費輸入国となっている。昨年の輸入比率は6割近く、純輸入量は568万バレルだった。一方、米国では最近、シェールオイルの生産が増えたことで輸入比率が下がっており、早晩、中国が世界最大の石油輸入国になるという見方が出ている。中国の石油産業は、三大国有石油企業による寡占状態だ。三大石油企業では、陸上の油ガス探鉱開発をしている中国石油天然気集団(CNPC)と上場している子会社のペトロチャイナ(Petro China)が、主に探鉱開発業務を行っている。精製最大手は中国石油化工集団(シノペック、Sinopec)で、その子会社、シノペックコープ(Sinopec Corp)が中核事業の精製等を担っている。さらに海洋で探鉱開発をしているのが中国海洋石油総公司(CNOOC)で、その子会社、シーノック・リミテッド(CNOOC Limited)が、実際の探鉱開発業務を行っている。ペトロチャイナについては、売り上げ、純利益等が、欧米の大手メジャーに引けを取らない規模になっている。産油国の国有石油企業ということで、政府から独占的に油ガスの炭鉱開発等を許されているため、純利益等も大きい。石油については現在、ガソリンや軽油の消費が増えている。消費の4割は輸送部門で使われており、さらに拡大していくと見られる。
 中国では1980年代、1つの省に1つの製油所という体制であったが、1990年代からは沿海地域で近代的な製油所を建設し、昨年末時点で精製、処理能力が1300万バレルを超えている。さらに2017年には、1800万バレル程度に拡大していく見通しだ。稼働率については、以前は90%ぐらいあったが、現在は80%と徐々に落ちてきている。製油所については今後、供給過剰の状態となりそうだ。またサウジアラビア、ロシア、イラクからの供給が増えていくとみられる。中東の原油をミャンマーから、ロシア、中央アジアの原油を陸路のパイプラインで入れるといった動きもある。さらに北米地域ではオイルサンドを開発しているので、長期的にはそれが海を渡って来る可能性もある。遠いので経済性は良くないが、ブラジルの深海で大型の油田が見つかっており、その原油が来る可能性もある。ただ、どちらかというと、現在の主要な供給国からの供給が増えていく可能性が高い。

2. 天然ガス消費の拡大とシェールガス
 天然ガスは現在、一次エネルギー消費の5%程度を占めている。都市ガスに3割、産業向けに3割、輸送用に1割の天然ガスを使っている。そして、発電に使われるのは2割弱だ。現在はアジア最大の天然ガス消費国で、世界4位の液化天然ガス(LNG)輸入国になっている。輸入比率は石油ほどではないが、拡大している。2006年にLNGの輸入を開始し、2010年には中央アジアのトルクメニスタンからパイプラインによる輸入を開始した。昨年12年にはウズベキスタンからも、天然ガスの輸入を始めている。
 現在は沿海部にLNG受け入れ基地を建設しており、パイプラインの建設も進めている。LNG基地は稼働中の6基地があり、まだフル稼働できている状態ではないが、能力としては2280万トン分が稼働している。2020年ころには建設計画中のものも立ち上がり、受け入れ能力は5000万トン体制、天然ガス換算で年約650億立方メートルとなる見込みだ。天然ガスについては2020年時点では3000億立方メートルの消費に対し、国産ガスの供給は1750億立方メートルとなり、需給ギャップが1250億立方メートルになるとみられている。現在の需給ギャップは400億立方メートル程度なので、追加で850億の需給ギャップが出現することになり、現在の2倍、新たに天然ガスを輸入しなければならない。このため現在、多数のLNG基地やパイプラインを建設している。
 ロシアや中央アジアからのパイプライン建設を進めており、ロシアについてはまだ交渉中だが、年内には妥結するかもしれないという期待がロシア側で高まっている。さらに国内のガス供給についても、開発に余念がない。2011年には米国のエネルギー情報局が、中国でもシェールガスの資源量が膨大だというレポートを発表している。ここでは36兆立方メートルという数字が出たが、中国で実際に開発しようとしているシェールの資源量は8.8兆立方メートル程度という見方が有力だ。ちなみに現時点の天然ガス確認埋蔵量は3.1兆立方メートルなので、2.5倍に増える、という状況だ。
 シェールガスの生産目標は、政府と企業でかなり異なっている。また米国のように中国でも「シェールガス革命」が起きるのではないかという質問を受けるが、私は難しいと考えている。土地取得が問題化しており、適地を探すのは容易でない。人口密度の高い村が近くに存在するということも、往々にして起きる。地質で言えば、埋蔵深度が4000mより深いところでは経済性は悪くなるが、中国ではそのようなところが多い。四川では若干浅めで1500~2000mのところがあるので、やりやすいところでまず知見を高めていこうとしている。シェールガスを開発するメリットとしては、大気環境汚染のような環境問題への対応や輸入依存度を低減する効果がある。しかし、中国では天然ガス価格が低く設定されているため、今後シェールガスがたくさん市場に出ても、米国のような製造業復権や「シェールガス革命」は起きないとみられる。また現在、タイトサンドガスの規模開発を始めたところで、まだシェールガスの時期ではない。

3. 発電設備の効率化と増強
 中国はまた、世界最大の発電大国である。2012年の発電電力量は4兆9774億kWである。大部分が石炭火力であり、水力が2割弱、水力を除いた原子力・再生可能エネルギー比率が4%程度だ。2002年12月に発送電事業を分離している。国家電力監督管理委員会というものがあったが、今年3月、国家エネルギー局に統合された。現在は五大発電公司と二大送電会社による供給体制となっている。
 8億kWほどある火力の発電設備容量の大部分が石炭火力だ。現在、石炭火力の効率化をはかっており、超臨界圧や超超臨界圧の発電所の導入を進めている。さらに、石炭ガス化発電(IGCC)についてもパイロットプラントを稼働している。小規模な石炭火力の淘汰による効率化もはかっている。また風力発電設備の増強が進んでおり、太陽光も2020年に向けて、500万から2500万kWへと拡大していく計画だ。ただし、風力や太陽光の発電を増やせば周波数が不安定になるので、揚水等のバックアップとなる電源の開発も進めている。水力については、ピーク調整の要であり、夏場の需給ギャップの際に稼働率を高めるためにも期待されている。さらに、原子力の建設ラッシュも続いている。現在、15基が稼働しており発電電力量は2%と小さいが、さらに30基を建設中だ。
 発電設備は2012年の約11億kWから、2020年に18億kW程度に増やす計画である。非化石の発電に占める割合については、2012年は水力を含めると28%で、水力を除くと7%だが、2020年には水力を含めた非化石の発電は28~35%、そして水力を除いた原子力や風力等は13~16%で、再生可能の比率を高めていく計画である。ガス火力については、東南の沿海地域で建設を進める計画だ。ただし、電気料金制度が今後の電力やエネルギー需給の大きな不確定要素になっている。電力価格制度改革はなかなか進まないが、今年、計画価格と市場価格という二重価格制度が廃止され、市場価格に一本化された。これによって、適切な電源開発がなされることが期待される。
 石炭火力は圧倒的にコストが安いので、天然ガス火力の伸びは当面緩慢なものとなる。現在、CNGという圧縮天然ガスやLNGを自動車などの輸送燃料として利用することが始まっている。天然ガス価格が、軽油等の石油製品に比べて3割程度安く設定されているため、天然ガス自動車の改造費を入れても、1年や2年でコストが回収できてしまい、需給双方に有利な自動車向けの天然ガス供給が増えていくとみられる。長期的には、石油の需給にも影響が出てくる可能性がある。

(敬称略 / 講師肩書は講演当時 / 文責:貿易研修センター)

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担当:総務・企画調査広報部