平成26年度 第2回 アジア研究会 報告 「東京海上グループのアジア事業のご紹介」東京海上ホールディングス株式会社 海外事業企画部 新興市場マネージャー 浜田 慎二郎 (はまだ しんじろう)【2014/07/29】

日時:2014年7月29日

テーマ『変貌するアジア:その2 ~アセアン統合、指導者交代を踏まえつつ~』

平成26年度 第2回 アジア研究会 報告
「東京海上グループのアジア事業のご紹介」


東京海上ホールディングス株式会社
海外事業企画部 新興市場マネージャー
浜田 慎二郎 (はまだ しんじろう)

1. 東京海上グループの海外事業
 東京海上日動は日本で最初の損害保険会社として1879年に設立された。4つの事業ドメインを持ち、主業である国内損害保険事業は東京海上日動と日新火災他が行っている。1996年からはグループとして生命保険事業に参入し、あんしん生命を立ち上げた。そして海外保険事業があり、また、金融事業やリスクコンサルティング、介護事業、メディカルサービス(医療関連)に関係する事業がある。
 その歴史を簡単に振り返ると、1879年の設立と同じ年に、上海、香港、釜山に代理店を設立した。翌年には、パリ、ロンドン、ニューヨークでも営業を開始している。そして1914年には、日本で最初の自動車保険を発売した。その後は第二次世界大戦の期間中に一旦、海外事業から撤退したが、戦後は日本企業の海外進出が進むにつれ、海外展開を再度拡大した。1996年には生命保険事業に参入したほか、2000年以降は再保険事業を拡大し、更には新興市場、欧米市場でもM&Aを通じた非日系ビジネスを拡大中である。2002年には持ち株会社である東京海上ホールディングスを設立し、2004年には東京海上と日動火災の合併を経て、現在に至っている。
 東京海上ホールディングスにグループの海外事業を統括する海外事業企画部があり、ここで海外事業を(1)北米、(2)欧州、(3)再保険事業、(4)中南米、(5)中東、(6)アジア・オセアニア、(7)中国・東アジアに分けて経営管理を実施している。また、より現場に近いところで経営管理や戦略策定を行うことを目的に、TMNA (Tokyo Marine North America)、TMK(Tokyo Marine Kiln)、TMME(Tokyo Marine Middle East)、TM Asiaという4つの地域統括会社を設立している。TM Asiaについては、9ヵ国・地域が傘下にある。中国や台湾、韓国は、日本の本社直轄になっている。
 海外保険事業の展開においては、2000年までは主として海外に進出する日系企業向けのビジネスが中心だったが、その後は非日系ビジネスへの参入を加速させている。新興市場では2007年にシンガポールとマレーシアで損保・生保の両事業を営むAsia General Holdings社を買収するなど、損保、生保会社を幾つか買収・新規設立し徐々に規模の拡大に取り組んできた。また、欧米市場でも2008年にロイズのシンジケートの1つであるキルン社、そして米国のフィラデルフィア社を買収し、さらに2012年には同じく米国のデルファイ社を買収し、段階的に規模を拡大してきた。TM Asiaは2002年に設立され、アジアにおけるローカル・ビジネスへの参入を推し進めている。
 東京海上の海外事業ではオペレーションのローカル化が徐々に進み、現在はローカルの従業員が2万6000人程に達している一方で、日本から派遣される駐在員の数は260人程に抑えられており、言ってみれば駐在員の数を海外事業に携わる社員の1%に抑えて海外事業を営んでいることになる。2003年には、グループ全体の利益に占める海外の割合は4%程度だったが、2000年以降、徐々にローカル・ビジネスへの参入を推進した結果、2007年にはその割合は21%に増え、2013年には半分程度を占めるようになっている。これはもちろん、規模の大きいキルンやフィラデルフィア、デルファイを買収した結果でもある。地域事業別の内訳を見ると、アジア地域は売上、利益とも20%程度で、欧米市場が70%程度になっている。このため、北米リスクが高くなっており、海外事業のポートフォリオのバランスをよくするためにもアジアでしっかり成長する必要があると考えている。

2. 今後の成長が期待されるアジア事業
 アジア諸国では、インドネシア、インド、シンガポール、タイ、マレーシアといった国々が高い成長を誇っているが、それらのマーケットの規模自体は、欧米や日本と比べてもまだまだ大きくはない。但し、長い目で見ると新興市場自体は将来的にマーケットが持続的に成長することが期待されており、そのために当社もアジア事業に力を入れている。TM Asiaには現在、100人程の従業員がおり、主な任務はアジアの各事業に対する経営管理、ガバナンス、サービス、サポートとなっている。
 TM Asiaの傘下には14社あるが、これらの経営管理とガバナンスを担っているアジアの現地法人は規模的にまだ小さな会社が多く、従業員が100人に満たないところも多い。このため、保険事業を営む上で最低限必要となるスタッフや部門を充分に自前で抱えることが難しい場合もある。その場合には、TM Asiaから各現地法人をサポートしている。アジア地域の戦略面では、M&Aのほか、銀行との販売提携をどのようにするかといったこともTM Asiaで検討している。
 アジア地域のグループ会社では、インド、タイ、マレーシア、インドネシア、シンガポールには損保と生保事業の両方がある。それ以外の香港、ベトナム、フィリピン、オーストラリアは損保事業のみ。他には保険クレーム・サービスの会社などもあるが、損保・生保の保険事業では14社になる。これらには東京海上がメジャー・シェアで経営権を所有している会社と、マイナー・シェアで経営権はなく、パートナーに経営を委ねている会社がある。地域統括会社も入れると15社になるが、このうち11社には日本人以外のローカルの社長がいる。元は日本人の社長がほとんどだったが、2000年以降のローカル・ビジネス拡大に伴い、徐々にローカルの社長を増やしていった。アジアでは2000年以降、買収を繰り返し、ローカル事業を増やした。以前はアジアにおける売り上げの7、8割は日系ビジネスだったが、2013年度にはこれがほぼ逆転し、ローカル・ビジネスの割合が7~8割、日系ビジネスの割合は2~3割程度という状況になっている。
 他の地域の海外事業と比べたアジア事業の特徴としては、まず欧米との比較において、保険マーケットがまだ小さく、オペレーションも規模が小さいことが挙げられる。このため、本社やTM Asiaからのサポートの必要性は非常に高い。2つ目に、現地パートナーの存在がある。欧米にはジョイントベンチャーの会社はなく、すべて東京海上が経営権を有している。しかし、アジアでは現地の規制や歴史的経緯があり、パートナーと組んでいる会社が多い。このため、パートナーとの関係は非常に重要だ。3つ目に、一言でアジアと言っても、人種、宗教、言語、制度、社会の発展の度合いは多様だ。この点は地域統括を行うTM Asiaでも、非常に苦労している点だ。

3. グローバル人材育成への取り組み
 東京海上ではグローバル人材の育成にも取り組んでいるが、まだ道半ばである。よく言われるが、保険は目に見える商品ではないため、人材が最も重要な資産だと考えている。従来は「国内の人材で」と考えられていたが、事業のポートフォリオから見ても、国内人材、海外人材問わず、適材、適所、適時による人材配置をしていかなければ、事業の成長は続かないと考えている。その一方で、既存の人事制度との関係や、日本人社員のマインド・セットをどう変えていくのか、そして日本人以外のローカルスタッフと企業文化や価値観をどのように共有していくのかという点にも現在、取り組んでいる。
 2000年以降、海外事業の拡大を目指す中、求められる人材も変化し、派遣する駐在員には保険知識と共に外国人との意思疎通がよくできる人材などが求められるようになった。同時に、優秀なローカルスタッフの確保も課題となった。2010年には、ホールディングスの海外事業企画部内に、グローバル人材開発グループを設立した。
 ローカルスタッフは、2000年には2000人程度だったが、2013年には2万5000~6000人に増加している。グローバル人材育成に向けては、日本人のみならず、海外のスタッフを含め、ジュニア層といわれる人材を様々な研修などを通じて育成しようとしている。さらに、将来、各現地法人、事業会社の経営層を担えるような層をミドル・シニア層と位置付け、研修やローテーションなどを通じ、日本人、外国人を問わず、育てようとしている。国内ジュニア層育成策の一環で2012年から始めた取り組みとしては、入社3年目の全国型/総合職を対象に、期間は短いが2週間程度、海外拠点に派遣している。
 また、海外ローカルスタッフを対象とした研修では、年3回ぐらい、20人程度に集まってもらい、座学だけでなく、ディスカッションやディベートを行っている。プログラムの最後には東京本社へ来てもらい、役員との意見交換もしてもらう。一方、ジョブローテーション制度は導入して間もない制度で、基本的に海外のローカルスタッフを国内に呼び、本社で東京海上の文化を理解しながら働いてもらう。ただ、お客様として来てもらうのではなく、個人が持っているノウハウを広くシェアしてもらうため、このような取り組みを始めている。本社の社内環境は日本語になっているため、苦労する場面も多いが、言葉より数字をよく使う部署に配置するなどし、少しずつ取り組みを広げている。社長と話し合う機会も設けるなどして、東京海上の企業理念や文化を理解してもらおうと努力している。

(敬称略 / 講師肩書は講演当時 / 文責:貿易研修センター)

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担当:総務・企画調査広報部