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シリーズ:日本の力 ― グローバル化する中小企業 (No.1) 1万件の海外展開相談から読み解く最新動向とグローバル化成功のヒント 株式会社Resorz 代表取締役 兒嶋 裕貴【配信日:2016/07/29 No.0257-0258-1017】

配信日:2016年7月29日

シリーズ:日本の力 ― グローバル化する中小企業 (No.1)
1万件の海外展開相談から読み解く最新動向とグローバル化成功のヒント

株式会社Resorz 代表取締役
兒嶋 裕貴


 海外ビジネス支援プラットフォーム「Digima~出島~」では6年間で1万件の海外展開相談を受けて来ました。実際に多くの相談を受けてきた立場から、2015年度の「日本企業の海外展開動向」と「海外展開時に念頭におくべき大前提」に関してまとめました。


 弊社は2009年から「海外展開する企業を1万社創る」という使命を掲げ各種の海外展開支援事業を行っており、中小企業から上場企業まで多くの企業からの海外展開の相談を受けてまいりました。
 その数は2016年6月時点でおよそ1万件になり、おそらく民間企業としては最も多くの海外ビジネス相談を受けてきたのではないかと思います。

 まずは弊社がどのようなスタンスで海外展開支援事業を行っているのか、簡単にご紹介しましょう。

 海外の現地情報をどう入手すればいいのか分からない、展開する国の事情を知りたい、展開先のパートナー企業をどう探せばいいのか分からないなど、中小企業が海外展開を検討する際には様々な障壁や問題が出てきます。初めて海外に展開しようと考えている中小企業は、こうした障壁を乗り越えなくてはなりませんが、情報もなければノウハウもネットワークもないのが実情でしょう。

 海外ビジネス支援プラットフォーム「Digima~出島~」では、海外展開をしようという企業ニーズに応えるべく、世界130カ国の海外展開支援企業の中から、優良な700社超の提携先企業をご紹介し、ビジネスマッチングを行っています。

 このほか、海外ビジネスニュースやコラムなど最新の海外情報・ノウハウの配信をはじめ、アレンジ視察の手配や実践的な海外ビジネスセミナー・海外ビジネスイベントなども積極的に企画・実施しています。

 このような海外展開支援サービスをワンストップで提供できるようなプラットフォームを構築し、日本企業の海外ビジネスのハードルを下げるのが我々の使命です。

 今回のコラムでは、実際に多くの海外ビジネス相談を受けてきた立場から、(1)日本企業の海外展開動向、(2)海外展開時に念頭におくべき大前提に関してまとめさせていただきました。

【最新の日本企業海外展開動向】

 弊社では毎年、「Digima~出島~」に寄せられる相談をもとに、企業の海外展開の傾向を「海外進出白書」としてレポートにまとめています。ここではその中からポイントを抜粋し、海外展開のトレンドを紹介します。

 2015年に寄せられた海外ビジネス相談件数は2000件を超えました。業種の傾向では、小売業の増加が目立ちます。海外展開の目的が「(製造業による)コスト削減のための工場設立」などから、「海外の旺盛なマーケットを狙った販路拡大」にシフトしているためだと考えられます。さらに、海外展開を検討する日本企業の69%、約7割が中小企業(従業員規模100名以下)という結果にも注目です。以前は大手企業がするものだった「海外展開」ですが、中小企業による海外展開の検討が非常に活発になっていることがうかがえます。

 次に、相談企業が展開先として検討する国を見ていきましょう。
 2015年、展開先として最も人気を集めたのは中国です。尖閣問題以降は、カントリーリスクや人件費の高騰を背景として製造業による展開の減少が続いていたのですが、2015年度は1位に返り咲きました。政治的リスクは依然としてあるものの、14億人という巨大マーケットは、小売・サービス業などにとっては十分に魅力的だといえます。また「爆買い」と称された訪日中国人観光客の旺盛な消費力を通して中国の魅力的なマーケットを再認識した企業も多いようです。

 今回2位となったタイは、AEC(ASEAN共同体)の主導国になることが有力視されています。さらに、中国とバンコクを結ぶ南北経済回廊や、ベトナムとタイ、その他周辺国をつなぐ南部経済回廊や東西経済回廊は、すべてタイを通ります。タイのバンコクは陸路インフラのハブ化が進んでおり、タイへの展開を考える企業の中には、タイを足掛かりに東南アジア全体への展開を見据えている企業も少なくないのです。また、タイはアジアの中でも日本人が特に多く暮らす国です。長期滞在者などを含めるとタイには10万人以上の日本人がいるといわれます。こうした現地の日本人マーケットを狙った相談も非常に多く寄せられています。タイには「製造拠点としての展開相談」と「マーケットを狙った展開相談」がバランス良く分布しているといえます。

 相談企業が展開先に考えている国は、アメリカを除いた上位9カ国がアジアでした。この結果から、ASEAN諸国を中心としたアジア地域への展開を希望する企業が多いことが浮き彫りになったといえます。

 次に海外展開を検討している企業への「アンケート調査」から展開企業の実態を見ていきます。
 海外展開先の国選びの基準・ポイントについて聞いたところ、「国としての成長性」と「市場の大きさ」が上位に挙がりました。「人件費の安さ」「土地・不動産の安さ」「法人税など税金の安さ」などを基準に挙げた企業もありますが、その数は決して多くありません。この結果にも、海外展開目的の変化がよく表れています。前述しているとおり、以前は、海外展開=「コスト削減」という目的が強い傾向にありました。しかし、現在は「市場として魅力のある国かどうか」が展開国の人気を高める大きな要因となっています。

 次は「海外ビジネスをする上での大前提」についてお話します。

 まず一つ目は、「日本での成功モデルにとらわれ過ぎない」ことです。
 日本式や日本の成功モデルにこだわり過ぎて、現地パートナーや従業員との関係性が上手くいかない、現地マーケットに受け入れられない、事業が軌道に乗らなかったということは多々あります。
 考えてみてください。「外資系企業が日本にやってきて、現地での成功モデルをそのまま展開し日本でも成功を収めた」そんな話聞いたことありますか?ほとんどないのではないかと思います。
 「海外」や「アジア」とひとくくりにしても、国によって宗教や慣習、文化、歴史が違うのです。ビジネスモデルや働き方がそのままま受け入れられるとは限らないのです。
 海外ビジネスで「こうすれば成功する」という正解はなく、必要なのは、寧ろ「調整力」。日本での成功モデルにとらわれ過ぎずに現地にあわせて「調整」していくことが何よりも大事です。

 そして2つ目は、「企業トップ自らが現地に直接赴くこと」です。成功するために最も大切な条件ともいえるかもしれません。
 海外ビジネスでは、優良なパートナー企業と関係を構築することが重要となりますが、パートナー企業からの条件提示に対して、素早く対応できる企業のほうが有利に交渉を進められます。韓国や台湾など、日本以外の多くの企業は、決裁権を持ち合わせている人が直接展開先に出向きます。
 しかし日本企業の場合、決裁権を持ち合わせていない人が対応することが多く、すぐに判断が下せないことから時間的なロスを生み、結局、他国の企業に先を越されるケースが多いのです。海外ビジネスでは、決裁権を持った人が現地に直接赴き、経営判断と同時に事を進めることが成功の可能性を高めるのです。

 3つ目は「『リスク』の捉え方」です。
 海外の企業トップと話をしていて気づくのは「リスクの捉え方」の違いです。
 漢字にしてみると分かるように危機の「危」はリスクですが「機」はチャンスを表します。
 彼らは「今やれば失敗するリスクもあるが、やらないことのリスクのほうが大きい」と考え果敢にリスクに向き合います。「リスクヘッジをすればチャンスである」という企業と「リスクがあるからやらない」この差が海外展開の成功を分けます。

 4つ目は「展開先の国を愛せるか」
 データには出ていませんが、展開先の選定は、その国や国民性との相性や好き嫌いなど、感覚的な部分が大事です。国が違えば文化や歴史、民族の違いによる様々なギャップが生じますから、いざ展開する際にはある程度の寛容さ=その国を愛せるかが必要になってきます。
 「その国で儲けてやろう」「安い労働力を使ってコストを削減しよう」という思いは、現地の人材にも必ず伝わります。そのような企業より「この国のマーケットで食べさせてもらっている」「あくまでも我々は外から来ていて恩返しをしたい」と、真摯な姿勢で事業をしている企業の方が実際現地で成功しているように思います。

 最後に、これから海外展開・海外ビジネスをする日本企業は益々増えていくでしょう。その中で海外展開する企業は「これからの日本を背負う心意気」「日本にどう貢献できるか?」というマインドもあわせて持つべきです。
 これからの日本の行く末を考えると海外展開はもはや企業だけの命題ではなく、日本国家の命題になります。
 自社利益のみではなく、日本の国益を考えられるか。これからの世代のことを考えられるか。
 その為に自社で得たノウハウやナレッジ、失敗の経験を共有できるか。これから起こるであろう大航海時代に、日本企業は一丸になって互いに協力できるか。これこそが1万社の日本企業が海外で成功するポイントになると考えています。

参考(日本語)
■「Digima~出島~」
『海外進出白書(2015-16)』(ダウンロード無料)
■メディア掲載:
(朝日新聞紙面)(PDF)
(日本経済新聞)(PDF)
(日経産業新聞)(PDF)

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