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シリーズ:「インバウンド観光推進」(No.4) 交流観光の展開で外国人を呼び込め! ~秘境と呼ばれる山間集落で新しい観光への挑戦~ 一般社団法人そらの郷 事務局次長 出尾 宏二【配信日:2017/02/28 No.0264-1034】

配信日:2017年2月28日

シリーズ:「インバウンド観光推進」(No.4)
交流観光の展開で外国人を呼び込め!
~秘境と呼ばれる山間集落で新しい観光への挑戦~

一般社団法人そらの郷 事務局次長
出尾 宏二


 秘境と呼ばれる徳島県西部エリアで、インバウンド誘致を通じて、集落という空間で地域と交流する経験や時間を、新しい地域資源として地域づくりと産業構造の転換にチャレンジしている。


【交流こそが、新しい地域資源】
 「そらの郷」と呼ばれる、高い山の山腹に集落というコミュニティを築き、山の民として暮らす人々の世界観は、訪れた者が、そのライフスタイルに共感し、自身の価値観の見直しの契機になるなど、啓発的な感性価値が内在している。
 徳島県西部の「にし阿波」と呼ばれる地域に点在する「高地性集落」では、伝統的な農業文化や習俗が色濃く残っており、地域に暮らす人々との交流を通じて「山の暮らし」の知恵に触れ、共感の波紋が広がっている。
 この啓発的な価値を新しい地域資源として、地域の人々と訪問者の交流を前提に、感動を共感する時間と空間の創造を通じて「地域づくり」を進めているのが、日本版DMO候補法人としての「一般社団法人そらの郷」である。

 「そらの郷」は、2008年に「にし阿波~剣山・吉野川観光圏」として、官民の関係者による協議会を設け、地域の観光ブランド確立のための事業を主体的に実施する組織(プラットフォーム)として設立された事業体であり、着地型旅行商品の開発、プロモーション、教育旅行などの受入れ窓口となってきた。

 国が示した観光先進国への国づくりの施策「明日の日本を支える観光ビジョン」では、2020年まで訪日外国人4000万人という数値目標も設定された。
 地方においても、インバウンド誘客を含めて観光による地域づくりを積極的に進めているが、地域の実情に呼応した誘致戦略と、地域住民に寄り添い、訪問者とともに共感し得る「地域づくり」の取り組みを意識して事業展開している。

【多様な連携でイノベーションを創造する】
 もともと教育旅行の受入れ組織として活動してきた「そらの郷」では、体験型教育旅行として都市と農山村の交流を目的に、平成10年から修学旅行生による山村体験を実施してきた。
 現在は観光圏事業を展開する「にし阿波エリア(美馬市、三好市、つるぎ町、東みよし町)」の全域に拡大し、年間約4000人の修学旅行生を「農家民泊」で受入れている。
 当地の教育旅行の体験は、吉野川ラフティングや、茶摘み、芋堀りなどの自然と向き合う山の暮らしの家業体験を通じて、交流を目的として用意されており、単なる農林業体験や収穫体験とは異なり家人との心の交流が魅力である。
 日頃の生活そのものを体験する内容は、教育旅行だけでなく、訪日外国人向けの体験プログラムとしても開発し、インバウンド誘致のコンテンツとしてプロモーション展開している。
 つまり、観光事業者だけが、誘客事業を展開するのではなく、農家や住民もが幅広く参加して「地域ぐるみ」訪問者を受け入れる土壌を拡大しつつある。

【感動共感ビジネスで地方の産業構造を転換】
 「にし阿波」の地域で共有する理念は「次世代に繋ぐ魅力ある地域の創造」である。
 この山村の原風景の中で、集落の人々との交流は、欧米を中心とする外国人旅行客の高い関心を集め、アメリカの自然科学雑誌「ナショナルジオグラフィックトラベラー」のテーマ性の高い日本ツアーとして、「ゴールデンルート+にし阿波2日間滞在」というコースで、2013年から現在まで継続して年間6団の催行・販売が続いている。
 まさに、欧米豪の訪日外国人が、地方に求める「経験ストーリー」のひとつが、地域の人々との交流であり、感動を共感する時間と空間という啓発的な価値である。
 これは、訪日外国人のみならず、国内旅行においても、大学ゼミ、専門学校の合宿など教育旅行の分野や、企業のCSR活動にも「地方におけるコミュニケーションツーリズム」の展開という新しい価値を創造し、地域ビジネスとして新たな可能性やポテンシャルを見出している。
 中山間地域の集落という空間が、これまでの観光では提供されなかった「感動」という資源を生み出しており、「にし阿波」地域の農業を主体とした1次産業の高付加価値化(6次産業化)に拍車をかけている。
 少子高齢化がいち早く進む地方の山間地域にあって、産業の高付加価値化や交流ビジネスの創造により、産業構造の転換を進め、雇用の創出や定住の促進を進めている。

【より多様な連携を目指して】
 「にし阿波」では、2市2町と県(西部総合県民局)、観光事業者、商工団体、交通事業者、NPO等の官民で組織された協議会組織が合意形成の場として機能し、地域DMOとして「そらの郷」が主体となって事業を推進している。
 官民が理念を共有し、密に連携して観光による地域づくりの戦略策定や、実務的なランドオペレーションやプロモーションを進めていることが、この地域の地域力になっている。
 県・市のメンバーも民間事業者と一緒になって、海外にも足を運びセールスを行った結果、インバウンドにおいては、香港からの宿泊者数は、4年間で5倍の約5,000人と大幅に増加した。外国人宿泊者数全体では、2015年に1万5,000人と、8年間で15倍にまで増えている。
 「そらの郷」では、多様化する観光スタイルに対応する、地域独自の伝統文化や自然、地域住民との交流など新しい観光資源として活用する体験型観光に、観光事業者のみならず、農家や商工業者や、住民などが多様な連携を展開している。
 山間の地に次々と外国人観光客が訪れている背景には、民間事業者と行政との強力な連携体制や、異分野での連携が地域資源を発掘し、新しい価値や創造する機能があるからだ。

 インバウンドに関しては、全国13エリアの観光圏が共通コンセプト”Undiscovered Japan”(まだ見ぬ日本)を共同で世界に向けてプロモーションする全国観光圏推進協議会プロジェクトに参加し活動の幅を広げている。
 また、地域づくりに関しては、観光圏の枠組みを活用し、地域住民の間でネットワークを構築する「あわこい(にし阿波で過ごす濃い時間)」と称する体感プログラムの事業展開を行っている。
 また、教育委員会や地元高校と勉強会やシンポジウムの開催、伝統農法の調査やシンポジウム、大学、専門学校のゼミの受入れなど、広域かつ異分野での連携を積極的に進めている。

 高齢化が進む中にあって、農林業の生産拡大よりも、伝統的な自然循環農法で生産されたオーガニックな特産品の発掘、在来種が多い雑穀類の復活栽培など、付加価値を高める取り組みとともに、その価値を認める消費者が集落を来訪して食事やお土産を購入し消費する「交流を前提とした流通」を目指した「食と農の景勝地」づくりにも主体的に関わっていこうとしている。
 数多くの訪日外国人が当地に求める価値は、おもてなしや高級なグレードではなく、地域の人々との交流であり、地方の日本人の暮らしの中へ分け入る体験であり、訪問者と地域の人々とが感動を共有する時間と空間の創造こそが、観光圏事業における「にし阿波」の観光ブランディングであると確信するに至っている。

http://nishi-awa.jp/soranosato
http://www.undiscovered-japan.com/

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