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シリーズ:日本の力―グローバル化する中小企業 (No.3) 滋賀大学 小さな企業の海外展開ビジネスモデル構築に向けて 国立大学法人滋賀大学社会連携研究センター 特任教授 近兼 敏【配信日:2017/03/31 No.0265-1038】

配信日:2017年3月31日

シリーズ:日本の力―グローバル化する中小企業 (No.3)
滋賀大学 小さな企業の海外展開ビジネスモデル構築に向けて

国立大学法人滋賀大学社会連携研究センター 特任教授
近兼 敏


 滋賀大学は「小さな企業が海外販路を開拓出来るモデル」を作ろうと、香港で商談会を開催するなど、大学ならではの一味違ったサポートを留学生や香港の大学と取組んでいる。


はじめに
 大学が海外で商談会を開催する。何故?と思われる方は多いと思います。
 滋賀大学は経済学部、教育学部、データサイエンス学部(平成29年度開部)の3学部からなる国立大学で、社会連携研究センターは産業振興分野、生涯学習分野、公共経営分野に分かれて大学と地域を結ぶ役割を担っています。海外での商談会は産業振興分野の事業として、滋賀県内の小さな企業が人口減少や高齢化により減少する売上を海外市場でカバー出来ないかと考え、平成27年度より取組み始めました。
 大学が製品づくりに関わることは多いのですが、販路を支援することは稀だと思います。しかし、実際には販路を支援して欲しいのが企業の希望であり、経済学部でマーケティングなどの知識を学ぶ留学生らが、その知識をビジネスに活かせる場として取組み始めたのが「小さな企業のための低コスト・低リスクの海外展開ビジネスモデル」です。

滋賀大学 講義 1. 香港への取組み
 最初に進めたことは、滋賀県の特産品と言われる食品を「香港」に紹介することでした。香港は世界で一番多く日本の食品が輸出される地域で日本の食品が溢れています。
 関税がない品目が多い、食品の輸出条件が少ない、輸送距離が短いことから海外への販路を求める小さな企業にとっては取組みやすいと考えたからです。ただ、他の日本の食品との競合になることから、香港の人に気に入られる商品の調査と開発が必要だと思っていました。
 「蔵元藤居本家」(代表 藤居鐵也氏)は海外に新たな販路を求めたいと本事業をスタートする時からお話しがありましたが、香港には数百種類以上の日本酒が輸出されており、特徴のある高級な日本酒でないと販売は難しいと言われていました。そこで、アジアの留学生が同社の日本酒を数種類試飲し、味、瓶の色、パッケージなど様々な意見を出し、さらに、中国、台湾、香港からの訪日観光客約100人に中国人留学生がヒヤリング調査を実施しました。

 日本酒は日本人の生活の中で日本人の嗜好に合わせて作られたものですが、アジアの国々の生活習慣、気候、食事、嗜好は日本と同じではありません。調査では、訪日観光客の約80%が滞在中に日本酒を飲んでいて、「甘い方がいい」、「白酒と比べて薄く感じる」など色々なことがわかりました。そのデータをもとにして、中国、台湾、ベトナムの留学生が同社の仕込みにも参加して、アジア向けの日本酒「琵琶の舞」が出来ました。
 今後、香港の商社を通じて香港で販売される予定で、新聞各紙やNHK WORLDでも紹介されました。今までの日本酒は主に日本料理向けでしたが、中華料理に合う、ロックで飲めるという新たな日本酒の楽しみ方をすすめる予定です。

2. 低コスト・低リスクの海外展開ビジネスモデル
 商談会に参加した企業は家族経営がほとんどです。香港コンベンション・アンド・エキシビション・センターでは年間数十回の展示会が開催され日本企業も数多く参加しています。こうした展示会に出展するのも一つの方法ですが、出展方法や商談に慣れていない小さな企業にとっては、費用負担も大きく取引が出来ても、輸出手続、輸送方法、売上代金の回収など様々な課題があります。
 香港は家賃が高く、店舗やレストランは客席を多くするためにバッグヤードはとても小さく、在庫を余り持たずに発注も数個単位が普通だと言われています。このことは、小さな企業にとっては1社と取引出来て小ロットを輸出すればいいと考えにも繋がります。
 小ロットならリスクも小さく、徐々に取引先を増やしていくと共に、貿易についてのノウハウを身に付けながら、他の国にも輸出を拡大していけば良いということになります。
 本学も大きな展示会や商談会を行うノウハウも資金もありませんが、年間に数社程度なら支援することは可能です。市場調査のための「現地デパート・スーパー等の視察」「展示会視察」と香港商社等数社と面談する「商談会」を選択して、現地集合・現地解散で参加出来るようにして実施しています。ですから参加者は参加するプログラム、日数が違います、日常の仕事の合間に、無理なく、経費負担を少なく、市場調査と販路を検討することを目的に行っていて、商談会では商談と共に、商品の評価や改善点などを聞くことが出来ますので、その時は取引に出来なくても、次に繋がるようにしています。
 この商談会も小さな部屋を借り、過去に日本での商談会などに参加した香港の商社やスーパーなどをリストアップして本学の留学生がメールで参加依頼を行う、通訳として香港で日本語を学ぶ大学院生も協力するという手作りの商談会なので、成果も少なく試行錯誤が続いていますが、色々なノウハウが本学も参加企業も身に付いてきました。

商談会 3. 香港の大学との取組み
 香港は外食率がとても高い地域で、キッチンなしのマンションもあります。それだけにどんな食品が好まれて購入され、調理されているのかも調査しなければ売れるかわかりません。2016年は、香港城市大學専上学院で日本語を学ぶ学生60名と滋賀県の企業が一緒にワークショップ「マーケティング・カフェin香港」を開催しました。
 自社商品を紹介し、試飲・試食を行いながら香港で売るための味、パッケージなどをグループで討議しました。これから香港で商品を販売したいと思う企業にとって、若い消費者の様々な情報・提案が収集出来ると共に、香港の若者の日本に対しての考えを知る機会となる有効なプログラムとなり、継続的に開催したいと考えています。

4. これからの取組み
 生活様式や嗜好の違いから日本では売れるが海外では売りにくい商品も多いので、現地のニーズにあった商品の調査・製造から販売に繋がる支援をしたいと考えています。
 来年度から、市場調査、商談会・ワークショップに加えて、デザインを学ぶ香港の学生と伝統産業企業が一緒に製品づくりをするプログラム、香港のレストランでの試飲・試食会、テスト販売など新しい取組みも検討しています。
 本学の学生や香港の学生が関わり、自分たちの学んでいる知識を活かして企業の海外展開を支援する大学らしい「小さな企業のための低コスト・低リスクの海外展開ビジネスモデル」は拡がりつつあります。

集合写真

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