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ベトナムでの環境ビジネス展開を探る~OJTを通じた人材の育成~ Team E-Kansai 技術コーディネーター 西崎 柱造【配信日:2017/03/31 No.0265-1039】

配信日:2017年3月31日

ベトナムでの環境ビジネス展開を探る
~OJTを通じた人材の育成~

Team E-Kansai 技術コーディネーター
西崎 柱造


 ベトナムのビール工場で具体的な環境保全技術及び環境に優しい生産技術の習得等を目的としたOJT研修を実施し、概ねその目標は達したが、今後新たに研修すべき課題もいくつか見つかった。


1. はじめに
 経済成長が続くベトナムでは、環境分野での法制度の整備が進んでいる。包括的な「環境保護法」が1994年に施行された後、2005年、2014年に改正されている。しかし、法制度の執行面では、各省庁の権限・役割分担の不透明性、環境管理について専門性を有する人材の不足等の課題を抱えている(注1)。
 また最近では、企業活動による環境汚染が社会問題化するケースがみられる。2016年4月にベトナム北中部地方沿岸で発生した製鉄所建設に伴う排水汚染問題では、ハノイ、ホーチミン等主要都市での抗議デモにまで発展した(注2)。
 その結果、政府が企業の違法行為に対する取り締まり強化を表明する一方で、企業側にとっても、環境分野の法制度の遵守は自社のイメージを守るうえで重要になっている。特に、消費者との距離が近いとされる食品・飲料を製造・販売する企業にとっては、環境分野への取り組みが喫緊の課題になっている。
 ベトナムの食品・飲料業界では、ビール業界の成長が注目されている。ベトナムの2015年のビールの消費量は世界11位(2014年は9位)、アジアでは中国、日本に次いで3位となっている。また、国内の生産量は、2015年10.3%増(前年比)、2016年9.3%増(同)と高い伸びを示しており、ビール産業は成長著しい産業のひとつになっている。さらに、ビール販売の国内シェアは、SABECO(サイゴン・ビール)が40%、HABECO(ハノイ・ビール)が20%と、国営企業2社で60%を占めているが、ベトナム政府は、2017年末までに、政府が保有するこれら国営企業2社の全株式を売却する方針を発表しており、欧米、日本の業界から注目されている。
 生産量が増加しているビール工場では、環境に与えるインパクトも大きく、環境法制度の遵守の重要性を理解し、規制に対応できる意識の高い現場スタッフの育成は急務となっている。

2. OJT研修の概要
 こうしたなか、一般財団法人貿易研修センター(IIST)と経済産業省近畿経済産業局とが共催し、関西・アジア環境・省エネビジネス交流推進ファーラム(Team E-Kansai)及び公益財団法人地球環境センター(GEC)の協力の下、「ベトナム社会主義国におけるOJTを通じた環境保全に関する現場人材の育成」事業として、ベトナムで成長著しいビール業界の生産工場の現場で働く技術者に環境保全技術のOJT研修を実施した。
 生産工場等の現場で働く担当者を対象に、日本企業(キリン(株))の協力も得て、環境意識の向上、具体的な環境保全技術及び環境保全に優しい生産技術の習得を通じて、現場のニーズをすくい取る形での環境保全に係る産業人材の育成に取り組むとともに、日本の優れた環境技術の現地普及を促進させ、結果として現地の水環境の改善・保護にも寄与することを目的とした。
 研修は、2016年10月25日~27日の日程で、ベトナムビール・アルコール・飲料協会(VBA)とTeam E-Kansaiの協力のもと、ハノイビール(HABECO)のメーリン(Me Linh)工場で実施した。メーリン工場は、ハノイ市内にあって郊外に移転を迫られている本社工場に代わって、同社の主力工場となる予定。

研修工場(ベトナム)

研修工場

研修日程概要(ベトナム)
 研修には、HABECOやサイゴンビール(SABEC0)などVBA傘下の13工場・事業場から26名が研修に参加した。
 研修終了後、参加者から、以下のような自工場の改善点や導入したいと考える技術等があげられた。

研修風景(座学)(ベトナム)

研修風景(座学)

研修風景(実習)(ベトナム)

研修風景(実習)

自工場改善点  排水処理に関しては、今回多くの研修参加者から「UASB処理法」(注3)、「排水規制強化対策、特にCOD、リン及び色度対策」、「クリーナープロダクションの導入」(注4)といった課題に興味が示された。なかでも、UASB処理の結果発生するバイオガスについては、副産物の利用や省エネルギーと大きく関係するものであるが、現在は焼却のみでエネルギーとしての再利用等はこれからといった状態であった。
 副産物・廃棄物の処理に関しては、工場における廃棄物分別収集法や副産物の活用事例を紹介したが、なかでも、ビール粕や発酵粕(余剰酵母)の処理法や再利用方法については、多くの工場から採用を検討したいとする意思が表明された。本テーマに関しては、講義中にあまり質問は出なかったが、研修後に実施したアンケート調査の結果から、高い関心を持たれたことが判明したものである。
 省エネ対策について、新興地域においては、「省エネ=設備導入」と短絡的に捉える傾向が強い。しかしながら、ベトナムでは既に設備導入も進んでおり(実際に講義を行った工場は世界的に見ても最新の工場であり、標準的な省エネ設備は既に導入されていた。)、今後は日本式の「カイゼン」が大きなポイントとなってくると考えている。

(注1)
「ベトナムにおける環境汚染の現状と対策、環境対策技術ニーズ」(環境省)2016年4月1日
「改訂環境保護法(2015/01/01施行)等の環境法規の動向について」(ジェトロハノイ事務所)2015年3月
(注2)
「北中部の魚大量死、台湾企業が建設中の製鉄所の排水が原因‐5億ドル賠償を約束(ベトナム)」通商弘報ジェトロハノイ発2016年8 月8日 
(注3)
省エネかつ高効率な新しい嫌気性生物処理技術。嫌気性微生物により、コンパクトな設備で高速処理するのに最適な技術。
(注4)
低環境負荷型の生産システムの構築を目指すもので、環境リスクの低減、天然資源の保全、有害原材料の除去、技術改善への取り組み等、省エネ、生産コストの低減化を図る。

関連ページ
平成28年度(近畿地域):ベトナム社会主義国におけるOJTを通じた環境保全に関する現場人材の育成



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