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モンゴル「ジェットコースター経済」との付き合い方 (1) 公益社団法人 北海道国際交流・協力総合センター 調査研究部 研究員 吉村慎司【配信日:2017/04/28 No.0266-1042】

配信日:2017年4月28日

モンゴル「ジェットコースター経済」との付き合い方 (1)

公益社団法人 北海道国際交流・協力総合センター 調査研究部 研究員
吉村慎司


 モンゴルと北海道の間でビジネス交流促進の動きが盛んになってきた。企業人の往来、両地域でのイベント開催などが相次ぎ、実際の契約に結びつく例も出てきている。この記事は本266号と次267号(2017年5月31日配信)の2回に分けて掲載します。


 2016年度は、モンゴル国と北海道の間で経済交流の機運が高まる年度になった。貿易研修センターが経済産業省北海道経済産業局との協力で実施した「北海道におけるモンゴル国との経済産業連携構築推進事業」により、両地域の官民交流がかつてない頻度・規模で行われた。本稿では、年度を通して事業に参加した立場から、事業内容の紹介を交えながらモンゴル経済の現状と展望を記してみたい。

【1】モンゴルの概要
 ほとんどの日本人にとって、「モンゴル」という国名には聞き覚えがあるだろう。そこから連想されるのはおそらく遊牧、草原、相撲、もしくは天幕型住居のゲルなどではないか。だが首都ウランバートル中心部を歩くとこのイメージは崩れることになる。そこは、ブランドショップやファストフード店が入った高層ビルが並び、道路は溢れんばかりの自動車群でいつも渋滞している、発達した100万都市だからだ。

首都ウランバートル中心部

首都ウランバートル中心部

 モンゴルはかつてソビエト連邦から強い影響を受ける社会主義国だったが、1990年に資本主義に移行した。当初は社会全体で混乱が続き、貧困から生まれる「マンホール・チルドレン」など暗い話題も知られることになった。だが近年の様子を見れば、1人あたりGDPは4000ドル弱(2015年、世界銀行)と、一般的に中所得国と呼ばれる水準にまで成長している。以前はODA等でひたすら日本から支援するのが実態だったが、このところは両国に利益をもたらすような、特にビジネス面での関係発展が期待されている。

 経済面におけるモンゴルの特徴はどのようなものだろうか。キーワードとして、以下の3つを挙げたい。

a) 鉱物資源頼み
 モンゴル経済のエンジンは地下資源である。石炭、銅など豊富な地下資源を採取して外国に輸出するところから冨が生まれ、消費や税などを通して国民に分配されていく構図だ。JICA(国際協力機構)公開資料によると、2015年の産業別名目GDPに占める鉱業の割合は17%(速報値)。分野別には卸・小売に並ぶトップだった。
 現状では、資源輸出の好不調がそのまま国内景気に直結する。輸出にとって重要な要素は、相手国におけるニーズの多寡だ。また国際的な資源価格相場の影響を受けるのはもちろん、モンゴルの通貨と外国通貨との為替相場にも損益を左右される。自国ではコントロールしきれない要素に振り回された結果、モンゴルのGDP成長率は2009年は対前年マイナス1.3%、2011年は同17.3%、2015年は同2.5%と、ジェットコースターのような上下動を見せている。モンゴル政府は安定的な経済成長のために、産業の多様化をめざしているところだ。

b) 中国・ロシアに挟まれた内陸地
 南に中国、北にロシアという地理条件は、モンゴルの貿易にとって大きな悩みだ。仮にこの2カ国以外の国と貿易するとしても、陸路である限りどちらかを経由しなければならない。どちらにしても通過する日数とコストがかかる上、輸送品質の管理も難しい。
 この結果、モンゴルの貿易相手は中国・ロシアに偏りがちだ。JETRO資料によれば、2015年のモンゴルからの輸出先は中国が87.9%と圧倒的。前の項目で触れた、鉱物資源の輸出先も大半が中国である。あえて単純化して言うなら、中国がモンゴルの石炭を買わなければモンゴル経済が停滞する、という構造だ。
 片や輸入は、中国からが33.8%、ロシアからが29.6%で、2つの隣国で6割強を占めた。貿易に関しては2カ国、なかでも中国に依存する部分が強いことがわかる。

モンゴル地図 c) 極端な首都一極集中
 モンゴルの国土は日本の約4倍の広さだが、全人口は310万人強にすぎない。このうち半分近い約130万人が首都ウランバートルに住んでいる。人口2位以下は10万人レベルの市が複数ある程度で、地方の中核市であってもその多くは10万人に満たない。
 遊牧生活をやめ、働き口を求めて地方から首都に移住してくる人の流れは絶えない。そうした人たちは、市郊外に確保した土地にゲルを組み立て、あるいは木造の小屋を建てて住んでいる。このいわゆる「ゲル地区」は市の周縁部で拡大の一途をたどっており、もちろんガスや上下水道インフラの整備は追いついていない。冬になるとゲルや小屋で暮らす数万世帯が一斉に石炭ストーブを使うため、市内では数メートル先がかすむレベルの深刻な大気汚染が起こっている。
 首都といえど仕事は限られている。貧富の差は大きく、大きなマンションに住んで高級車に乗る市民と、ゲルに住む市民とが共存しているのが現状だ。
(267号(2017年5月31日配信)につづく)

冬季の煙害(ウランバートル市内)

冬季の煙害(ウランバートル市内)


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