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新シリーズ「AI/IoTの活用から生まれる新たなビジネス」 人とテクノロジーによる衣服生産のプラットフォーム~ シタテル株式会社 代表取締役(創業者)河野 秀和【配信日:2017/06/30 No.0268-1048】

配信日:2017年6月30日

新シリーズ「AI/IoTの活用から生まれる新たなビジネス」
人とテクノロジーによる衣服生産のプラットフォーム

シタテル株式会社 代表取締役(創業者)
河野 秀和


 衣服生産における全体最適化(好循環化)に向けて、積極的なIoTやICTを用いた先進性や、イノベーティブな取り組みが必要となってきます。


衣服生産のプラットフォーム

 シタテル株式会社は衣服生産のプラットフォーム事業として、インターネットを通して多くの事業者(下図赤部分)と縫製事業者(下図青部分)等のそれぞれのデータベースを整備し、最適なものづくりの環境を提供しています。その背景には衣服産業が大きな変革期を迎えている局面(パラダイムシフト)であると考えられます。

衣服生産のプラットフォーム 急速なデジタル化が進むファッション市場とものづくりの現場

 現在、アパレル・ファッション市場において、消費者の趣味趣向は多様化し、欲求の変化を反映させた「少量・多品種」の提案や、ニッチではあるものの、マス・カスタマイゼーション(パーソナライズ)化された提案など「消費者がコモディティ化しない為の様々な販売のチャネル」の構築が必要になってきています。

 例えば、シャツやスーツなどは自分のサイズにあったものをカスタムオーダーで1枚からつくれる事業は以前からありましたが、数年前からそれをインターネット上でオーダー出来るようなサービスも徐々に増えてきました。また、今後はAIやビッグデータなどテクノロジーを活用し、ソーシャルメディア上で交わされるファッションに関する会話(情報)をデータ化するなど、消費者の行動を分析するための「トレンド予測」などをファッションに反映させるなど、急速な「デジタル化」への対応が必要とされ始めています。

 一方で、それを支える「ものづくりの現場(生産)」の方もデジタル化が急務とされています。川中に位置する「縫製工場」もその一つ。地方に点在する中小零細の縫製工場は大手メーカーや総合商社、単独ブランドなど特定された取引先の「依存度が高い状態」にあり上記のようなマーケット変動に加え、海外への生産拠点の移転、為替変動による繁閑の調整や生産インフラとしてのICT化の遅れなど、様々な課題が山積しています。

 国内の縫製工場の数が30年前と比較して3分の1程度に縮小していることもあり、様々な課題を解決するためには、まず特定の取引の依存率を下げ、インターネットやテクノロジーの有効活用などにより「間口」を広げる環境を作り「自社の生産環境にマッチした」複数の新規取引、オペレーション機能の向上、小ロット生産に対応する体制の構築などにより「取引き先のポートフォリオを多層化」することで、将来の問題に対してリスクヘッジすることが出来ます。

 その中でも特に「閑散期の工場稼働率」を上げることが永年の課題となっており、シーズン性の低い案件などの生産を閑散期に当て、バランスの良い生産計画を立てることが出来ることで、縫製工場の余剰リソースの有効活用と、マーケットの課題である少量多品種の取引が効率良く「循環」し、雇用や収入の安定化を図ることが出来ることになります。

アプリを操作するパートナー工場の工場長

アプリを操作するパートナー工場の工場長

部分最適から全体最適へ向けたシタテルの取り組み

 「消費者の為につくりたい衣服を世に出せない。」という、小さな小売事業者の声から生まれたこの事業の背景には、これまでアパレル事業者の過剰な利益追及による、生産現場の海外流出や、部分最適の追求などが起因し多重構造化を引き起こしており、この産業の全体最適化のためには積極的なIoTやICTの導入などイノベーティブな取り組みが必要となってきます。

 シタテル(株)では、上記のような様々な課題に向けた検証を行い、衣服産業のものづくりの部分を「全体最適化」するためにIoTやICTを積極的に用いた3つの取り組みを行っています。

シタテル3つの取り組み

1. 衣服をつくりたい事業者への取り組み
 1つは、衣服やバッグなどアパレル製品を生産したい事業者からの様々な依頼にスピーディに対応すべく「マイ・アトリエ」というチャットツールを自社開発しました。これにより複雑な知識や準備物がなくてもスマートフォンやPCから簡単に※1シタテル・コンシェルジュとやり取りが行えるようになり、場所や環境に依存することなく衣服を生産することが出来るようになりました。
※ 1:衣服を生産するためのプロ・アドバイザー

2. シタテル・コントロールシステム
 2つ目は、全国の工場のデータベースの可視化とマッチングシステム「SCS(シタテル・コントロール・システム)」です。これまでアパレル業界の商習慣として固定取引の依存度が高い上、対応能力を可視化できていなかった全国の高い技術を持つ300の中小零細工場(2017年5月現在)の技術力、生産対応アイテム、価格帯、リードタイム、繁忙期、閑散期といった情報をデータ化することで、新規取引先からのオーダーと最適な工場とのマッチングを実現し、小ロット生産・高品質・短納期を実現しています。

3. スマート工場プロジェクト
 3つ目は、現在開発を進めている縫製工場のIoT化による「スマート工場プロジェクト」です。ここには工場へIoTセンサーやアプリケーションを導入し、稼働状況を解析し、リアルタイムで工場現場を可視化・把握することにより、よりスピーディで柔軟性の高い対応ができる「高効率なサプライチェーン構築」に向けチャレンジしています。

新しいインフラの活用方法

 以上のように、まず「つくりたい人」に寄り添い、人に違和感を感じさせないICTやIoTの活用で、より快適に生産の依頼が出来る環境が構築されてきました。

 現在ではアパレルやファッションブランドだけではなく一般の企業や自治体などから衣服生産の依頼が増え、要望に応じて縫製工場のエリアを限定した「衣服のローカライズ(地産地消)」なども実現することができます。例えば地方の百貨店から産地の生地を活用した販売・生産する企画の依頼や、地方の企業で働く人の「ワークウェア」の生産などを、地域の工場、地域に根付いた生地、地域のデザイナーを活用し「地域で補完」出来るものづくりなどの事例も増え、単に生産のためのインフラという概念に止まらず、様々なアイデアやデザイン(想像)を実現するためのインフラになりつつあります。

工場長とシタテルスタッフ

工場長とシタテルスタッフ

人とテクノロジーで紡ぐ未来

 これから「多品種・小ロット」の生産が求められる流れは急速に進むと考えられており、需要は高まる一方で、「シェアリングエコノミー」とも呼ばれる第五次産業革命と比喩されることもありますが、このような「新たなものづくりの方法」が主流になると考えられています。1プレーヤーの既得権益を守るための部分最適ではなく、産業全体がリファインする「全体最適」で、利益を循環させることが出来る事業モデルを構築していく必要があると実感しています。

 シタテル(株)では企業理念として「人とテクノロジーで紡ぐ未来」を掲げています。様々な立場の人に寄り添い「いつ・どこであっても」自由に衣服を生産することが出来るよう事業に取り組んでいます。国内初の「衣服生産のプラットフォーム」として、これから衣服産業が、よりオープンでシームレスに繋がるよう「人の手」と「テクノロジー」の活用により、「つくりたい人」と「ものづくりの現場」が幸せな状態にあることが基盤となり、衣服を手にする消費者が、そのオープンな環境で生まれる多様で個性豊かな「衣服という形をした幸せ」を享受することが出来る世界を構築していきます。

さまざまな国内の縫製工場・生地メーカーとの連携 ※ 縫製工場、生地・資材メーカー、二次加工工房など全国の生産拠点データベースから最適な工場で生産。1,000以上の工場データベース、300の連携工場、記事・資材・二次加工73社、対応アイテム70種類以上(2017年5月現在)

さまざまな国内の縫製工場・生地メーカーとの連携

※ 縫製工場、生地・資材メーカー、二次加工工房など全国の生産拠点データベースから最適な工場で生産。1,000以上の工場データベース、300の連携工場、記事・資材・二次加工73社、対応アイテム70種類以上
(2017年5月現在)


事業概要
 衣服生産のプラットフォーム事業。インターネットを通して、様々な衣服の生産を必要とする「事業者」と、ICT化の遅れなどにより優れた技術を生かせずにいる国内外の「中小縫製事業者(工場や生地メーカー等)」のデータベースを整備し、最適なものづくりの環境を提供。シタテル・コンシェルジェと呼ばれるプロスタッフのアドバイスや生産ノウハウと、国内の幅広い縫製事業者や連携工場のネットワークの活用により「短納期・高品質・小ロット」を実現し、自由に衣服をつくることができる環境を提供。

執筆者プロフィール
シタテル株式会社 代表取締役(創業者) 河野 秀和

シタテル株式会社 代表取締役(創業者) 河野 秀和
 メーカー、 外資系金融機関を経て、総合リスクマネジメント事業やシタテルの前身となる会社を設立後2013年に米サンフランシスコ・シリコンバレーにて世界の最前線のITを導入した流通システム・シェアリング事業開発など見識を高める。帰国後2014年シタテル(株)を設立。現在熊本と東京にて活動。「日経スペシャル・ガイアの夜明け」に2度出演するなど様々なメディアでも話題に。経済産業省「ファッション分野における デザイナーと繊維産地のコラボ促進のための研究会」有識者 。内閣府「地域しごと創生会議」IoTを活用した新たな企業間連携の促進代表企業。 Google「デジタル革命とそれを取り巻く規制」有識者。熊本大学非常勤講師。



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