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配信日:2004年9月15日

百貨店常識破り、無借金経営にー京王百貨店
ー中高年層に特化、ブランド品撤去ー

時事通信社
解説委員

山川 裕隆


消費が今ひとつで各百貨店とも苦戦している。そうした中で業績好調、無借金経営に転換した百貨店がある。東京・新宿にある京王百貨店だ。ターゲットを中高年層に絞り、エルメスやルイヴィトンなどスーパーブランドの売り場を撤去。これまでの百貨店の常識を打ち破り、見事成功した。

 日本の景気は上向きつつあるというが、消費はぱっとしない。2008年の北京オリンピックを控えた中国特需関連の鉄鋼や海運、デジタル家電など一部の業種は好調だが、百貨店やスーパーの売り上げは今一つだ。こうした中でも、業績好調で、この春無借金経営に転換した百貨店がある。東京・新宿にある京王百貨店だ。

  新宿地区は全国有数の百貨店間の競争が激しいところだ。ファッション百貨店として人気のある伊勢丹、百貨店の中で全国一の売り上げを誇る高島屋、今年が創業百年の老舗百貨店の三越、電鉄系の小田急百貨店と五つの百貨店がしのぎを削っている。
  この五大百貨店の年間の売上高は計5758億円(2003年度)、JR東日本系列のルミネや丸井など大型商業施設を加えると約7300億円で、売上高は日本一の地区だ。

  こうした競争の激しい地区で京王百貨店は奮闘している。同百貨店の中に入って驚くのは五十代や六十代の女性が圧倒的に多いことだ。若い層のお客がほとんどいない。
  これまでは百貨店というと、若い層から高齢者層までをターゲットにし、何でもそろえているイメージが強かった。京王百貨店は従来の考え方を一掃したわけだ。つまり、百貨店の常識を打ち破ったのだ。

  1996年10月、高島屋が新宿地区に進出した。当時、百貨店業界の関係者からは「京王百貨店は生き残れないのでは」といった声が聞かれた。それが、その声を見事打消し、「京王百貨店の生き方は立派」と同業界からは称賛されるまでになった。
  これまでの常識を変えたのは1993年に京王スーパー社長から京王百貨店に社長に迎えられた川村六郎氏だ。現在は相談役を務めている。川村氏は京王電鉄の出身だが、ストア事業が長かった。

  「従来の百貨店経営をやっていては京王百貨店は生きていけない」と川村氏は判断。高島屋が進出したのをきっかけに思い切って中高年主流の百貨店に大転換した。また、エルメスやルイヴィトンといったスーパーブランドの売り場を撤去した。

  つまり、若い層の商品やブランド品は伊勢丹や高島屋などに任せ、京王百貨店は中高年層にターゲットを絞るとともに、大衆百貨店に徹底する作戦だ。

  京王百貨店の年間売上高(2003年度は1044億円)の「約七割を五十歳代以上の顧客が占めている」(滝上良一広報グループリーダー)。最も多いのは六十歳代だ。
  参考までに京王百貨店の売上高は新宿地区では伊勢丹(2442億円)、小田急百貨店(1170億円)に次いで三番目だ。

  中高年戦略が見事に功を奏し、京王百貨店はこの五月に無借金経営に転換した。借入金残高のピークは1989年度で、161億4100万円もあった。

  京王百貨店はこれまでの百貨店経営の手法を変え、成功したわけだが、川村氏の大英断によるところが大きい。

 今後さらに「ウォーキングシューズや帽子など中高年が欲する商品の品揃えやサイズを豊富にするとともに、健康、美、快適、いやし、旅などいくつかのキーワードでの売り場も展開する」(滝上広報グループリーダー)計画だ。

  特に京王百貨店のウォーキングシューズ売り場は五十代以上の女性をターゲットに、日本有数の品揃えと売上高を誇っている。いずれにしても、同百貨店は中高年の顧客を意識した商品の開発や売り場造りにさらに力を注ぐ方針だ。


 
 
 

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