この度、経済産業省は、WTO協定違反となった米国のアンチ・ダンピング法により提訴され、賠償等の損害を被った我が国企業の救済を主な目的とした法案(アメリカ合衆国の千九百十六年の反不当廉売法に基づき受けた利益の返還義務等に関する特別措置法案:以下「損害回復法」)を、秋の臨時国会へ提出致しました。本稿では今回の立法の背景と法案の概要について簡単にご紹介致します。
1.背景及び経緯
米国1916年アンチ・ダンピング法(以下「1916年法」)は、米国内産業に損害を与える意図等を持って、ある商品をダンピング輸入(生産国での市場価格よりも実質的に低い価格での輸入)した者に対し、罰金や懲役を科し、被害者に被害額の3倍の損害賠償請求を認める法律です。我が国とEUは、同法が、ダンピングへの対抗措置として国家によるダンピング防止税の賦課のみを認めるWTO協定に違反している、として米国をWTOに提訴し、2000年9月、同法のWTO協定違反が確定しました。しかし、同法はその後も廃止されず、2000年3月に米国の新聞輪転機メーカーが同法に基づき我が国企業を米国連邦地方裁判所に提訴した案件について、昨年12月、我が国企業に約40億円相当の損害賠償を命じる評決が下されました(同裁判は現在、控訴審で審理中)。
我が国は、1916年法の廃止に向け米国政府に積極的に働きかける一方で、我が国企業の財産権を保護するため、今回の損害回復法の立法準備を進めました。その結果、11月19日(米国時間)、1916年法の廃止条項を含む法案が米国議会上院で可決・成立し、同法は廃止されることとなりました。
2.損害回復法の必要性とその概要
このように、1916年法は廃止されることとなったものの、この廃止の効力は現在裁判所に係属している訴訟案件には及ばないこととなっています。そのため、現に訴訟に巻き込まれている我が国企業が万一敗訴した場合に確実な救済を図る観点から、なおも損害回復法案を成立させることが必要です。法案が成立し、このような立法の目的が達成されることを願って止みません。
最後となりましたが、今国会に提出致しました法案の概要は次のとおりです。
(1)損害回復請求権の設定
1916年法に基づく訴訟の被告として賠償義務を負った我が国企業は、原告米国企業に対し、当該訴訟により被った損害の回復を請求できることとする。
(2)米国判決の承認・執行の拒絶
1916年法に基づく米国裁判所の判決について、我が国における効力を否定。
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