第2回 IISTアジア講演会 「アジア太平洋地域のエネルギー事情と今後の展望」(財)日本エネルギー経済研究所常務理事・アジア太平洋エネルギー研究センター所長 藤冨 正晴【2006/06/19】

講演日時:2006年6月19日

第2回 IISTアジア講演会
「アジア太平洋地域のエネルギー事情と今後の展望」


(財)日本エネルギー経済研究所常務理事・アジア太平洋エネルギー研究センター所長
藤冨 正晴

藤冨 正晴APECにおけるエネルギー需給見通しと中国の影響
 最近、APECにおいても最大の話題となっているのは、石油価格の上昇に伴いエネルギー全体の価格が上昇していることだ。過去2年間におけるWTIは、昨年8月に一旦ピークとなり、その後は高止まりの中で上昇や下降が続いた後、今年4月には75ドルを超えた。世界のエネルギー消費の約半分を占めるAPECでも、エネルギー・セキュリティーは一番の課題だ。
 2030年までのエネルギー需要見通しに基づけば、APECでは、今後も石油、石炭、天然ガスという3つの化石燃料に依存し続ける。石油、石炭、天然ガスは全体の約85%を支えており、これは将来もあまり変わらないと見られる。2030年までに最も伸びるのは石炭で、石油、ガスがそれに続く。これについては中国の影響が大きい。
開催風景 エネルギー需要の主な増加要因としては、(1)全体的な収入の増加、(2)都市化の進行、(3)工業化の進行、が挙げられる。都市の居住者は田舎の居住者よりも多くのエネルギーを使うことから、都市の居住者増大はエネルギー需要に大きな影響を与える。発展途上国における工業化も、エネルギー需要を非常に増大させる。運輸分野における自動車の普及も、1つの大きな要因だ。
 最も注目されるのは石油の輸入依存度の変化で、APEC全体では2002年に約35%だったものが、2030年には約53%に上昇する。日本は既に100%だが、中国も1993年に純輸入国に転じており、中国における石油の輸入依存度は2030年には約70%になると見られる。中国の資源・エネルギー・環境政策における重点課題は省エネの優先などで、消費原単位を2005年比で20%削減することが政策目標になっている。さらに国内のエネルギー資源の活用、エネルギー源の多様化、需給構造の最適化などを目指している。中国の天然ガスプロジェクトでは、2004年末に西東ガス・パイプラインというのが開通した。液化天然ガス(LNG)のターミナルについては、広東省や福建省で動きつつあるが、それらがどこまで動いていくかが注目される。中国の電源は圧倒的に石炭火力が多いが、水力の開発も進んでいる。原子力は、自主開発といわれる秦山の1基に加え、カナダ、フランス、ロシアからの原子炉輸入が行われている。
 アジア全体でも、電力のエネルギー源は石炭が圧倒的に多い。また近年LNGが注目されているが、その背景にはアメリカによる輸入拡大の方針がある。LNGの輸入では、現在、日本と韓国、特に日本が大きなシェアを占めているが、2020年までにはアメリカや中国でも急速に増大すると見られる。

地球温暖化対策とクリーン開発メカニズム
 地球温暖化防止のための京都議定書が昨年発効し、日本は1990年と比べて6%のCO2削減義務を負っている。温室効果ガス(GHG)は実際にはCO2だけでなく、他にも5つあるが、CO2の占める割合は、温室効果ガス全体の8割から9割と言われる。排出量が最も多い国はアメリカ、次いで中国だが、削減義務を負っているのは全体の3割程度の国だけだ。
 議定書の京都メカニズムでは、それぞれの国が国内で排出削減することを原則としながらも、国内で削減出来ない分については海外で削減、または海外から権利をもらうことを可能にしている。クリーン開発メカニズム(CDM)では、先進国と発展途上国が協力して事業を行い、発展途上国で温室効果ガスを削減出来る。普通のビジネスとして可能なプロジェクトは国連のCDMプロジェクトとして認められないが、CDMを行うことによって初めて先進国から発展途上国への投資インセンティブが生じ、新しい技術を活用して温室効果ガスを削減できる場合には認められる。
 6月18日現在、国連のCDMプロジェクトとして登録されているものは216あり、全てが実施されれば、年間6700万トンの温室効果ガス削減が可能になると見られる。削減方法については、フロンなどの焼却が半分以上を占め、次がメタンの回収となっている。 バイオマス、風力、省エネなどは非常に少なく、これは問題であるが、6つのガスのうち削減しやすいものからプロジェクトが進んでいる。また日本は特に、省エネ技術で貢献できると思われる。

APECにおけるエネルギー分野の挑戦
 APECにおけるエネルギー分野の最大の挑戦は、エネルギー、投資をどう確保していくか、そして環境との調和をどう図っていくかである。エネルギーのセキュリティー確保への最大の脅威は、輸入依存度の増大だ。石油も天然ガスも同様で、それぞれ協力が必要になる。さらにエネルギー・インフラの整備、投資が上流、中流、下流でそれぞれ必要になる。また最近は、エンジニアなどの人材不足が問題になることも指摘される。
 エネルギー効率の改善に向け、供給サイドではコンバインド・サイクル・ガスタービン(CCGT)の技術や、クリーン石炭技術、需要サイドでは、家電や自動車の燃費改善などが重要になる。バイオ燃料や新型原子炉を含む代替エネルギーの開発も同様に重要だ。また国際的な電力連携も必要で、協力が進んでいる東南アジア諸国連合(ASEAN)を模範にしつつ、北東アジアでもどのような協力ができるか議論されている。
 中国のエネルギー需要の伸びがAPEC全体を圧迫していることを、中国の人たちと議論すると、「中国が使っている石油は全世界の数パーセントに過ぎない」「日本と違って7割は国内で調達しており、文句を言う必要はないのではないか」といった答えが返ってくる。これは事実なので仕方なく、中国側も色々と苦労しながらエネルギー供給をはかっているのが現状だ。

(敬称略 / 講師肩書は講演当時 / 文責:貿易研修センター)

詳細PDF


詳細PDFをご覧いただくにはIISTサポーターズ(無料)へ登録後に発行されるユーザ名、パスワードが必要です。またご登録後は講演会・シンポジウム開催のご案内をお送りさせていただきます。
ユーザ名、パスワードを忘れてしまった会員の方はこちらからご請求下さい。

Keirinこの事業は、競輪の補助金を受けて実施したものです。



担当:総務・企画調査広報部