平成19年度 第2回 アジア研究会 ●「アジア・イノベーション・システムとR&D戦略:中国、インドを例に」政策研究大学院大学 准教授 角南 篤、●「食品企業の海外進出に伴う知的財産の課題」味の素株式会社 経営企画部 プロジェクト担当専任部長 森岡 一【2007/09/12】

日時:2007年9月12日

テーマ「日本企業のアジア事業戦略」-アジア・イノベーション・システムとR&D-

平成19年度 第2回 アジア研究会
「アジア・イノベーション・システムとR&D戦略:中国、インドを例に」


政策研究大学院大学 准教授
角南 篤

角南 篤 アジアのR&D戦略には大きく2つのポイントがある。1つは知的財産戦略をどうするかで、もう1つは研究開発戦略を立てるうえで重要になる人材と市場の動きだ。これらはどこで、どのような研究開発すればよいのかという場合、重要なファクターだ。そのような意味で、中国とインドを対比させる。
 中国のR&Dは伸びており、GDP(国内総生産)比で現在、1.5%程度ではないか。これを次の計画で2%から2.5%に伸ばそうとしている。一方、技術輸入を産業別に見ると、例えばITなど比較的R&Dで先行していると思われる分野でも、まだ相当、海外の技術を導入している。またR&Dインテンシティは医療などの分野でなく、航空宇宙などで高い。特許も件数は伸びているが、例えば発明特許の内訳を見ると、外国企業が防衛戦略的に申請している部分が相当ある。2006年に発表された国家中長期科学技術発展規画の柱は、(1)持続的発展(2)「自主」知財の獲得(3)社会のための科学技術(4)軍民両用技術などが挙がっている。自主知財をどう獲得するかというと、例えば独自の技術標準、知的財産戦略を展開するのか議論になっている。
 インドでは、今後現役を若い世代が担う。産業構造はサービス業がほとんどで、ソフトウェア産業が中心的にGDPを引っ張っている。しかし就業人口は依然、農業中心で、科学技術、研究開発の面では、この部分との連携が重要だ。また今後、製造業で研究開発を中心とした技術を高めることに政策の重点を置いている。またインドには、米国との太いパイプがある。シリコンバレーにいるインド人の研究者や企業家らがつくったTiEというグループがあり、インド各地の企業家をサポートしている。インドのイノベーション・システムの課題は、アウトソーシング中心から自らのイノベーションを強めていかなくてはならないことだ。そして国内格差や社会制度の硬直化した部分をどうするか、IT以外の分野でバランスをとることも必要だ。
 インドと中国の共通点だが、イノベーションのグローバル化に大きな影響を受けているが、その結果どうなるかはまだ不明確なところもある。相違点をあえて一言でまとめるとインドがソフトで中国がハードになるが、これもあと何年続くか関心のあるところだ。

「食品企業の海外進出に伴う知的財産の課題」


味の素株式会社 経営企画部
プロジェクト担当専任部長
森岡 一

森岡 一 日本国内の食品業界は飽和状態にあるため、海外に出ることが多くなっている。とくに日本の食品を活かせる食場面は、東南アジアで多い。一方、いろいろな問題も存在し、知的財産や生物多様性条約などの問題がある。
 味の素は1909年にいわゆる「味の素」を売り出し、その後は食品関係のほかアミノ酸からビジネスを展開し、医薬品事業もある。研究開発分野にも大きな投資をしており、アミノ酸と医薬が3分の2以上を占めている。東南アジアには1950年代に進出、中国やタイは大きな拠点だ。海外にR&D拠点は多数あるが、本当に研究開発を行っているのはモスクワと上海の2つだ。
 食品産業における知的財産以外の問題は、1つは素材、食品、穀物などの供給が不足していることだ。そしてBSEやGMO、バイオ・エタノールの問題もある。さらに安心・安全は重要な問題で、環境問題もある。知的財産ではノウハウがよくいわれる。他に生物多様性条約があるほか、食品の第二用途問題は特許分野で重要だ。また海外進出では技術流出の問題があり、食品特有のものとしては食文化の問題もある。
 生物多様性条約の中心的問題は、利益配分だ。15条の7は「利益を当該遺伝資源の提供国である締約国と公正かつ衡平に配分する」としている。さらに8条のjでは「伝統的な生活様式を有する原住民の社会及び地域社会の知識、工夫及び慣行を尊重し・・・衡平な利益配分を奨励する」としている。強制力はないが、例えばインドでは早々に条約の精神が入った生物多様性法ができた。中央政府の生物多様性局(NBA)が遺伝資源関連知的財産を全て審査する。インド人以外が遺伝資源にアクセスするにはこの許可が必要なほか、特許を出す場合も事前の承認を得なければいけない。また法律では、インド原産またはインドから取得された生物資源に関する研究結果を、NBAの事前の承認なしに外国人などに移転することも禁じている。
 中国では生物多様性条約に関する法律を今、つくっている。また特許法である中国専利法の改正も行われており、A2条では「遺伝資源の取得、利用が関連の法律・法規の規定に違反したものは、特許権を付与しない」、26条では「発明創造の完成が遺伝資源の取得と利用に依存されるものは、出願者が明細書においてその遺伝資源の出所を明記しなければならない」としている。この出所開示問題については、2010年の生物多様性条約締約国会議(COP10)までに、国際的な判断がなされる予定だ。日米はこれに反対だが、アメリカは条約を批准しておらず会議での発言権はない。EUは条件付き賛成、資源国も賛成で、日本にとって苦しい状況だ。
 食品産業は文化と密接しており、文化、伝統を尊重しなければ生きていけない。また東南アジアではとくに法的不安定が問題で、政権が変われば政策が変わり大きな変化が生じうる。

【コメント】
岡山 純子・科学技術振興機構 中国総合研究センター アソシエイトフェロー:

岡山 純子 R&Dは中国でも非常に伸びている。海外からの技術やノウハウを獲得し、逆に自分たちの技術輸出規制などもしながら自主イノベーションを目指している。またアメリカなどへの留学から帰国する人たちの数も伸びている。インドでも同様のことが起き、R&Dシステムもグローバル化している。中国の111プロジェクトは、グローバルなCOEをつくり海外と連携していくことを掲げる。また科学的発展観に基づき、持続可能な発展を目指している。生物多様性条約に関しては、国際条約を踏まえた各国の国内法がどうなるのかが注目される。

(敬称略 / 講師肩書は講演当時 / 文責:貿易研修センター)

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担当:総務・企画調査広報部