第73回-2 中央ユーラシア調査会 「カザフスタン マンギスタウ州バーチャルエンタープライズ調査研究報告」東洋エンジニアリング株式会社広報渉外部長代行 渡辺 博【2007/04/23】

日時:2007年4月23日

第73回-2 中央ユーラシア調査会
「カザフスタン マンギスタウ州バーチャルエンタープライズ調査研究報告」


東洋エンジニアリング株式会社広報渉外部長代行
渡辺 博

1. 複数企業の連携で総合力を発揮
渡辺 博 昨年、財団法人「機械振興協会経済研究所」の委託を受け、産油国における機械産業のバーチャルエンタープライズ調査研究という題目で、カザフスタン・マンギスタウ州でのバーチャルエンタープライズの実現可能性について調査したため、その報告を行う。
 バーチャルエンタープライズにはいろいろ定義があるが、一般的には複数企業が業種や国境を越えて連携し、単一企業のような総合力を発揮できるコンソーシアムといった定義がなされるようだ。なぜカザフスタンでこれを行うかと言うと、この国は太平洋側からも大西洋側からも5000キロ離れ、有力なマーケットから隔絶されている。その一方で、油田やガス田、ウラン、鉱石など資源が多い。目下、第1次産業を中心に国の経済を発展させているが、資源には限界があり、何十年か経てば彫り尽くしてしまう。したがって資源があるうちに新しい産業を始めようとしている。資源、人、物があるがマーケットから隔絶されている状況で、一番有効なのは情報通信技術を利用したやり方ではないか、ということで調査した。

2. マンギスタウ州の企業
 カスピ海東岸にあるマンギスタウ州は16万6600平米だが、人口はわずか32万人で人口密度は1ヘクタール当たり20人しかない。州都はアクタウで、これはソ連時代のシェフチェンコだ。旧ソ連時代は軍事都市で、地図にない秘密都市だった。資源は石油、ガス、リン、石炭、塩、マグネシウム、建築用の石材、ウラン鉱石など、必要なものはほとんどある。現地企業は大きく、2つに分けられる。1つは旧ソ連時代にあった軍事工場が分割された現地資本の会社、もう1つは91年の独立以降、現地に出資した外国資本の企業だ。
 最初に紹介するカスコール機械プラント社は、ソ連時代に食品工業の工場として設立されたが、独立以降は稼動しておらず、96年にようやく原油のパイプライン用のヒーター、石油採掘用の設備などをつくるようになった。一番の問題は製品規格、国際標準規格で物がつくれないことで、顧客は国内ユーザーにとどまっている。次に外資の代表として、インドのミッタルが70%、ロンドンのカンタベリーホールディングが30%を持つ会社があり、インドから技術を導入して油田から物を運ぶパイプライン用のパイプをつくっている。さらにカザフスタンのベンチャーの方がイタリアから技術を導入してパキスタンから設備を買い、製鉄所用のビレットをつくる電炉を始めた。ここは国内で製品を売るのではなく、イランやトルコなどに輸出している。
 次にうまく行っていない事例として旧ソ連時代に肥料をつくっていた会社が挙げられる。旧ソ連時代の分業が崩れて原料が入らなくなったほか、マーケットがなくなり、同じ天然ガスからつくる界面活性剤をつくってイランに細々と輸出していた。しかしこれも立ち行かなくなって倒産し、持ち主を転々とした後、アゾットという会社がこれを買収、再び肥料の生産を始めた。旧ソ連時代にはまた、各工場の幹部はロシア人で、それ以外のワーカー的なことをカザフスタン人がやっていた。したがってソ連崩壊によってロシア人が帰国したことも、工場が止まったことの要因だった。しかし今はロシア人が戻ってきており、この工場に戻ってきたロシア人も以前やっていた仕事を再びやりたいと言っていた。またプリカスピアン機械建設という会社は旧ソ連時代には機械産業の軍需工場で、独立以降は石油関連の設備やポンプの部品などをつくってきた。ここで使っているIC機器などは日本で20年前にあったような機材で、現地の石油産業に物を売り細々とやっている事例だ。
 外資の事例ではまた韓国のセウォンという会社があり、石油の精製所や石油化学プラントの圧力容器などをつくっている。ここの最大の特徴は、ASME(アメリカン・ソサエティ・フォー・メカニカル・エンジニアリング)に基づいた標準作業ができることだ。これは日本のJISのようなもので、カザフスタン唯一のASMEの認定工場だ。さらにヨーロッパの事例では、イタリアのサイペンとカザフスタンのERCホールディングスの合弁企業がある。ここではカシャガン向けの海底パイプラインを生産している。そしてシンガポールのケッペルオフショア&マリーンと、カザフスタンの50%ずつの合弁は、同じくカシャガン用のオイルプラットホームやリグなどをつくっている。

3. バーチャルエンタープライズへの支援
 これらの会社を統合し、情報技術でバーチャルエンタープライズをつくるには通信網が必要だ。カザフスタンでは東からロシア側へ幹線が流れており、支線として光ケーブルのラインがある。すでに電話はデジタル化され、電送スピードも西側に遜色のないものだ。
 またバーチャルエンタープライズで鍵となるのが、まとめ役だ。これには商工会議所を使ってはどうかということで、商工会議所を訪問した。また昨年3月にはマンギスタウ州で投資公社がつくられており、ここもまとめ役になる可能性がある。さらにコンセプトづくりには大学のバックアップも重要だが、アクタウ大学ではインフォメーション・テクノロジーが進んでおり、支援を得られると思う。
 企業間の連携モデルだが、例えば部品会社、組み立て会社、修理全般をする会社、雇用全体を取りまとめるプロジェクト・マネージメントをするような会社がバーチャルエンタープライズをつくって協力し、石油産業のお客さんに物を売ることなどを考えている。今年マンギスタウ州政府に提案したバーチャルエンタープライズは、アクタウ地域の機械工業企業間ネットワークと名前づけた。
 取りまとめ役は例えば、アクタウ商工会議所に依頼し、ICT、IPのインフラはカザフテレコムに、仕組みの構築や訓練はアクタウ大学にお願いする。さらにそれを支援する政策は、マギスタウ政府にお願いするという仕組みを考えている。今年4月には国際協力事業団(JICA)からマンギスタウ州地域振興マスタープラン計画というのが公示になり、これによって次の段階の調査が行われ、実現されていくかと思う。

(敬称略 / 講師肩書は講演当時 / 文責:貿易研修センター)

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担当:総務・企画調査広報部