第74回-1 中央ユーラシア調査会 「甘利経済産業大臣の中央アジア、中東訪問と成果」経済産業省通商政策局欧州中東アフリカ課長 増山 壽一【2007/05/14】

日時:2007年5月14日

第74回-1 中央ユーラシア調査会
「甘利経済産業大臣の中央アジア、中東訪問と成果」


経済産業省通商政策局欧州中東アフリカ課長
増山 壽一

増山 壽一 先のゴールデンウィークには甘利明経済産業相に同行して中東、中央アジアの3カ国を訪問した。今回の最大の目的は、資源外交、産業協力だった。中央アジアは1990年代以降、経済産業省として非常に力を入れてきた地域だが、経済産業相がこれらの国を訪問するのは今回が初めてだ。

1. カザフスタンにおける資源外交
 甘利経済産業相による今回の中央アジア訪問の一番のきっかけは、カザフスタンにおけるウラニウムを中心とした資源外交だった。ただしロシアにおいて資源外交という名の下、官主導で民間企業を組成してサハリン1、2などを進めてきたほか、かつてアラブ首長国連邦のアブダビにおいても官民プロジェクトを進めたものの、その結果が若干悲しいものになってきている。やはり「ウラン鉱石の価格が上がっていてウランがほしいから協力してくれ」というような一過性の協力は、長続きしない。したがって今回は、資源外交と産業協力を常にパッケージにしていくことを念頭に置いた。今回の中央アジア訪問には日本貿易振興機構(JETRO)や日本貿易保険(NEXI)、中小企業基盤整備機構(SMRJ)、国際協力銀行(JBIC)、石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEG)の理事長にも同行していただき、裾野を広げて議論することにした。
 カザフスタンは世界第2位のウラン鉱石の埋蔵量を持つ国だが、日本のウラン鉱石の輸入量のわずか1%しか占めてない。これを飛躍的に30%まで広げようというのが、今回のハイレベル官民合同ミッション派遣の意義だった。ただし「石がほしい」というだけではまた同じ轍を踏むこともあるため、総勢150人の大型官民ミッションを派遣することになった。
 商社や電力会社のトップを中心に同行していただき、石を買うという契約のみならず、日本の高度な技術、核燃料加工技術、原子炉プラント技術で協力していくことで合意した。将来的には3-4割、日本のウラン総需要の権益を確保したい。
 カザフ側は原子力の技術がほしい、軽水炉をつくるのに協力してほしいと言っている。それを受ける形で昨年の小泉首相の合意を踏まえ、大臣が現地を訪問し個別の契約約24個について合意、戦略的関係の永続化をはかっていくこととした。
 ウラン加工にはいろいろな工程があるが、旧共産圏の国々では各工程が国ごとに分断されており、ロシア以外は全ての工程を持たせてもらえなかった。したがってカザフスタンには原子力発電所がなく、その隣のウクライナにはたくさん存在する。一方、カザフスタンには石はたくさんある。原子力発電では、ウランを開発して転換、濃縮し、燃料成型加工を行ってペレットをつくるということを経て、初めて原子炉で燃える形になる。その後は原子炉、軽水路を建設して電気をつくり、そして次の世代、次の技術開発として高速増殖炉(FBR)をつくるという流れがあるが、カザフスタンでは面白いことに、ウラン開発、石はあり、燃料成型加工工場も持っていたのだが、原子炉、原子力発電所がない。そして不思議なことにFBRは古い形だが持っている。そして将来的には、フランスのような原子力総合産業を築きたいと考えている。そこに日本が技術協力し、ウラン鉱石の契約をすることになる。
 1つ面白いのが、転換・濃縮については今のところカザフスタンでさえ、自前でやる、日本に協力してほしいとは言っておらず、ここはロシアに委託することで変わりない。カザフスタンと日本の協力の1つの裏の面は、実はロシアの濃縮センターの活用、とくにイルクーツク付近にあるアンガルスクで今回ロシアがつくろうとしている国際濃縮センターにカザフスタンの会社が出資することでつながることだ。ロシアは石油でも天然ガスでもパイプラインを支配することで、相手を支配する。その影において例えばカザフスタンが日本と協力することについてはNOと言わない非常に戦略的な行動をとっている。そこの虎の尾を踏まずに、しかしパッケージとして育てるというところが今回の合意の味噌だと思う。

2. ウズベキスタン訪問の成果
 今回は中央アジアにおける2つの大国の1つで、小泉純一郎前首相も訪問したウズベキスタンも訪れることになった。ウズベキスタンは欧米から非常に厳しい対応をとられているが、欧州連合(EU)は6月に中央アジア戦略を見直すことがほぼ決まり、今回の訪問は、タイミングとしてもよかったと思う。
 カザフスタン訪問の中心は原子力やエネルギー関連で、産業協力はそれをフォローするためのものであったのに対し、ウズベキスタン訪問ではむしろ産業協力が前面にあり、その後を追って鉱物資源、石油、天然ガスという分野が続く形になっていた。
 ウズベキスタンを訪問したのは金、土、日曜日であったにもかかわらず、大統領以下、主要閣僚としっかり話をすることができた。カリモフ大統領自らが言っているのは、やはりアメリカなき後、そしてEUが引いた後、中国とロシアに頼らざるをえない自国の立場と、そうは言っても中国に対する警戒心がある中で、第3のカードとして正直なところ日本に来てほしいということだ。産業協力に関しても、ウズベキスタンに来てくれれば日本に対して特別のPSA(プロダクト・シェア・アグリーメント)を提供する、というような話もあった。
 ウズベキスタンでは地質構造調査がまだ地下100メートルまでしかなされておらず、「より深いところまで調査してもらえれば埋蔵量も増える」と言われるなど、資源に関しても深い話があった。また現在ストップしている政府開発援助(ODA)に関して、これをブレークスルーすべく甘利経済産業相にも努力してもらい、追加の円借款を出す方向で合意した。今後はそれを突破口に、いろいろなビジネスをできればよいと思う。
 ウズベキスタンでカリモフ大統領らが日本のミッションを非常に歓待したこともあり、カザフスタンではウズベキスタンとの国境近くの保養所にいたナザルバエフ大統領を甘利経済産業相が訪問し、歓待してもらったようだ。ということで、また首相なども本来ならば休みであったところを会うことができ、150人の官民ミッションの下で、24個の具体的協力案件に幹部が立ち会って契約を行った。

(敬称略 / 講師肩書は講演当時 / 文責:貿易研修センター)

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担当:総務・企画調査広報部