第77回-3 中央ユーラシア調査会 「今世紀中国セメント産業の急伸と構造調整の課題」創価大学教授 浜 勝彦【2007/07/25】

日時:2007年7月25日

第77回-3 中央ユーラシア調査会
「今世紀中国セメント産業の急伸と構造調整の課題」


創価大学教授
浜 勝彦

1. セメント生産の急伸とNSPの発展
浜 勝彦     中国のセメント生産は2000年には5億9700万トンだったが、昨年は12億4000万トンまで増加しており、6年間で約6億トンも生産が増えた。日本の生産は最高でも年間1億トンに達しておらず、今は7200万トン程度なので、日本の年産量を上回る量で中国のセメント生産が毎年増大してきたということだ。
 中国で急激に伸びているのはNSPセメント炉(キルン)の生産量で、NSPとはニューサスペンションプレヒーターの略だ。中国ではこの最新鋭の装置によるセメント生産量が、2000年に6000万トンだったが、昨年は6億2400万トンにまで伸びている。昨年のセメント生産量の50.32%は、このNSP炉による。セメントの投資実行額もまた、年々倍増する勢いを見せた。とくに2003年には101%伸び、投資は年々400億元ずつ増えている。

2. マクロ・コントロールと構造調整政策の展開
 セメント産業の利潤がどの程度かを見ると、実はアジア金融危機で需要が伸びず、1998年から2000年ごろまでは黒字でなかったが、高度成長に伴い収益が伸びた。2005年にはやや収益率が落ちたものの、非常に高い収益率をもたらしそれが投資に回っていくという好循環が生じている。そして毎年1億トンずつ、生産が伸びてきた。
 ところがちょうどセメント産業の生産が伸びてきた2003年に、中国経済全体が過熱に陥り、鉄鋼と電解アルミ産業、セメント産業の3大業種が盲目的投資拡大の元凶ということで、マクロ・コントロールの対象となった。そしてセメント業界と発展改革委員会、産業界を挙げて、マクロ・コントロールに対する抵抗運動が組織された。これはかなり成功し、2004年の8月には発展改革委員会の「鉄鋼、電解アルミ、セメント業プロジェクト整理に関する関連意見の通知」が出された。そしてセメント産業は鉄鋼、電解アルミ産業ほど重大とはいえないということになり、古いセメント炉を淘汰し、新しい日産4000トン規模以上のNSPキルンを導入するのであれば大いに発展してもよいという論理を獲得した。以降、セメント生産は大規模に増えている。
 中国では2006年に始まった11次五カ年計画でGDP当たりのエネルギー消費を毎年4%前後減らすとしたが、昨年はその目標達成に失敗し、1.23%減にしか達しなかった。そして廃棄物もマイナス2%になるべきところが、CODとSO2がそれぞれプラス1.2%、1.8%となってしまった。したがって今年はどうしても、目標を達成しなければならないとして、あらゆる手段をとっている。その方法として、今年出てきたものの1つに、セメント企業の生産規模をある程度拡大し、地域に支配的な企業を2、3つくるため集団化させることがある。各地方で主要な企業を指定し、そこには融資やいろいろな生産優遇措置を優先的に配置することが決められた。
 汚染が大きくエネルギー多消費の遅れた設備の淘汰が全く進まず、地方政府も税収で儲かるのでこれら企業をカットしないということで、中央政府は伝家の宝刀を抜き、各地方に2007、8年と、2009、10年に淘汰すべき生産能力を行政命令で通達した。淘汰すべき生産能力は全国で2007、8年には1億3640万トン、2009、10年は1億4810万トンで、あわせて2億8450万トンの生産能力を4年間でカットすることになる。要するに、市場経済から行政命令に回れ右して、計画経済の手法に戻ってしまった。すでに一番淘汰が進んでいるのは浙江省で、そこではNSPキルンの比率が85%に達している。ここでは安値競争、市場法則によってNSPキルンが85%になったのだが、全国で同様にハードランディングをやるという訳にはいかない。
 そしてもう1つ、セメントの標準を厳しくするという方法がある。P・0というのが普通珪酸塩セメント、15%程度の混合材で、一番多いのは32.5と32.5Rという規格だが、その販売を今年から禁止する。そうすると、20~30%の立ち遅れたセメント工場のセメントは売れなくなる。しかしこれについては実際には、各地方の検査機関が大目に見たりすれば通用しない。政府がいくら強力にコントロールしようとしても、中国では上に政策があれば、下には対策がある。ということで、なかなかそのとおりにはいかない。

3. 対外進出と外国資本の本格的参入
 中国では、大企業、中小企業、外資系企業がそれぞれ3分の1のシェアを占めるようになってもよいというセメント業界の意見もある。国際セメント資本と金融資本が乗り出しており、中国では海外セメント産業が乗り出して来れば生産が支配されてしまうので、むしろ国際金融資本の投資を使い、どんどん規模を拡大する方がよいと見られているようだ。しかしこれは話がうま過ぎて、危険でもある。
 残った問題としては、セメント産業では粉塵、すなわち埃やダストが排出され、2002年の段階では全工業の66.6%を占めていたことがある。現在では、30.58%がセメント産業からとなっている。他には、石炭消費が7位になっているなど、省エネ、粉塵対策の他、廃熱発電やインバーターを使った生産管理による電力節約などいろいろなことで、わが国が協力できる面も多い。
また生活廃棄物処理の決め手としても、セメント・キルンが注目されている。しかし中国ではまだまだ生活廃棄物を集中的に集めるという段階ではなく、むしろ原料として再分類、再使用していくという段階だ。日本のような静脈循環というか、生活廃棄物の循環という段階には至っていない。

  中国は海外のセメント・プラント建設にもどんどん進出しており、世界のセメント・プラント受注の3分の1を中国が占めるに至った。労働力輸出とセットで、中東の産油国にセメント企業をどんどん建てるなど、海外進出にも積極的だ。中国のセメント産業はあまりに投資で元気がよすぎて品質・管理面で足元に心配なところがある。

(敬称略 / 講師肩書は講演当時 / 文責:貿易研修センター)

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担当:総務・企画調査広報部