第9回 IISTアジア講演会 「日本の国連外交とアジア」東京大学 法学部教授 北岡 伸一【2007/03/22】

講演日時:2007年3月22日、場所:霞ヶ関 東京會舘

第9回 IISTアジア講演会
「日本の国連外交とアジア」


東京大学法学部教授
北岡 伸一

北岡 伸一各国の国連への対応
 国際社会の意思を決めるのが国連であり、各国は国際社会の意思の中に自国の意見を反映するために国連代表部をおく。国連の会議数は1万を越すといわれ、多くの委員会に委員を送り込むことは各国にとって非常に重要で、委員会の選挙は日本政府国連代表部にとっても大きな仕事であり、様々な選挙活動をする。04年の4月から06年の9月までの在任中、私は多くの国との大変密な接触を通し、どういう国がどういうことをしているのかがよくわかった。
 各国の国連代表部の中で最大規模は米国で、外交官を130人程度おいている。2番目と3番目はロシアと中国、4番目と5番目が日本とドイツである。日本の外交官は50人強、その他職員合わせて約100人である。常任理事国であるイギリス、フランスは少人数で効率的な外交を行っている。国連決議は1/192で、小国でも発言力があり、米国を例外としてほとんどの国は第一級の人材を国連代表部に送り込む。イギリスやロシアもトップクラスの人材によって国連外交を展開し、発言力を非常に大きくしている。
 日本の代表部には現在計3人の大使がいる。その下には、政務・経済・社会・行財政という4つの部と総務部があり、それぞれ公使がおり、大使3人公使5人というトップヘビーの形であるが、ほとんどが外務省の人間である。なぜ大使が3人も必要かということだが、国連では重要な会議が同時並行で開かれることも稀ではなく、重要な会合に分担して出席するには最低でも2人は必要で、3人は最適な数であろう。

国連安保理改革について
 日本では安保理改革は重要課題である。国連安保理常任理事国を一カ国だけ増やす決議は難しく、日本は常任理事国を6つ増やし、非常任を4つ増やすG4案を提出した。結局、そのG4案は可決されなかったが、その最大の理由はアフリカ問題であった。国連の決議案は加盟国の3分の2の賛成が必要で、53票をもつアフリカを取り込まないと通らない。この問題が7~8割の難しさで、あと2割くらいは中国の反対、残り1割が米国の反対で、G4案は頓挫したと思っている。
 このG4案の共同提案国に日本と関係が深いアジアの国々が入っていないことで、日本のアジア外交が問題となったが、支持はするが公然とはいえないという国もある。この意味でも中国の反対はインパクトがあった。おかげで、当然共同提案国だろうと思っていた国が公然支持国になってみたりと思惑がはずれたこともいくつかあった。ただ私は、アジアにとってG4案は非常に飲みにくい案であるにもかかわらず、アジアからの支持はトータルで言うと約3分の2はあったと思う。日本に対する信頼は十分に高いが、国連を舞台としたアジア外交で日本は、もっといろいろなことができるというのが私の実感である。

開催風景アジアの国連外交
 国連の中においてアジアのプレゼンスは徐々に高まり、現在では、アジアの53カ国が加盟し、国連に果たした役割も大きい。その一つは、06年にできた人権理事会である。アジアの中で人権に重要な関心を払っている国は日本、韓国以外にはない。私はアジアの国々をとりまとめてよく議論したが、その際、アジアはもっと人権に熱心なるべきであり、人権理事会で発言権をもっと拡大しようということになった。過去20~30年間をみて人権が向上したのはアジアではないかと思う。そういうアジアの姿をもっと国連の中に持ち込みたいというのが、私がアジアの国々を説得した論点であり、彼らの多くが共感してくれたところであった。
 独裁制から経済発展を通じ、中産階級を勃興させ、その中産階級を基礎に民主化が進行する。これをリードした国が日本であり、日本の50年代の経済援助を通じて、経済発展から人権を向上させ、やがて民主化につながったという流れがある。これはやはり国際社会の向かうべき方向ではないのかと私はよく議論した。そしてそれを国連に持っていきたいと考えたのである。

日本のODAについて
 日本のODAについてはいろいろな批判もあるけれども、世界ではこれは非常に大きく成功した例として認識されている。そもそもODAというのは非常に難しい政策で、資金の移転によって経済発展させるのは簡単にできることではないのである。いくら援助を出しても、民衆に支給がこないような国は発展しない。紛争を終結し平和を作らねばならない。 Peace Consolidation、すなわち平和を固めることが重要なのである。普通の人は戦争が終ると職場に戻って働くから、仕事がなくてはならない。そして、働くことでお金が入り、自分の生活を保障すると思うとき、人は働くようになるのである。これは実は日本の経験に根ざしたものだと私は提言している。
 欧米はどちらかというと、貧困があるとき、そこへいきなり大きな援助をするという形をとる。日本の援助は次に役立つかどうかを考慮する、より自立支援型で、例えばアフリカでの、ミレニアムビレッジプロジェクトは、アフリカの村おこしで、学校や病院をつくるとか、農業支援、井戸掘削である。また、マラリアを簡単に防ぐための蚊帳を日本の住友化学に安価で大量に作ってもらったが、これは日本政府として非常に成功した事例である。
 また、どの国も自国の利害関係で動いているのも現状であり、援助といってもどうしても武器援助といったことが多い。割合公正な立場から、どの国が本当に困っているのかを見ること、政府ではなく、地元の現場にお金が行くようにする、地に足のついた発展自助努力を通じた発展が大事だと言っているのは、日本の経験からであり、こういうことを思っていくということは非常に大事で、安保理常任理事国として、日本が入っていくのは当然であることを日本の実績もふまえて提唱してきた。ただし、日本が十分アピールし、これを利用してアジアの国々と結びつきを強めているかというとそれは不十分なことも多い。

日本の国連外交
 日本は北朝鮮の問題、イランの問題、ミャンマーの問題でも、それぞれに対する立場は米国とは明らかに違う。北朝鮮についても、実はだいぶ違っている。その日本の立場をしっかり国連に持っていかなければ、日本の声は国際社会の声として反映されない。日本が1年半もの間、安保理で活躍していたから、日本は安保理で北朝鮮制裁決議を通すことができた。そういう意味で、日本は国連での座席をきちんと確保していかないと、アジア外交において不利な立場におかれる恐れがある。

(敬称略 / 講師肩書は講演当時 / 文責:貿易研修センター)

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担当:総務・企画調査広報部