平成20年度 第34回 国際教育者招聘事業 【2008/06/22-07/02】

平成20年度 第34回 国際教育者招聘事業


概要


 IEJプログラム2008(第34回)は、2008年6月22日(日)から7月2日(水)まで、欧米5カ国の公立校教師及び教育委員会関係者41名とその同伴者7名(計48名)の参加を得て実施された。

日程:2008年6月22日~7月2日
主催:財団法人貿易研修センター
協賛:カルビー株式会社、株式会社鈴乃屋
協力機関:(日程順)
東京都品川区立立会小学校、東京都品川区立浜川中学校、明治神宮、奈良市国際交流ボランティア協会、東大寺、斑鳩ホームステイ協会、斑鳩アイセスSGG、斑鳩町、法隆寺、斑鳩町立斑鳩小学校、能楽金剛流シテ方奈良金剛会、財団法人豊田市国際交流協会、トヨタ自動車株式会社、豊田市教育委員会、豊田市立童子山小学校、豊田市立青木小学校、豊田市立猿投台中学校、豊田市立寿恵野小学校、広島平和記念資料館、浄土真宗本願寺派国際部

参加者


欧米5カ国の公立校教師及び教育委員会関係者41名とその同伴者7名(計48名)。内訳は以下の通り。
◆参加国:アメリカ40名、カナダ3名、イギリス2名、オランダ(イギリス人)1名、ベルギー2名
◆性別:女性37名、男性11名
◆来日経験:45名は初来日


派遣日系企業団代別参加人数(参加年順)
国名
地域
派遣団体名
参加人数
(同伴者内数)
アメリカ合衆国 ロサンゼルス 南カリフォルニア日系企業協会(JBA)
13 (1)
アメリカ合衆国 ヒューストン ヒューストン日本商工会
1
アメリカ合衆国 サンフランシスコ サンフランシスコ日本語補習校
1
アメリカ合衆国 ダラス ダラス日本人会
2
アメリカ合衆国 アトランタ ジョージア日本人商工会
4
アメリカ合衆国 デンバー コロラド日本企業懇話会
1
アメリカ合衆国 デトロイト デトロイト日本商工会
13 (5)
アメリカ合衆国 サンディエゴ サンディエゴ日本語教育振興会
1
カナダ トロント トロント日本商工会
3 (1)
イギリス スコットランド スコットランド日本企業会
2
オランダ アムステルダム 在蘭日本商工会議所
1
アメリカ合衆国 ポートランド ポートランド日本人商工会
2
ベルギー ブリュッセル 日欧産業協力センター欧州事務所
2
アメリカ合衆国 サンアントニオ サンアントニオ日本企業会
2
合計
48(7)

主な訪問先等


【東京】
・セミナー1 「サバイバル日本語」
講師:ジェトロ・アドバイザー 榎本昌子

・セミナー2 「日本の社会と文化」
講師:玉川大学非常勤講師 ジェニファー・カンシオ

・セミナー3 「日本の学校と帰国子女」
講師:啓明学園中学校・高等学校校長 佐々信行

・浅草
・秋葉原

・品川区立立会小学校
・品川区立浜川中学校
・(株)鈴乃屋
・明治神宮至誠館(弓道・演武見学)

1.斑鳩グループ 東大寺大仏殿特別拝観、法隆寺、斑鳩小学校、能楽練習風景の見学、ホームステイ
2.奈良グループ 東大寺大仏殿特別拝観、東大寺華厳寮、川上村、ホームステイ
3.豊田グループ トヨタ堤工場、豊田会館、トヨタ自動車(株)、青木小学校、童子山小学校、猿投台中学校、寿恵野小学校、ホームステイ


【広島】
・原爆ドーム・平和記念公園
・広島平和記念資料館
・宮島
・西本願寺飛雲閣特別参観
・金閣寺
・平安神宮
・清水寺

【京都】
・古代友禅染体験
・錦市場
・月桂冠大倉記念館

内容


・東京都品川区立立会小学校及び同浜川中学校を訪問し、参加者が本国で実際に行っている「欧米式モデル授業(デモンストレーション・レッスン)」を行った。
品川区立立会小学校

品川区立立会小学校



品川区立浜川中学校

品川区立浜川中学校

・株式会社鈴乃屋のご支援により、着物の着付け体験。

着付け体験-(株)鈴乃屋

着付け体験-(株)鈴乃屋


・明治神宮を参拝し、至誠館(武道館)で演武を見学。
・奈良市、斑鳩町、豊田市でホームステイをし、地方の生活・文化に触れ、地元の方々と交流する中で、地方の魅力を感じていただいた。
・京都、広島を訪問し、日本の歴史、伝統文化に親しんでいただきました。広島訪問にあたってはカルビー株式会社の協賛をいただいた。

デモンストレーション・レッスンとは?
 デモンストレーション・レッスンとは、IEJプログラムに参加した欧米の先生方が自国で行っている授業を日本の小・中学校でそのまま再現して行う授業のことである。通訳や日本人の先生による補助を借りずに授業を行うことで、欧米の先生方に日本の英語教育や日本人生徒への理解を深めていただき、また、日本の子供たちには「本場の英語授業」を体験していただくことを目的としている。
 本年度は、東京都品川区立立会小学校で18名の先生が45分間の授業を2コマずつ受け持ち、同浜川中学校では9名の先生が50分間の授業を1コマずつ行った。事前に、授業内容、使用する教材、進め方等についてプランを練っていただき、日本側の先生と調整を行う。本年も、英語、算数、社会、美術、体育、等の科目で十人十色の授業が実施された。


Robye Snyder先生

Robye Snyder先生
(米国テキサス州)
科目:算数
授業名:ちょうちょの競走
学年:小1、小2

Lina Horsburgh先生

Lina Horsburgh先生
(英国スコットランド)
科目:算数
授業名:スコットランドの英語
学年:小1、小2


Barbara Winkfield先生

Barbara Winkfield先生
(米国ミシガン州)
科目:英語
授業名:ヒップホップでハロー
学年:小5、小6

Dyanna Espinoza先生

Dyanna Espinoza先生
(米国カリフォルニア州)
科目:美術
授業名:ウォーク、ジョグ、ラン
学年:小4、小5


Stephanie Wachsmuth先生

Stephanie Wachsmuth先生
(米国オレゴン州)
科目:英語、社会
授業名:平和とはなんだろう
学年:中3

Christian Noyon先生

Christian Noyon先生
(ベルギー ブリュッセル)
科目:地理
授業名:ヨーロッパ文化の旅
学年:中3


参加者のコメント

・「体験できてとてもよかったです。先生方は私たちを歓迎してくれ、生徒たちもとてもすばらしかったと思います。生徒たちは礼儀正しく、熱心で、すぐに理解してくれました。(ロビー・スナイダー)」

・「今回の体験は教師にとって、アメリカに来た日本の子どもたちが体験するようなことを、逆に私たちが日本で体験できたとても良い機会でした。是非体験してみてください。(シェリ・シャノン)」

奈良県斑鳩町立斑鳩小学校

奈良県斑鳩町立斑鳩小学校


・「他の国で教えることを体験する絶好の機会でした。少し心配でしたが、やってよかったと思います。(スザンヌ・ザイマ)」

・「すばらしい体験でした。とても暖かく迎えらえ、すべての活動が楽しかったです。(ダイアナ・エスピノーザ)」
愛知県豊田市立童子山小学校

愛知県豊田市立童子山小学校


・「教育システムについて身をもって学ぶための手がかりとしてすばらしい体験でした。学校、スタッフ、管理者、生徒、すべてが最高でした。(バーバラ・ウィンクフィールド)」

・「仲間が子どもたちを教えているのを見るのは楽しいものでした。世界のどこでも子どもはみな変わらないという私の信念は間違っていなかったことを確認できました。(イアン・マン)」
愛知県豊田市立寿恵野小学校

愛知県豊田市立寿恵野小学校


・「日本の子どもたちがスコットランドに来たときにどう感じるのか身をもってわかりました。言葉の通じないここ日本に来て、自分でそれを体験することができました。(リナ・ホーズバラ)」

・外国人の先生方は、豊田市の学校の開放的な雰囲気、人懐こく生き生きとした子供たち、PTAの協力のもと地域ぐるみで教育にあたる様子に一様に感激し、本国での教育で是非参考にしたいと熱心に視察にあたっていました。
愛知県豊田市立青木小学校及び同猿投台中学校

愛知県豊田市立青木小学校及び同猿投台中学校


・「寿恵野小学校まで子供たちと集団登校した朝は、私の大切な一時でした。子供たちの安全・安心、また独立心が随所に見受けられました。(セイヤー・キナヤ)」

・「童子山小学校はモデル校でした!職員、子供たち共に素晴らしかったです。模範的な教育体験をすることができました。ワールド・クラスの学校でした(World Class that should be seen globally)!(バーバラ・ウィンクフィールド)」


エッセー

 斑鳩町で2泊3日を過ごしたアキ・モリさんに、斑鳩町での経験とIEJプログラムに寄せたエッセーを寄稿いただいた。アキ・モリさんは、両親は日本人ですが、ご本人はアメリカで生まれアメリカで育った方です。


「夢を膨らませてくれた日本の町」
 今年のIEJプログラムから帰って新たに日本語の勉強に取り組もうと思って新潮学芸賞受賞した『美しき日本の残像』という本を最近読み始めました。この本はアメリカ人が日本語で書いたものだと聞いて『あ、それなら私の限られた日本語力でも読めるだろうし、いい勉強になるだろう』と考えたわけです。この中にはAlex Kerr作者は四国の祖谷渓谷へ旅して『日本は住みたい国だろうかという自問に対する答えは出たのです』と書きましたが、私も今回のプログラムを通して15年ぶりに来日して正に同様な経験をしました。

 アメリカで生まれ育った私にとっては日本に住みたい気持ちが湧くのは決して軽いことではないのです。若い頃は高校時代の1年間の日本留学も含めておそらく6、7回ほど日本へ行ったことがあり、それに加えて大人として過去ビジネス関係で3回ほど日本に行きました。楽しい豊かな経験は山ほど重ねてきましたが日本に住みたいとは1度も思ったことはありませんでした。留学の経験を通して日本の受験制度の窮屈さ、ビジネスマンとしては日本の残業生活を見て、このような社会に住む日本人は可哀想だなぁと思いました。その上、今は結婚もして4歳と1歳の子供2人がいて好き勝手なことはとてもできません。そういう私の日本に対する心の転換を起こしたのは斑鳩の旅でした。

 Kerr作者の場合、祖谷の自然の偉大さに刺激されたそうですが、私はそれと違って斑鳩に住んでいる人達の個性的な精神と接することを通して考え様が変わったのです。斑鳩小学校での給食体験で隣に座っていた6年生の少年に『学校のあとは塾に行ってるの?』と聞いたら『いえ、僕は泳ぎのレッスンしている』と明るく答えるわけです。同校の校長先生と会いましたら『この周辺では塾に通っている生徒の割合は他の日本と比べてかなり低い』と頭を少し下げながら仰っしゃる。同じ晩の歓迎会で子供2人を抱えていた若いお母さんと会話すると『私は子供を田圃の中で遊びながらでものびのびとした育て方をさせたいし、塾よりもスイミングとか音楽を楽しませたほうが良いと思う』という。そしてホームステイファミリーの阿部さん家族と2日間ほどの生活を共にして、外見では狭い道にあるシンプルな家に住んでいるように見えても、その中では環境と調和した人間性に溢れた心豊かな阿部さん達の姿。斑鳩の皆さんから受けたメッセージには感動しますが、もっとすごいと思うのは皆の一貫性です。このような交わりができた為、『あ、日本にでもこのようなLivable(元気に生活できる)町があるんだ』と気付き、例え1、2年間の短い期間でも家族をそろって斑鳩にしても斑鳩に似たような町にしても住みたいと決めたのです。

 IEJプログラムが対象とする参加者としては私はあくまでも例外であるということは申し込んだ時点で知っていました。でも実際10日間わたって所々で日本の社会と外国人のグループの接点に立って言葉の訳だけではなく、文化の訳をするうちに自分の『例外である』存在の尊さに再会しました。『再会』というのはかつてには2国の間の掛橋の様な役割を果たす能力を十分に生かせていた頃があったのです。大学卒業直後の国際営業の時代は特にそうでした。だけど教育の世界の方へ心が向いたり、家庭生活の中で子供の育ちに集中したりして、いつの間にか40歳近くになってある程度『出来上がった』人間になってしまいました。でもこのIEJプログラムを通していろんなひらめきがあって家族や教室の幅を超えた世界にインパクトを与えられそうな可能性が自分の中にありそうな気持ちが若かった頃と同じように湧き上がってきたのです。私の奥さんが中国人である為、2人の娘は小さいうちからもう英語、日本語、中国語の3ヶ国語がしゃべれることを思うと将来へ対する夢と責任感が倍に膨らんでいきます。

 IISTのウェブサイトには『日本そして世界がますます平和でかつ心豊かに繁栄することを願う』とあります。世界の国は皆それぞれの特別な歴史や伝統や民族性を尊びますが我々が苦痛や不安と感じる問題点は ほぼ同じだと思います。近代化される世界に対してどのように過去とのつながりを確保するか。人間性を腐らせる物質主義の力をどううまく抵抗するか。コミュニティー精神をなくさずにテクノロジーを抱けられるかどうか。環境をどう守るか。運命を演出しているか。これら全ては国の問題でもあるし、私たち人間の日々の生活でのレベルの問題でもあります。そう思うとこういう問題に応じるIEJのようなプログラム、すなわち以前にはよそ者と見えた人間達をあえて合わせて、話しさせて、肌と肌をタッチさせるプログラム、があることを感謝します。このプログラムが始まってからの34年間、1,000人以上の参加者が国境を越えて日本を訪ねたと聞きました。『1,000人』というとある意味では大きな数でもあるし、ある意味ではとても小さい数ですが、どっちにしても私もこの中に数えられていることを誇りと感謝として持ちながら今後活躍していきたいです。


担当:国際交流部