平成20年度 第3回 アジア研究会 ●発表1「ラオスの対外経済関係」政策研究大学院大学教授 原 洋之介、JETROアジア経済研究所開発センター 開発戦略研究グループ研究員、ケオラ・スックニラン●発表2「GMS諸国への地域協力~東アジアの食糧供給基地としての可能性~」日本貿易振興機構 海外調査部主査 荒木 義宏【2008/10/22】

日時:2008年10月22日

テーマ「東アジア経済統合におけるメコン経済圏」

平成20年度 第3回 アジア研究会
発表1「ラオスの対外経済関係」


政策研究大学院大学教授
原 洋之介

 ラオスは東南アジア唯一の内陸国で、辺境のようなところだが、行ってみると決して辺境ではない。私はラオスを日本の長野県のようなところだと感じている。どちらも山に囲まれており、長野には信濃川、ラオスにはメコン川がある。また長野県では高原で野菜をつくっているが、ラオスには農業などで長野県のモデルが当てはまる。ラオスの人たちと話すと、メコン地域の経済統合の利益がどのくらい落ちるのかといった問題や、タイや中国など近隣諸国の関心が天然資源に集中しているといった問題があることがわかる。また日本の援助でナムグムダムがつくられ電力をタイに売っているが、今後もダム建設や売電による収益の増大が、長期的な経済成長を引っ張る要因の1つになると見られている。さらに近年は日系企業がラオスに興味を持ち始めており、今後は日本との関係も深まっていくだろう。
 ラオスと中国の結びつきは強いが、中国との間では問題も増えている。ヴィエンチャンの新都市開発事業は中国の支援によるが、実はこういう形で結局、チャイナ・タウンをつくるのではないかということで、ラオス国内で激論があった。計画は既に決まっており、今後動き出すことは間違いない。また今までラオスの共産党、政府の役人は圧倒的に、ある時期になるとベトナムに行って研修を受けていたが、最近は中国へ行くようになってきた。ラオスは中国がなければ生きていけないが、象徴的なチャイナ・タウンをつくったりすると、ややこしい問題も起きてくる気がする。


JETROアジア経済研究所開発センター 開発戦略研究グループ研究員
ケオラ・スックニラン

ケオラ・スックニラン ラオスの人口は500万人程度だが、その国境は人口が多い隣国の地域と接している。これを考えるとラオスを通るヒトやモノの大きな流れが起きてもおかしくないが、これまで起きていなかった。理由の1つは、ラオスの国境に非常に高い障壁があることだ。北、東、南を高い山に囲まれるなど自然の障壁があり、比較的、障壁が低いところには制度の壁があったといえる。そのラオスが東側や西側で完全に門を開いたのは、1990年代に入ってからだ。新思考政策が始まり、法整備などを経た後、ヒトやモノの流れが起きた。 2007年には160万人以上の外国人がラオスを訪れており、一番多いのはタイからで、ベトナムがそれに次ぐ。ラオスとタイを結ぶ第一メコン友好橋は、オーストラリアが無償でつくった橋で、年間60万-70万ぐらいの人がここを通ってラオスに来る。完成したのは94年で、その年にラオスへ来る外国人が急増した。一方、ラオスから出ていくヒトの数を見ると、首都ヴィエンチャンの人口は60万-70万人程度だが、2001年にはその人口の2倍ぐらいがタイへ渡っている。これはメコン川を挟んで、経済圏が1つになっているためだ。
 そしてモノの流れだが、アジア開発銀行(ADB)の国別データを見ると、輸入額は総額20億ドルとなっているが、ラオス政府による統計では10億程度になっている。ダブル・カウントの可能性がある。ラオスに入ってくるいろいろなものは、ほとんどタイから来る。ベトナムや中国も他よりは多いが、タイに比べるとかなり小さい。また2000年代初めから、多くのもの、消費財が中国からヴィエンチャンに流れてきている。中国政府系等の企業が、市場を整備し、中国の商人による中国製の販売拠点にする動きもみられる。一方、ラオスからの輸出は圧倒的にタイ向けか経由が多い。
 ラオスの輸出が大きく増えたのは2006年からで、この年に銅の輸出が始まり、統計上初めて貿易黒字になった。またラオスでは今、土地の利用権、開発権の取得が流行っている。大国が競って入ってきて押さえている現状があり、これは住民の反発も招いている。

開催風景2


発表2「GMS諸国への地域協力~東アジアの食糧供給基地としての可能性~」


日本貿易振興機構 海外調査部主査
荒木 義宏

荒木 義宏 メコン地域の開発は2年前に東西回廊、第2メコン橋ができて以来、注目されつつある。ラオス、カンボジア、タイ、西のミャンマー、東のベトナムの共通項は農業で、GMSは東西に農業が中心の国が横断的に並んでいる。したがって農業、そして食を基軸にこの地域の開発、経済協力考えられないものかと常々思っていた。
 日本の食を取り巻く状況を考えると、(1)少子高齢化、(2)農業の活性化、(3)貿易の自由化、(4)消費者意識のさらなる高まり-という4つの要因から、農業ないし食糧の問題が顕在化している。少子高齢化によって、中長期的に食のマーケットはシュリンクし、同時に生産の担い手が少なくなる。また近年は消費者意識が高まり、食の安全や健康志向によって、中国からの食品輸入だけでよいのかという動きが出始めている。国内調達を増やす流れもあるが、国内で生産の担い手がどれだけあるのか疑問で、当面は中国での生産を維持しつつプラスアルファの産地を他に求めていくことになるだろう。一方、多くの人口を抱える中国やインドも、海外供給先を求めていくと見られる。そして欧米の穀物メジャーも、大需要国向けのビジネスを海外で展開、さらに他の発展途上国も自国だけでは食糧確保が難しくなってきた。
 このような状況から、GMS地域の特徴、優位性に日本の経済協力の手法を加味し、かつ日本企業とタイのアグリ・ビジネスの連携で、GMS地域を食糧の安全を担保する地域にできないかと考えている。これまで日本の大企業を中心に行ったヒアリングでは、GMSといっても「ピンと来ない」という率直な答えもあった。ある程度、関心のありそうなところでは、大手商社Aは「ベトナムとタイでかなりやっているが、カンボジア、ラオスでは商材になるものはない」という。また食糧ビジネスは特に、しっかりしたビジネスパートナーがなければ安心して付き合えない。大手商社Cはこの地域と昔からいろいろなビジネスをしてきたが、食の安全を考えるとカンボジア、ラオスのトレーダー、ブローカーなどを経由したものを使って加工する訳にはいかず、二の足を踏んでいる状況だという。
 一方、プノンペン・ポストによると、穀物メジャーのカーギルが最近、現地に駐在事務所をつくったという。またミャンマーでも、新聞報道によれば、例えばバングラデッシュが米の耕地をミャンマーに求めているそうだ。そしてインドも油糧作物や大豆、ヒマワリをミャンマーの契約農業で行う計画があるなど、いろいろな動きが出始めている。

開催風景2
(敬称略 / 講師肩書は講演当時 / 文責:貿易研修センター)

詳細PDF


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担当:総務・企画調査広報部