第85回-2 中央ユーラシア調査会 「ウズベキスタン、キルギス出張報告」国連大学長上級顧問/調査会代表幹事 田中 哲二【2008/04/24】

日時:2008年4月24日

第85回-2 中央ユーラシア調査会
「ウズベキスタン、キルギス出張報告」


国連大学長上級顧問/調査会代表幹事
田中 哲二

1.ウズベキスタンの大統領選挙
田中 哲二     昨年12月に、ウズベキスタンへ行ってきた。ウズベキスタンの選挙管理委員会の招請で、大統領選挙を監視するというものだった。大統領選では結果的に、カリモフ現職大統領が圧倒的な得票率で勝利した。投票率は90.6%で、そのうち大統領の得票率は実に88.1%だった。操作が行われたかどうかはっきりしないが、1人が88.1%をとり、あと3人は3%の横並びという状態だった。
 4人の候補のうち女性候補が1人おり、6ヵ所の投票所で出口調査のように話を聞いたところ、その女性候補に投票したという女性がかなりいた。とても3%という得票率ではなかったように思う。いずれにしてもわれわれが考えている選挙とは少し違うという感じは免れない。憲法上では、大統領の三選禁止規定が謳われている。しかしカリモフ大統領が今度当選すれば、三選になるのか二選目になるのかについてはいろいろな解釈がある。選管委員長は「現行憲法上では二期目になるので全く違法ではない」という言い方をしていた。8年前に大統領の任期を強引に5年から7年に延ばしたことがあり、そのことを憲法改正と言っている。いずれにしてもカリモフ大統領の任期はおととしの暮れか昨年1月に切れているはずで、選挙はこの12月にやったので、1-12月は大統領はどのようなステータスにいたのか法的にはクリアできていない。これも選管委員長に聞いたところ、「1月まで任期があったので、その年のうちに選挙をすれば合法」ということだった。
 このように選挙そのものについては不明な部分も多いが、ある程度、民主化的要素を目指していろいろな工夫をしていることは多少認めてあげなければいけないだろう。前よりも確実に改善されたのは、複数の立候補者を立て、一応競争状態のもとで国民に投票をさせたことだ。ただし、立候補を認められた人々は、泡沫候補的な人材であったことも事実。
2. 南部アラル海危機の国際会議
 3月にタシュケントで、南部アラル海危機対応に関する国際会議が開かれ、これに参加してきた。ウズベキスタンが領有する南部アラル海のいろいろな被害状況がゆゆしい状態になっており、国際社会にこれを訴え、とくに国際機関の支援を受けて早急に対策を立て直さなければいけないという主旨の会議であった。冒頭にカリモフ大統領の演説があり、「国際河川の下流国としてわれわれは被害者だ。国際社会の協力が必要」としきりに強調していた。会議では約240人の参加者のうち、タジクやキルギスの上流国からの参加者は1~2人で、発言させる訳でもなくお題目のように国の名前を入れてあるだけだった。私は「中央アジアにおける水問題はやはり、上・下流5カ国が一堂に集まって話し合いで解決するという方向をとらなければいけない」との主旨の発表用の原稿を準備していた。しかし会議前に、「原稿のそこの部分を削ってくれ」という話になり、結局、会議全体の時間が足りないということで発言の機会はなかった。
 昨日、カリモフ大統領がカザフスタンへ行き、ナザルバエフ大統領と会見した。そのコミュニケでは、ウズベキスタンとカザフスタンの学術、経済分野における協力は、水資源の有効活用に大きな可能性を与えるものだとし、(1)節水技術の開発と導入、(2)この分野における実績や情報の交換が喫緊の課題であるとしている。さらにカリモフ大統領は中央アジア諸国の水供給量低下を防止する相互間の政策の実施を提案した。実のところ、中央アジアの水資源問題は政治問題化してしまっており、これを経済問題ないしは環境問題として結着させるには、国際機関や日本が外側から知恵を絞ってアドバイスしていかなければならないという感を強くした。
 また昨年12月にロシアでプーチン大統領が首相になることが発表されたが、キルギスではその直後に内閣の改造が行われ、首相に実力のあるロシア人を登用した。これはプーチン対策とのことだ。CISの首相レベルの会議、プーチンに一方的にやられないように、ある程度ロシア人で力のある人物を首相に充てた方がよいということになったということのようだ。これと似たようなことをウズベキスタンも考えているらしい。

3. キルギス訪問とドルドイの市場
 キルギスの政情だが、バキエフ体制の安定度は非常に気になる。末期のアカエフ政権は夫人や長男などがネポティズムの下、非常に権限を集めすぎたという辺りが実は一番大きな話だったのだが、最近はバキエフの息子がアカエフの息子とほとんど同じ行動をしているといわれている。結局、バキエフ一族も経済利権をかなり手中に収めていると国民が理解しはじめており、前政権よりもひどいかもしれないとの見方もある。
 民主化もかなり後退気味で、われわれが大統領府を訪ねても、警官の態度や、中央官庁の官僚の態度などがけわしくなってきている。さらに、最近イシククル湖にロシアの海軍を再び入れるという協定が結ばれるなど、ロシアの回帰に対する気使いを感じる。米・露の空軍基地を併存させるなど、ある意味では非常に狡猾に対大国外交をやっているという感じだ。また中国との関係でも、相変らず難しい舵取りを迫られているようだ。
 今回一番驚いたのは、新疆ウィグル地区から天山を越えるトルガット峠を越えてキルギスへ入るトラック道が、非常に混雑していることだ。両国はWTO(世界貿易機関)に加入しており、中国からの雑貨を満載したトラックがキルギスへ簡単に入ってくる。ヴィシュケク郊外には中継基地としてドルドイ市場というのができており、急スピードで大きくなっている。ここには中国製品の卸しや小売をやっている店舗が、すでに6000軒ほどあるということだ。その1つの店で売り上げを聞いたところ、1ヵ月に5万ドルだといっていた。もしもこの6000軒全部で同じぐらいの売り上げがあるとすれば、月間3億ドルという数字になり、この国の経済規模から考えればとても大きなものとなる。
 このように大きくなったのはここ数年のことだ。カザフスタンやウズベキスタン、トルクメニスタンのナンバーのトラックがここから各国に荷物を運んでいる。どんどん商品を積み込んで出発している。もしかするとこの市場が、キルギス経済の救世主になるのではないかと思わせるほどの勢いである。

(敬称略 / 講師肩書は講演当時 / 文責:貿易研修センター)

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担当:総務・企画調査広報部