第25回 IISTアジア講演会 「CLMV諸国の経済発展戦略 ~市場経済化の可能性と今後・ラオスを中心に~」広島大学大学院 国際協力研究科 教授 鈴木 基義【2008/10/06】

講演日時:2008年10月6日

第25回 IISTアジア講演会
「CLMV諸国の経済発展戦略 ~市場経済化の可能性と今後・ラオスを中心に~」


広島大学大学院 国際協力研究科 教授
鈴木 基義

鈴木 基義1. ラオスの輸出入、豊富な鉱物資源
 ラオスの人口は、わずか600万人程度だ。スモール・ディマンドでロー・インカムなので、消費財をつくってそれを販売するようなインポート・サブスティテューション型の開発政策をとってもだめだ。また集積がないので部品を調達することもできず、トヨタやソニー、東芝が来るような状況ではない。こういうところでありながら、経済は今、非常にアクティブだ。1つは天然資源が非常に豊富だ。ラオス全土に鉱物資源が埋蔵されており、とくに金、サファイア、銅が非常に豊富だ。そして鉛、亜鉛もたくさんある。
 ラオスのセポン鉱山は、鉱物資源関係者やラオス人の間で最大の関心事になっており、これはランサンミネラルという会社が経営している。ランサンミネラルの輸出額がラオス全体の輸出額に占める割合は、以前は15%程度だったが、2006年度には55%まで増えた。1国の輸出の半分がランサンミネラルという会社によって黒字となり、貿易の半分を持っている異常な状況だ。
 ラオスではまた、旅行も非常に伸びている。日本人は昨年1月15日からノービザになったので、さらに増えている。また飛行機の便も増えている。ラオスでは鉱物資源が膨大な輸出量になっているが、第2の産業は観光で、その次が衣料だ。
 ラオスの縫製産業が非常に有利なのはなぜかというと、ラオスから輸出した場合、特恵関税制度(GSP)を日本政府からいただき、輸入関税はゼロで輸出できるためだ。縫製には一般に3工程あり、例えば綿であれば原綿から糸を紡ぎ、糸から布にする。そして布を裁断してミシンで縫うと、洋服ができあがる。この中の最後の工程、つまり糸や布、ボタンを全て輸入してもそこでズボンや下着、洋服などができれば、原産地証明をもらって日本へ関税ゼロで輸出できる。

2. ラオスにおける生産コストの削減
 ASEAN(東南アジア諸国連合)では今、どんどん関税が低くなっており、名目的には2015年に関税を完全に引き下げることになっている。非関税障壁と関税障壁の撤廃で、2015年にはほぼ全ての商品の関税をゼロにしようということだ。そうなると、昔わが国や東南アジアの国々がやってきたような、関税を高くして外国企業に投資してもらい国内で生産してもらおうというような輸入代替政策は非常にとりにくくなる。
開催風景 そのような状況を逆手にとり、経済発展するにはどうすればよいのかだが、それはタイやベトナムを見るとわかる。タイには今、7000社以上の日本企業が進出しており、非常にハイレベルな部品産業と人材が育成されてくる。そして自動車産業や家電などは、世界的な競争力を持っている状況だ。しかし今は生産コストが非常に高く、石油価格だけでなく、人件費、土地代といったものもバンコク周辺では高い。こういった状況で、たくさんの相談を受けているが、「生存がもうしばらくしたらだめになる」というような日系企業もかなりある。
 タイにはトヨタ、日産、ホンダ、マツダ、三菱、いすゞなど8社の自動車メーカーに対して部品を供給するサポーティング・インダストリーが現在、1300社ある。しかしタイの最低賃金は、一番高いところで200バーツ程度に上がっており、これは160ドルぐらいだ。一方ラオスの最低賃金は、29万キップで、1ドル=1万キップで計算すると約30ドルとなり、タイとは5倍の賃金差がある。
 またタイの日本企業の工場が、ベトナムやミャンマー、カンボジアに進出するよりも、なぜラオスがよいのかという最大の理由の1つは言語だ。ラオスの人たちは一般の工場レベルのワーカーでも、タイ語はほぼ自由に聞き取れ、話せる。また工場をラオスにつくる前に、ラオス人をタイの工場へ研修に出すこともできる。

3. ラオスにおける日系企業の生産活動
 ラオス自身は、CLMVの中で補完的に発展している。最初に縫製産業がタイ、中国からラオスへ移った。ラオスでは輸出入手続きも、以前に比べてかなり早くなってきた。私が2005年に調査したときには、輸出手続きで大体13.6の書類が平均、必要だった。どの商品を輸出するかによって訪問する省庁が異なり、この書類の数は訪問しなくてはならないオフィスの数だった。それが今では7つに減っている。
 また以前はベトナムからラオスに商品を輸出する場合、ベトナム側で1回通関があり、ラオスに入ってからも荷物検査と書類検査があったため、1つの国境にまたがって4ヵ所で検査があった。それが今、輸出側は書類から提出すればよく、ラオスの方に来て商品の検査と手続きをすることで、3ヵ所に減った。将来的には全て一まとめでやろうとしており、JETROや経済産業省のアシストでどんどん進むことが予想される。
 バンコクからハノイへ部品を輸出する場合、陸で行くと現在は3日間かかる。通関が午後5時から翌朝8時まで閉まるのでそうなる。これが24時間営業になれば、1日と少しで済むだろう。一方、海からの場合はどうしても、2、3週間が必要になる。もしも陸路で行けるようになり、通関がスムーズになれば、本当に流通革命が発生する。急ぎのものは陸路でやるということになれば、ラオスは通過点で済まなくなるかもしれない。
 私は、ラオスは通過点でもよいと思っている。この3年間で、1日半で行けるようになるということは、サバナケットとデンサワンで通関が非常に早くなるということだ。そうなればベトナムの商品がラオスにも入りやすくなり、ラオスの商品はベトナムにも行きやすくなり、2国間貿易が活発化する。タイの場合も同じで、タイからラオス、ラオスからタイへ行く。3年間のうちにここを1日半で行けるようになれば、それぞれの2国間貿易が発展し、付属的な発展ができるかもしれない。

(敬称略 / 講師肩書は講演当時 / 文責:貿易研修センター)

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担当:総務・企画調査広報部