平成20年度 第4回-1 国際情勢研究会 「米国新政権の行方」 東京大学 大学院法学政治学研究科教授 久保 文明【2008/11/14】

日時:2008年11月14日、場所:(財)貿易研修センター

平成20年度 第4回-1 国際情勢研究会
「米国新政権の行方」


東京大学 大学院法学政治学研究科教授
久保 文明

久保 文明 今回の米大統領選挙は、2004年の選挙と比べて民主党が勝利した州がたくさんある。保守的な州においても勝利しており、2004年の結果を前提にすると信じがたく、驚きの部分が大きい。特にバージニアなどは接戦でなく、大差で民主党が勝った。バージニアを民主党がとったのは、1964年以来だといわれる。しかも黒人候補であることを考えると、今回かなり大きな変化が起きたことがおわかりになると思う。勝因を考える際、共和党にとって逆風だったことは確かだ。経済が悪く、うまくいっていない戦争を抱えており、ブッシュ大統領への支持率は20%台で、国民の80%以上が「悪い方向に向かっている」と考えていた。そういうムードで、なおかつ政権が三期目を狙うことはかなり難しい。
 選挙の特徴としては、ブルー・カラーの人などはオバマかマケインか、相当迷っていた。しかし金融危機が起きて自分の生活が心配になり、最終的にはオバマというパターンだったと思う。白人の中でも熱烈にオバマを支持した人がかなりおり、これにはアメリカのよさを確認するための作業に参加したいという面もあった。若い人が圧倒的に多く、また教養のある人、学歴の高い白人がオバマをかなり熱狂的に支持していた面がある。そういう人にアピールする側面が今回、オバマにあった。
 大統領の成功、失敗は、かなり初期条件によって拘束されているという見方がある。勝つか負けるかも重要だが、勝ち方の問題があり、僅差で勝つよりは、大差で勝つ方が、やはり国民からマンデートを獲得したと多くの人がみなしてくれるという点で重要だといわれる。今回のオバマの勝ち方は少し微妙で、53%という得票率はそれほどでもない。ただ民主党の候補としては50%を超えるマージンで勝ったのは本当に久しぶりだ。また選挙人票で350を超えたので、これはかなりの勝ち方だ。CNNニュースによれば、まだ就任前なのだがオバマ政権の支持率は75%ということで、共和党支持者も含め、かなりの国民が祝福している。
 外交については、懸念材料はやはり経験不足だ。またオバマはとにかく交渉を前面に出しており、北朝鮮やイランについてもとりあえず交渉がオプションとして考えられると思うが、交渉している間に相手がいろいろなことをしても、こちらが全部弁護しなくてはいけないことになる。そして、下手すると4年間はあっという間に過ぎてしまう。まだどの段階で交渉をやめるのか、相手がどこまで譲歩しなければ交渉を打ち切って次の段階へ行くのかがはっきりしなければ、交渉のための交渉になってしまう。
 そして難しいのは、アフガニスタン問題ではないか。オバマはイラクからは撤退を開始する一方で、アフガニスタンには増派するとしている。しかし4年後にアフガニスタンで相当の死者が出ており、なおかつ不安定なままということになれば、オバマの戦争でオバマの失敗だとして跳ね返ってくる可能性もある。またこれは日米関係とも関連し、オバマ政権の外交上の最優先項目がアフガニスタンなので、やはりそこで手伝ってくれる同盟国が一番ありがたいということになるだろう。他には民主党政権の方が開発援助や国際組織、地球環境問題なども重視するはずで、これらには日本外交の基本的な方向性と合致している面もあり、日本がいろいろな形でやろうというと「よし」ということになる部分もあると思う。

(敬称略 / 講師肩書は講演当時 / 文責:貿易研修センター)

IISTサポーターズ(無料)にご登録いただきますと、講演会、シンポジウム開催のご案内、2010年度以前の各会及びシンポジウムページ下部に掲載されている詳細PDFとエッセイアジアをご覧いただける、パスワードをお送りいたします。


担当:総務・企画調査広報部